一般企業で障害者が働くとき、「オープン就労」と「クローズ就労」「セミオープン就労」の3種類の選択肢があります。
簡単に説明すると、オープン就労とは企業側に障害を明かして就労をすることです。主に、障害者雇用での就職となります。
一方、クローズ就労とは、企業に対して障害のことを伝えずに、就労することをいいます。
障害者が就職をするとき、どちらで就職した方が良いのでしょうか。
今回は、クローズ就労とオープン就労の特徴やメリット・デメリットなどを徹底解説していきます!
【笹本 美結】
就労移行支援事業所ルーツ横浜関内にて、支援員として働いています。支援員の立場から、福祉施設の説明やお役立ち情報を発信していきます。
目次
オープン就労(障害者雇用)のメリット
オープン就労では、企業側に障害や病気を明かして就職をします。ほとんどの場合、障害者雇用での就職になります!
障害者雇用で就職をするため、障害者手帳を持っている障害者の方が対象です。
メリット①障害を考慮して、業務内容や配属先などの面で配慮を受けられる
オープン就労では、障害を考慮して「合理的配慮」を職場で受けることができます。
例えば、聴覚過敏の特性のために、騒がしい職場が苦手という方は静かなオフィスの配属になったり、電話をとるのが苦手という方に対して、電話応対を業務から外してもらうなどの配慮を受けることができます。
メリット②障害を隠さずに就労をすることで安心感がある
クローズ就労の場合、障害を隠しながら働き続けることになります。
そのことから、いつかバレるのではないかという不安を抱えて過ごすことになり得ません。
オープン就労だと、最初から障害を理解してもらった上で働けるため、そういった不安を抱えることなく就労をすることができます。
メリット③定期的に事業所のスタッフと連絡を取り、サポートを受けられる
オープン就労の場合、就労移行支援事業を通じて就職される方が多くいらっしゃいます。
就労移行支援事業所を利用することで、採用面接にスタッフが同行してくれたり、トラブルがあった際に会社と話し合い対応してくれたり、とバックアップしてもらえます。
就労移行支援事業所についてはこちらの記事も併せてご覧ください!
オープン就労(障害者雇用)のデメリット
デメリット①給与水準が低い
オープン就労のデメリットの一つ目として、クローズ就労に比べ給与水準が低いということがあります。
オープン就労とクローズ就労で平均賃金に差が出てしまうのは、オープン就労の就労形態や労働時間がクローズ就労と異なるためです。
オープン就労の場合、障害や体調を配慮して、契約社員であったりフルタイム勤務ではない求人が多くなります。そういった違いから、給与水準がクローズ就労に比べて低くなっています。
障害名 | 平均賃金 | 通常 (週所定労働時間30時間以上) |
週所定労働時間 20時間~30時間 |
週所定労働時間 20時間未満 |
身体障害 | 21,5000円 | 248,000円 | 86,000円 | 67,000円 |
知的障害 | 117,000円 | 137,000円 | 82,000円 | 51,000円 |
精神障害 | 125,000円 | 189,000円 | 74,000円 | 51,000円 |
発達障害 | 127,000円 | 164,000円 | 76,000円 | 48,000円 |
デメリット②求人数が比較的少ない
一般の求人に比べて、オープン就労の求人はまだまだ少ないです。
ですが、2018年、2020年の障害者雇用促進法の改正などにより、障害者雇用の求人数は年々増加しています。
一般求人に比べれば数は少ないですが、多くの会社が障害者雇用の求人を出しています。
障害者の法定雇用率と助成金について
2020年10月現在の障害者の法定雇用率は2.2%となっており、2021年の3月から2.3%に引き上げられる見通しです。これは、45.5人以上雇用している企業は障害者を一人、雇用する義務があるということです。
また、障害者を雇用している企業に対して助成金制度が存在します。これは、企業側が障害者を雇用することでかかるコストを軽減し、障害者の新規雇用や雇用継続をすることを目的とした制度になっています。
このような義務や制度があることから、障害者求人の数も増加傾向にあります。
そのため、オープン就労とクローズ就労の間で、どちらの方が就職が簡単・難しいなどといった違いはありません。
クローズ就労(一般枠)のメリット
クローズ就労とは、企業に障害があることを明かさずに就職をすることをいいます。
基本的には一般求人で応募をしていくことになります。
メリット①障害者求人に比べ、求人の種類や職種が豊富
クローズ就労の場合、一般求人に応募することになるので、求人数が多くなっています。
それに伴って、職種や業種の種類も障害者雇用に比べ、豊富になります。
メリット②障害者雇用よりも給与水準が高い
クローズ就労では、一般の方と同じように働きます。そのため、一般の方と同じだけのお給料が支払われます。
企業にもよりますが、障害者雇用の求人よりも給与が高い傾向にあります。
クローズ就労(一般枠)のデメリット
デメリット①障害に対する配慮が受けられない
クローズ就労は、障害を企業に明かさずに就労をするので、障害に対する配慮は受けられません。
例えば、精神障害でメンタル不調による体調不良から作業ペースが落ちてしまった時、オープン就労の場合は、配慮としてこまめに休憩を取らせてもらうなどの配慮を受けることができます。
ですが、クローズ就労の場合、そういった配慮を受けることができないので、働きづらさを感じてしまうかもしれません。
デメリット②障害がいつかバレてしまうのではないかという不安を抱えてしまうことがある
クローズ就労で、障害があることを伝えずに就職することから「いつかバレるのではないか」という不安を抱えてしまう方もいらっしゃいます。
そういった不安がメンタル不調に繋がり、体調を崩してしまいかねません。
オープン就労の場合、最初から障害があることを伝えてから就職をするので、安心感を持って働くことができます!
セミオープン就労という選択肢
障害者が就労をするときに、オープン、クローズの他に、セミオープンという選択肢があります。
セミオープン就労とは、障害があることを特定の人に開示することです。
例えば、上司や幹部には障害があることを開示しますが、他の人には開示せずに就労をするという形になります。
そのため、上司などの一部の人から配慮を受けることができ、他の人には障害があることを知られないため、これまでと同じように過ごすことができます!
障害を開示するのは、面接時などの会社入社前になります。
オープン就労とクローズ就労、それぞれのメリットを享受することができますが、もちろん、デメリットもついてきますので、自分の障害の状態や体調をしっかりと考えた上で決めていきましょう。
セミオープン就労のメリット
メリット①クローズより働きやすい
セミオープン就労とは自身の障害を上司や幹部などの一部の人たちのみに開示し、他の一般社員には開示せずに働くことです。
クローズ就労のメリットである給料が高い、仕事の業務幅も広いというメリットを受けつつ、業務、通院に伴う出退勤などに関して合理的配慮を受けることが可能になります。
また一般枠と求人数は同様なので就職の選択肢が広がるというメリットもあります。
メリット②オープンと比べてキャリアップしやすい
オープン就労と比べて求人数は一般枠と同じになので多いです。またメリット①にもある通り業務内容に関しては一般就職している社員とほぼ同じという点から、スキル取得・業績作りがしやすいです。
以上のことからセミオープン就労でしっかりと働き続けることができれば、一般就職と同様でしっかりとキャリアアップができます。
セミオープン就労のデメリット
デメリット①自身が望む配慮をすべて受けることは難しい
メリット①にもある通り、一部合理的配慮を受けることができます。しかし自身の希望通りに合理的配慮をしてくれる企業はかなり少ないです。
セミオープン就労は一般就職の方と同様の業務をこなさないといけない分、オープン就労と比べて負荷はかなりあります。
なので自身の仕事に対するキャパシティーと自身の障害をしっかりと把握することが非常に重要になってきます。
デメリット②セミオープン就労を受け入れている企業は少ない
デメリット①にもある通り、仕事と障害配慮のバランスがセミオープン就労において非常に重要になってきます。
企業がセミオープン就労に対して設定する合理的配慮の基準は企業によってかなり異なるため、求人数は一般枠と同様なので応募先は多いですがセミオープン就労で採用される可能性はそこまで高くないです。
ただ仕事において挑戦できる、待遇が良いという観点から一度セミオープン就労を目指し就職活動をしていみるのも良いのではないでしょうか?
障害者の求人の探し方
オープン就労の求人は、ハローワークやエージェント、求人サイトなどから探すことができます。
ハローワークで探す
ハローワークには、障害者専用の窓口があります。ハローワークの障害者専用窓口では、その人の障害や特性にあった仕事を探す手助けをしてくれます。
その他にも、面接会などのイベントをやっていたり、履歴書や職務経歴書の添削、面接練習などの支援を受けることもできます。
求人数も数多いので、一度近くのハローワークに足を運んでみるといいですね。
障害者向けの転職サイトを利用する
障害者向けの転職サイトや就活情報サイトを利用するのも一つの手です。
①atGP
atGPでは求人検索はもちろん、その他にも面接練習や書類作成、企業間とのやりとりやアフターフォローなど、総合的なサポートを受けることができます。
費用は一切かからず、2,500社にも及ぶ業界トップクラスの求人企業ネットワークと、15年以上にわたるサポート実績があるので、安心して利用することができます。
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※公式HPへ飛びます
②dodaチャレンジ
「dodaチャレンジ」は株式会社パーソルの特例子会社パーソルチャレンジが運営する障害者向け就職・転職エージェントです。
こちらも、無料で利用することができ、会員登録後はカウンセリングや書類添削、面接指導などのサポートを受けられます。dodaチャレンジの求人数は公開求人が300件以上、非公開求人が2200件以上あり業界最大級の求人数となっています。
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就労移行支援を利用して就職を目指す
障害者向けの福祉サービスの一つに就労移行支援というものがあります。
就労移行支援とは、一般企業の就労を目指す人に障害のある方向けて、就労の支援をする施設です。原則2年以内の利用で、障害者手帳がなくても利用ができることがあります。
オープン就労、クローズ就労、セミオープン就労、どれを目指す場合でもサポートを受けることができます。
就労移行支援事業所では、就職活動支援をはじめ、自己理解やビジネススキルの習得などたくさんの支援を受けることができます。
就労移行を選ぶときのポイント
就労移行支援を選ぶ際に大切になってくるポイントは以下の5つです。
✔︎ 希望する仕事内容に合ったカリキュラムがあるかどうか
✔︎ 就労実績や定着率が高いかどうか
✔︎ 無理のない通所範囲で、働きたいエリアに事業所があるかどうか
✔︎ 交通費や昼食の支給はあるかどうか
✔︎ スタッフとの相性がいいか
①希望する仕事内容に合ったカリキュラムがあるかどうか
就労移行支援のカリキュラムは必ずチェックをするようにしましょう。例えば、IT企業でプログラマーとして働きたいのに、事務のカリキュラムしかない就労移行に通ってしまっては、IT企業で働くために必要なスキルが身につきませんよね。
就労移行によって、事務やプログラミング、動画編集、障害理解などカリキュラムは大きく異なります。
必ず、自分の希望するスキルや力を身に付けられるカリキュラムなのかを確認しましょう。
②就労実績や定着率が高いかどうか
就労移行支援の就労実績や定着率(就職後、半年間働き続けられているか)も大切です。
定着率や就労実績をみることで、「就職できた人・長く働き続けられる人をどれくらい輩出できるか」がわかります。
就労実績や定着率が高い就労移行は、定着支援や就職活動の支援が手厚いなどの特徴がある就労移行が多いです。
③無理のない通所範囲で、働きたいエリアに事業所があるかどうか
無理のない通所範囲かどうかも大切です。
例えば、雰囲気やカリキュラムに魅力だが、電車に何時間も乗らないと通えない場所にあるような就労移行では、通うことを断念してしまうかもしれません。
通い続けられる範囲内の就労移行を選ぶようにしましょう。
④交通費や昼食の支給はあるかどうか
就労移行支援事業所で、交通費や昼食の支給がある就労移行があります。
就労移行支援では賃金が発生しないため、経済的に苦しいと感じる方も少なくありません。
交通費や昼食の支給があるだけで経済的にも助かりますよね。見学に行った際などに、質問などをして聞いておくようにしましょう。
⑤スタッフとの相性がいいか
スタッフとの相性も大切なポイントです。
スタッフや支援員との相性が良いと、相談がしやすいですよね。また、スタッフとの相性がいいことで、通所が苦にならずに通い続けることができます。
結果、自分にあった就労につなげることができるので、スタッフとの相性も必ず確認するようにしましょう。
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事業所数 | 2事業所 (2021年度) ※2021年春に横浜事業所OPEN |
対象地域 | 東京(秋葉原)・大阪(梅田) 詳しいアクセスはこちらから |
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今回は、オープン就労とクローズ就労のメリット・デメリットを徹底解説していきました。
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