社員の7割以上が発達障がい。障がい者雇用を企業の成長促進につなげるグリービジネスオペレーションズの取り組み

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2012年5月1日設立。神奈川県 横浜市に拠点を構える「グリー株式会社」の特例子会社。
社員の7割以上が発達障がいを持ち、障がい当事者でも最大限能力を活かせる環境づくりを目指している。
業務内容は、データ作成や入力業務から、モバイルゲームのグラフィック作成やゲームキャラクターの色づけまで、月計算で300種類以上にも及ぶ。

「障害者雇用促進法」によって定められ、官民ともに適用される「法定雇用率」。

フォローの仕方が分からず、受け入れについて戸惑う企業もあるなかで、「戦力」として障がい者採用を行う企業があります。

グリービジネスオペレーションズ株式会社(以下GBO)。

「能力を最大限に発揮でき、仕事を通じて自律的に成長し続けられる会社を創る」をビションに掲げ、社員の約90%が障がい者手帳を保有するグリー株式会社の特例子会社です。

障がい者雇用を促進しながら、一企業として存続し、グリーグループを支える同社。

なぜ障がいの有無に関わらず自立した経営ができているのか。今回のインタビューでその理由がわかりました。

「障がい者雇用」とは


(ソーシャルディスタンスを保つ会議室のぬいぐるみ)

概要

障がい者雇用は、事業主や自治体などが障がいがある人だけの採用枠で当事者を雇用する形態を指します。

障がい当事者が一般の採用枠で就職活動を進める場合、彼らが持つ特性が不利に働いてしまうことも考えられます。

障がいのある人でも、自身の能力を活かしながら働ける場が得られるよう設けられたのが「障がい者雇用枠」です。事業主は、差別の禁止や安全配慮義務などに沿って、個人として尊重される就労機会を提供することが求められます。

企業は、障がい者と認定された人を法定雇用率に沿って採用するルールが存在します。

障がい者の雇用の促進・安定を図るため、そして障がいの有無にかかわらず、誰もが活躍できる共生社会に向けて措置が講じられました。

障がい者を雇用した企業には、国からの助成金などが支払われ、法定雇用率を超えて雇用する企業には調整金・報奨金が支給される仕組みとなっています。

(参照元|事業主の方へ

障がい者雇用の対象者は原則、「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「身体障害者手帳」といった障害者手帳を所持している必要があります。

障がい者雇用の背景・経緯

障がい者の雇用や就業は、当事者の自立・社会参加のために欠かせない要素です。

障がいにかかわらず、1人1人の適性に応じて、十分に能力を発揮して働くことができるように取り組める社会が求められています。

2023年には、法定雇用率の引き上げにより、推定2.50という予測も出されています。

社会的にも慢性的な人手不足が続くなか、障がいを受け入れられる社会に向けて、障がい者雇用枠での採用が徐々に見直されてきています。

現在の雇用状況・現状

国内における身体・知的・精神障がい者の総数は約858.7万人と言われています。そのうち、民間企業での雇用者数は47.4万人です。

雇用者数は年々増加しており、着実に進展しているといえます。

また、ハローワークにおける障がい者の職業紹介状況に関して全体的な増加が見られ、就労継続支援就労移行支援といった就労系福祉サービスの利用数も障がい種別にかかわらず、利用者数が増加しています。

一方で、民間企業も含めた法定雇用率の達成率は50%未満であり、障がい者雇用に対する課題は依然として存在します。

「障がいへの適切な配慮」について不安を抱える企業も多く、どのようなかたちで働く環境を整備していくか模索している企業も少なくありません。

採用後も当事者が職場の雰囲気や人間関係に悩み、離職してしまうケースがあるなか、定着状況や継続雇用に向けたアプローチに注目が集まっています。

障がい者雇用事例|グリービジネスオペレーションズ株式会社


(竹内稔貴さん:写真左  福田早織さん:写真右)

はじめに、GBO社について経営企画室 マネージャーの竹内稔貴さん、事業管理第2部 事業管理第1チーム マネージャーの福田早織さんにお話を伺いました。

会社概要

━まず企業概要について教えていただけますか?

GBOは、2012年5月にグリー株式会社の子会社として設立し特例子会社として認定されました。

企業理念としては、『能力を最大限に発揮でき、仕事を通じて自律的に成長し続けられる会社を創る』ことを掲げており、個々の障がい特性に配慮した職場環境の整備や能力に応じた適切な業務配置、対面コミュニケーションによる組織の活性化など、一つ一つ丁寧に取り組んでいます。

現在の雇用人数と働き方

ーGBO社の障がい者雇用に関する状況をお伺いしても宜しいでしょうか?

現在、障害者手帳を所持している方は48名です。2名は六本木ヒルズでマッサージ師として働いており、残りの社員に関しては横浜のオフィスで、ゲーム品質管理やインターネットサービスなどに関するグリーグループの仕事をしています。

横浜オフィスの中では、発達障がいの方が35名、うつ病・統合失調症・不安障がいの方が11名います。発達障がいの方が多いのは、当社グリーの事業特性と非常にマッチしているからです。しかし、どのような障がいを持っている方でも採用活動は行っています。

ーどのような働き方なのでしょうか?

勤務時間は基本タイムテーブル通りになります。休憩は、昼休憩と15分の一斉休憩を設けています。それとは別で毎日30分横になって休める時間を設けていて、自分の疲れるタイミングで休憩してもらいます。

業務は複数のチームに分かれており、グリーグループからの仕事を請け負っています。設立時よりグリーグループに貢献することを目指して活動しています。

人事・経理・総務の受注した業務やゲーム品質管理に関わる業務、インターネットサービスに関わる業務が多いのが特徴です。

障がい者雇用をはじめた経緯


(オフィスに完備された休憩室)

ー障がい者雇用を始めた経緯について教えていただけますか?

当時グリーグループが急激に成長をしている時で、社員も次々と増えていました。元々本社で雇用していた障害者手帳を持つ社員だけでは、法定雇用率に対して人数が不足していたため、本格的にグリーグループとして障がい者雇用を始めました。

ただ、設立時から経営陣に言われたのは、「事業に貢献する会社創りをしてほしい」ということだったので、事業貢献できる特例子会社を目指しました。

活躍する当事者たち

ー障がい当事者を採用して、グループとして助かったご経験はありますか?

現在すごく業務の理解力も高くて作業スピードも速い、事務の仕事がマッチする社員がいます。広告系の事業から広告の数値を集計する業務の依頼を対応しているんですけれども、その社員が対応した際は作業スピードが速いんです。

「弊社の仕事に合わせて活躍してくれているな」と思いますし、非常に助かっています。

障がい者雇用の促進に向けて


(障がいに配慮した集中スペース)

障がい者雇用を通して取り組んだこと

ー障がい者雇用の促進に向けて、取り組んだ環境づくりについてお伺いできますか?

環境づくりに関しては、物理的な配慮と精神的な配慮があります。

物理的な配慮では、やはりオフィス環境です。オフィス勤務を想定していたので、発達障がいを含め、各社員の障がい特性に配慮できるよう力を入れてきました。

発達障がいの方には、聴覚過敏・視覚過敏といった感覚過敏特性があります。そのため、執務室に直接光が当たらないように会議室を窓際に設置したり、窓側に向かない席を配置したりするなどの配慮をおこなっています

様々なところから物音がする状態がストレスという社員に配慮し、一か所にコピー機やシュレッダーなどの音がするものを配置し、会議室は吸音パネルを使用しています。なるべく外に音が漏れないような設計になっています。

他には、仮眠を取る休憩室や自席以外でも働ける集中スペース、カウンセリングルームやマッサージチェアなどを完備しています。一人ひとりへの配慮にはこだわっていますね。

次に精神的な配慮ですが、こちらは精神的なケアになります。面談・カウンセリング を豊富に取り入れ、面談では①社長や上長が行う面談、②カウンセラーによるカウンセリング面談、③保健師面談と④産業医面談、⑤支援機関の定着支援に関する面談を行っています。

面談の頻度は社員の希望や状況にあわせて開催しています。

様々な面談があることで、「上長には相談しにくいけど社長には相談できる」、「 保健師さんだったら話しやすい」など、聞く場をたくさん持てるんです。

結果として、本人が抱えている問題が大きくなる前にフォローに入れるので、大切な時間になりますね。

ー支援機関に任せるだけでなく、自社でのケアも大切にされているのですね。

もちろん、そうした福祉サービスにお任せするケースもありますが、GBO社として「連携はするけど任せきりにはしない」よう、社員と向き合い対応しています。

困っていることは、業務を一緒にしている人の方が解決しやすいこともありますから。

雇用のうえで苦戦したこと、乗り越えた課題


(オフィスにあるマッサージチェア)

ー実際のこれまでの道のりの過程で、雇用について苦労したことや乗り越えたことなどありますか?

最初の頃は入社しても長く続かなかったり、自分の能力を十分に発揮できないで退職してしまう社員もいました。

原因は、必要な配慮と本人の能力に合わせた業務に関するミスマッチでした。

現在は入社前に必ず相手が求めている配慮事項を細かくヒアリングするようにしています。

会社としてできる配慮は何なのか、業務に関しても本人の能力にあう業務を用意できるようにしたり、入社前の段階でミスマッチが起こらないように気をつけていますね。

入社直後は頑張り過ぎてしまう方が少なくありません。困っているけど、相談できないこともあると思うので、支援機関と連携しながら本当に困っていないかどうかお伺いしています。

こうした工夫を重ねることで、今では入社してからのミスマッチや入社後に崩してしまう方は減り、離職率も低くなっています。

業務は約300種類ありますので、一人ひとりに合う業務が見つけやすい環境です。

設立時は、コピーやシュレッダーと、PDFをとるなど軽作業である3種類しか仕事しかなく、その人が持つ能力に合わないこともありました。

発達障がいの方は能力によっては軽作業が合わない方もいるため、仕事としてやりがいが持てなくなってしまい、退職につながることもあります。

能力に凸凹があると言われる発達障がいの方ですが、その能力に合う仕事につくことで、自然とやりがいが生まれ、定着につながりました。

障がい者雇用を検討している企業さまへのメッセージ


(会議室の壁には吸音パネルが設置されている。)

ー最後に、障がい者雇用を検討されている企業さまに向けてメッセージをお願いします。

民間企業の雇用率においては各社の企業努力もあり年々改善されてきています。

しかし、実際にはまだ能力を発揮する場所が見つからない、発揮する仕事が見つからない方々もまだまだいらっしゃいます。

こうした問題にどう対応できるのか、受け皿としての企業・団体がしっかりと理解をし、活躍できる場を用意することが重要だと考えています。

私たちは、今後も当社の取り組みを通じて、障がい者の人材活用という社会課題の解決を目指してみなさんと一緒に取り組んでいけたらと思います。

取材協力:グリービジネスオペレーションズ株式会社
経営企画室 マネージャー:竹内稔貴|事業管理第2部 事業管理第1チーム マネージャー:福田早織

【編集後記】

グリービジネスオペレーションズ株式会社では現在、新型コロナウイルスの影響も踏まえ、在宅ワークに切り替えています。取材当日はオフィスに訪問したのですが、社員さんの多くは出社せず、リモート勤務をされていました。撮影中、竹内さんから「立地も含めて働きやすい環境を目指した」というお話を聞かせていただきました。健常者や当事者の境をつくらず、誰にとっても生産性の向上に繋がる職場づくりを意識されている印象を強く受けました。

(執筆:新田敏美|Twitter / 編集:伊藤弘紀|Twitter)

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