「うつ病などの精神障害を抱えていると、仕事には就けないのだろうか?」
そんな不安を抱えている方は、たくさんいらっしゃるでしょう。
ネットで検索しても、「うつ病だと仕事ができない」といった記述が出てくることがあるかと思います。
「うつ病」は誰でも発症する可能性のある病気です。
今平気だからと言って、交通事故に遭わないとは言いきれないように、今元気だからと言って、うつ病にならないとは限りません。
【笹本美結】
就労移行支援事業所ルーツ支援員/Puente代表
就労移行で働いている経験を生かして、就職・障がい福祉に関するお役立ち情報を発信します。皆さんのお役に立てると嬉しいです!
目次
「うつ病の人は就職できない」は本当なのか?
うつ病の人の就職不利になってしまう理由
「うつ病になると就職できない」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。
確かに職歴にブランクがあったり、体力面や精神面で、不安を抱えることもあるかと思います。
また、うつ病によって物事の捉え方が否定的になり、普段なら乗り越えられるであろう問題も、実際より辛いと感じてしまうこともあります。
こうしたネガティブな考えから就職に対する意欲も失せてしまい、それが就職活動にも悪影響を及ぼすケースは多いです。
うつ病の人の就職率はどれくらい?
厚生労働省の発表によると、2020年の雇用障害者数は約58万人で、2019年よりも3.2%上昇しています。
平成30年の障害者雇用促進法改正以前は、うつ病などの精神障害がある人は、この法の対象ではありませんでした。
この法改正によって、うつ病のある人の雇用は確実に拡大していると言えます。
どれくらいの人が職場に定着しているの?
「職場定着率」とは、その職場に入ってから、そこで働き続けている人の割合を指します。
下のグラフは、障害者の職場定着率をまとめたものになっています。
出典:障害別にみた職場定着率の推移と構成割合(2017年4月障害者の就業状況等に関する調査研究 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター)
うつ病や統合失調症などの精神疾患は、ここでは精神障害に分類されます。
グラフから分かる通り、精神障害のある人の職場定着率は、他の障害がある人に比べて最も低くなっています。うつ病などの精神障害がある人の1年後の職場定着率は50%を下回っており、2人に1人が一年以内に離職しているということになります。
うつ病の人が就職活動をするときの困りごと
就職活動に取り組む活力が湧かない
うつ病の症状として、一日中気分が落ち込み、何をしても楽しめなかったり、生活する活力が湧かなかったりすることが挙げられます。
それによって仕事や家事に手がつかずストレスが溜まり、さらに気分が落ち込むという負のサイクルに陥ってしまいます。
日常生活ですら気分が乗らないのに、就職活動に本気で打ち込むことは難しいでしょう。
自分の将来について見つめ直し、そのために何をしたら良いのか考えることは、うつ病の状態では上手くいかないことが多いです。
何でも悪い方向に考えてしまう
ネガティブな思考が働き、何事も悪い方向に考えてしまうこともうつ病の症状の一つです。
「私が就職なんてできるわけない…。」
「このまま一生就職できずに終わってしまうのかな…。」
こうした負の感情が大きくなって、就職活動から自分を遠ざけて考えてしまうことがあります。
計画通りに就職活動を進められない
就職活動中は、希望する会社の面接や説明会がたくさん行われるので、スケジュール管理が重要になります。
それに加え、面接練習や試験勉強などにも時間を割かなければなりません。
しかしうつ病によって食欲が無くなったり、眠れなくなったりすることがあり、こうした症状は日常生活に悪影響を及ぼします。
体調の悪化によって思うように就職活動の準備ができず、なかなか成果が出せないことがあります。
うつ病の人が就職するときの雇用形態
障害や病気のある人のために、複数の雇用枠があることをご存知ですか?
ここでは「オープン就労」、「クローズ就労」、「セミオープン就労」の3つの雇用形態を紹介します。
オープン就労(障害者雇用)
オープン就労とは、自分の病気や障害を伝えて就労することです。
オープン就労にすることで得られるメリットとして下記の4点などがあります。
- 症状や服薬、勤務時間の理解を得られる
- 周囲(同僚や上司)に配慮をもらいやすい
- 面接時にブランクに対する説明ができる
- 定着率が高くなる
デメリットとしては、自分だけで就職先を探すと、選択肢が減ってしまう可能性が考えられます。
クローズ就労
クローズ就労とは、自分の病気や障害を伝えずに就労することです。
クローズ就労にすると、自分だけで仕事を探す場合、求人が狭められないことがメリットとして挙げられます。
デメリットとしては、下記の4つなどがあります。
- 周囲の配慮を期待できない
- 症状や服薬、勤務時間に理解を得られにくい
- 面接時のブランクの説明に苦労する
- 病気のことがバレてしまうのではないかと不安
一概にどちらが有利ということはありませんが、オープン就労では障害者雇用枠での就職となり、関係機関のサポートや福祉サービスを受けて就職を目指すことができます。
クローズ就労では、そもそも病気を持っていることを告げずに入社するため、就職活動時のハードルだけでなく、入社後の自己管理も自分で行い、必要なサポートも自分で受けにいく必要があります。
セミオープン就労
セミオープン就労とは、自分の障害について特定の人にだけ伝え、それ以外の人には伏せたまま就職するという就労形態です。
セミオープン就労を選ぶことで、自分の必要な人からは配慮を受けることができ、それ以外の人には隠したままにしておくことができます。
オープン就労とクローズ就労の良いところ合わせたような雇用形態です。
しかし、デメリットは自分の障害や病気について知らない人からの配慮を受けることができないことです。
仕事でミスが続いたり、上手くコミュニケーションが取れなかったりすると、職場で居心地が悪くなるかもしれません。
うつ病をお持ちの方が安定した就職を目指すにあたっては、オープン就労を視野に就職活動を進めていくほうが安心して活動できるのではないでしょうか。
次は、オープン就労に向けて利用できる機関やサービスについてご紹介していきます。
うつ病の人が就職するときに利用できる支援機関
ハローワーク
ハローワークの正式名称は公共職業安定所です。国が行っている職業紹介事業を提供する場所になります。
ハローワークでは、企業に対して、仕事を探している求職者を紹介することが主な業務であり、民間が運営する一般的な転職エージェントと同じく、求職者の利用だけでなく人材を求める企業の利用も無料となっています。
障害や病気のある人専用の窓口もあり、障害や病気への理解のある企業の求人情報を、たくさん紹介してくれます。
デイケア
デイケアは、生活支援や介護を要する人が、訓練や支援を受けるためのサービスです。
病院が運営している事が多く、医療機関との連携が取りやすいという特徴があります。
医療スタッフが常駐している場合も多いので、体調面の不安が大きい場合には安心です。
障害者向け就職サイト
障害者向けの求人サイトは様々な企業が提供しており、一般的な求人サイトだけでなくエージェントがついたりする企業もあります。自身の状態を把握してもらうことができ、相談しながら就職活動を進めることができます。
例えば、atGPという転職支援サービスでは求人検索はもちろん、その他にも面接練習や書類作成、企業間とのやりとりやアフターフォローなど、総合的なサポートを受けることができます。
費用は一切かからず、2,500社にも及ぶ業界トップクラスの求人企業ネットワークと、15年以上にわたるサポート実績があるので、安心して利用することができます。
就労移行支援
障害者就労の福祉サービスとして、「就労移行支援」というものがあります。就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスのひとつです。
一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートをおこないます。
うつ病の人が就職するときは、就労移行支援の利用がおすすめ!
就労移行支援の利用対象者
利用対象者は以下の通りです
・身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病のある方
・65歳未満の方
・一般企業へ就職したいと考えている方
就労移行支援は障害者手帳の有無に関わらず、就職に困難が認められる方も、医師や自治体の判断などにより利用することができます。
就労移行支援の利用料金
前年度の世帯所得によって変化しますが、多くの方が無料で利用しています。ですので、負担が少なく無理なく通い続けることが可能です。
就労移行支援の利用方法
STEP①
通える範囲の就労移行支援事業所を探す
STEP②
興味のある事業所に電話、もしくはHPからお問い合わせ
STEP③
相談、見学、体験などを実施
STEP④
お住いの地域の障害福祉課でサービス受給者証を発行
STEP⑤
就労移行支援事業所にて利用契約、サービス利用開始
上記が基本的な就労移行支援事業所利用までの流れになります。お問い合わせや相談、見学・体験なども基本的には無料で行うことができますので、ご気軽に興味のある事業所にお問い合わせしてみてください!
現役就労移行支援がおすすめする事業所5選
たくさんの会社が就労移行支援事業所を運営しているので、どれを選べば良いかわからないという人も多いと思います。
ここでは、うつ病の人におすすめの就労移行支援事業所を5つご紹介します!
うつ病状専門の就労移行支援【atGPジョブトレ うつ症状コース】
うつ病患者の方の支援に特化したプログラムがあり、同じうつ病で悩んでいる人と一緒に困難を乗り超えていくことができます。
そのための、自分の症状の理解や、自らの感情をコントロールできるようにするプログラムが用意されているので、就職して終わりのスキルではなく、就職した後に必要な能力も身につけることができます!
働きたいあなたを応援する就労移行支援サービス 【ココルポート】
ココルポートは、個別支援に徹底的にこだわっていて、個人のペースにあった支援を受けることができるのが最大の特徴です。
まずは可能な範囲で通所が可能で、少しずつ慣れていきたい方には特におすすめの事業所になります。
また、大手の就労移行支援事業所なのに、昼食費や交通費の補助もあるのは魅力の一つです。
障がいのある方への就労移行支援【パーソルチャレンジ・ミラトレ】
「doda」で有名なパーソルグループの運営する就労移行支援サービスで、大手企業ならではの幅広い求人を持っているのが強みとなっています。
全国の就労移行支援事業所の就職率が22.4%であるのに対して、パーソルチャレンジ・ミラトレの就職率は98%と高いことが特徴です。
自分に合った求人を見つけ、少しでも早く就職したいという人には特におすすめの就労移行支援事業所です。
最大手ならではの安定した支援【LITALICOワークス】
「LITALICOワークス」は株式会社LITALICOが運営する就労移行支援事業所です。
株式会社LITALICOは業界では最大手の就労移行支援事業所です。そのため地方にも事業所があり、かつどの事業所でも安定したサービスが提供されています。
多くの人の支援から得られたノウハウを活かし、障害や仕事に対する悩みにも的確なアドバイスをしてくれます。
web系I T系に強い就労移行支援事業所【root】
就労移行支援事業所ルーツの最大の強みは、IT分野の訓練に特化しているということです。
IT分野に強い人材の需要が大きくなっているこの時代だからこそ、IT・Webスキルを身につけておくことで就職先の選択肢が一気に広がります。
IT系に就職したい!スキルを身につけたい!という方におすすめの事業所です!
うつ病になっても就職できる
この記事では、うつ病の人はどのように就職活動を進めるべきか、また、利用可能なサービスにはどのようなものがあるか紹介してきました。
うつ病になってしまうと、何事もネガティブに考えてしまい、なかなか就職活動への意欲が湧かないと思います。
ですが、正しい対処ができれば、必ず就職できます。
頼ることができる人はたくさんいるので、一人で抱え込まずに、安心して就職活動をしましょう。