「コミュニケーション」は、学校生活や仕事など様々な場面で必要とされます。
特に働く上では、技術的なスキルだけではなく、周囲と上手くコミュニケーションをとりながら業務をすることができる能力が求められています。
一方で、最近では俗称として「コミュニケーション障害」という言葉もよく聞くようになりました。「コミュ障」という言葉が若い世代を中心に広がり、主に「空気が読めない」「意思疎通が難しい」といった場合に使われます。
今回は、「コミュニケーション障害」の俗称や医学的な種類の違いやおすすめの支援先、仕事で上手く付き合う方法についてご紹介します。
目次
コミュニケーション障害とは
コミュニケーション障害は種類が様々です。大きく分けると3つで、対人関係が苦手である俗称としてのコミュニケーション障害と医学的なコミュニケーション障害、コミュニケーションに困難が生じる疾患があります。
俗称的なコミュニケーション障害
俗称として言われている「コミュ障」は、他者と意思疎通をはかることや他者の気持ちを理解することが苦手であることを言います。
特に、雑談などの他愛もないような会話が苦手な場合が多く、仕事上での会話や事務連絡などは比較的可能なこともあります。
一方で、人の話を聞き入れず自分の主張が強かったり、喋りすぎるなど、会話に苦手意識は感じていないが、人との距離を測れず悪影響が生じても自覚がない場合もあります。
コミュニケーションが苦手なことで、上手く対人関係が築けないことがありますが、その背景には、医学的なコミュニケーション障害であったり、発達障害や知的障害、うつなどの精神疾患である場合もあります。
医学的なコミュニケーション障害(DSM-5)
コミュニケーションや会話、言語に困難がある5つの疾患の総称です。
アメリカ精神医学会の「DSM-5」(「精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版)には、「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群」と診断名が記載されています。
参考:日本精神神経学会「DSM5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」
コミュニケーションに困難が生じる疾患
医学的に診断として出るコミュニケーション障害ではなく、症状の一つとしてコミュニケーションに困難が生じる別の疾患もあります。
例えば、発達障害や知的障害、うつ病などの精神疾患があります。
医学的コミュニケーション障害の種類と原因【DSM-5】
言語症/言語障害
言語の理解や使用に困難があります。症状や原因は様々で、発声発語器官に異常があり正しい発音ができなかったり、大脳の言語領域への異常で使える言葉や構文の種類が限られています。
語音症/語音障害
言語能力自体は正常にもかかわらず、言葉を明瞭に発することが難しい状態です。会話による意思疎通が難しいために社会生活に支障が生じることがあります。治療により改善する場合が多いです。
小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害(吃音)
言葉をスムーズに話すことが難しい状態です。音を繰り返し発声したり、引き延ばしたり、言葉が出せず間が空いてしまったりします。言いにくい言葉を避けて言葉の言い換えをすることもあります。
社会的(語用論的)コミュニケーション症/社会的(語用論的)コミュニケーション障害
特定不能のコミュニケーション症/特定不能のコミュニケーション障害
コミュニケーションに困難が生じる疾患【発達障害・精神障害】
今回は、医学的に診断として出るコミュニケーション障害ではなく、症状の一つとしてコミュニケーションに困難が生じる疾患の一つである発達障害を中心にご紹介します。
自閉スペクトラム症(ASD)
相手の気持ちなどのあいまいなことを理解することが苦手だったり、臨機応変な行動をとることが難しいため、対人関係が苦手な傾向があります。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
物事を順序立てることが苦手で期日を守ることができないなどの不注意や、衝動性などの特性があることでコミュニケーションが難しい場合があります。
学習障害(LD)
知的な遅れはなくとも、「聞く」「話す」「読む」「書く」「推論する」能力に困難が生じる特性があり、コミュニケーションに困難が生じる場合があります。
その他の疾患
- 知的障害
- 脳性麻痺
- てんかん
- うつ病
- 適応障害 など
コミュニケーション障害の方におすすめの支援先
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、各都道府県に設置されている相談窓口で、心の問題や病気での困りごとに対応してくれます。受診する医療機関を探す相談も可能です。精神科医などの専門職の方が在籍しています。
医療機関
コミュニケーション障がいが疾患によるものの可能性がある場合や、障がいによって体調を崩してしまっている際には、医療機関を受診し相談すると良いでしょう。耳鼻咽喉科や診療内科、精神科などの機関があります。
地域若者サポートステーション(サポステ)
地域若者サポートステーション(サポステ)は、働くことに悩みを抱えている15歳~49歳までの方に対し、就労や職場定着に向けた支援を行う厚生労働省委託の支援施設です。
一人ひとりに合わせた支援プログラムを組み、キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談、コミュニケーション訓練などによるステップアップはもちろん、協力企業への就労体験などを行います。
全国の方が利用しやすいよう全ての都道府県に必ず設置しています(全国177箇所|2021年度)。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般企業への就労を希望する障害や難病の18歳~65歳未満方に、職業訓練や就職活動のサポート、職場定着のサポートをする福祉施設です。
今回は、おすすめの就労移行支援事業所を3つご紹介します。
事務職を目指す就労移行なら「ミラトレ」
「パーソルチャレンジ・ミラトレ」は、パーソルホールディングス株式会社が運営する就労移行支援事業所。
パーソルホールディングスは障害者向け転職・就職支援「dodaチャレンジ」を運営しているため、就職に関するノウハウがありおすすめ。
実際、ミラトレを利用した方の98%は就職に結び付いています。
また、臨床心理士などの専門資格をもつスタッフが在籍している点も評価できるポイントです。
対象 | 精神・発達・知的・身体・難病 |
就労実績 | 不明 |
定着率 | 80% (2018年度|半年) |
対象地域 | 東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫 |
事業所数 | 13事業所数 (2021年度) |
※公式ホームページへ飛びます
ITスキル特化の就労移行なら「ルーツ」
「ルーツ」は株式会社LOGZが運営する就労移行支援事業所。(一部フランチャイズ店舗のため運営会社が異なります。)
「IT・Webに強く、ホームページ制作スキルやデザイン、プログラミング、動画編集など幅広いスキルを学ぶことができます。事務職や販売職はもちろん、IT技術職の就労実績があるのが特徴。基本的なパソコンスキルに加えAdobeやRuby、Pythonを学べることもおすすめポイントです。
対象 | 精神・発達・知的・身体・難病 |
就労実績 | 33名 (2020年度) |
定着率 | 78% (2020年度|半年) |
対象地域 | 東京(四ツ谷・池袋)、神奈川(横浜関内・横浜西口、川崎)、千葉、大阪(新大阪) |
事業所数 | 7事業所 (2021年度) |
※公式ホームページへ飛びます
基礎的なITスキルも学べる大手就労移行なら「ココルポート」
「ココルポート」は旧Melkで、株式会社ココルポートが運営する大手の就労移行支援事業所。
基本的なパソコンスキルに加えAdobeやPHP、SQLなどを学べることもおすすめポイントです。
定着率が91%と高いです。また、交通費と昼食費の補助もあります。
対象 | 精神・発達・知的・身体・難病 |
就労実績 | 1,935名(2021年7月時点) |
定着率 | 91%(2018~2019年度|半年) |
対象地域 | 埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪・福岡 |
事業所 | 57事業所 (2021年度) |
※公式ホームページへ飛びます
コミュニケーション障害と仕事で上手く付き合う方法
上記で述べたように、コミュニケーションが苦手な背景には、コミュニケーションに関わる障害や疾患を持っている可能性があります。
しかし、社会生活をしていくにあたり、特に職場では人とコミュニケーションをとっていく場面は必然的に訪れるでしょう。
コミュニケーションに苦手意識のある方は、上手く付き合っていくために工夫できることはいくつかあります。ポイントを押さえて活かしていきましょう。
ビジネスマナーを習得する
臨機応変にその場に合わせたマナーを意識することが苦手な方は、マナーのルールや仕組みを一通り覚えることをおすすめします。
あいさつやあいづちなどは、実践しやすいです。
話し方としぐさに気を配る
話の内容が思いつかないと悩んでいる方は、聞き役に回るのも一つの方法です。話すだけでなく聞くこともコミュニケーションをする上で必要な要素です。
また、話し方や姿勢でも相手に与える印象が大きく変わるので、会話がしやすくなります。
以下のポイントを押さえると好印象になりやすかったり、コミュニケーションがスムーズになりやすいです。
- 相手の顔を見て話す
- 声のトーンを少し高くして話す
- 相手が聞き取りやすいよう、言葉の語尾をはっきりと発音する
自分の特性を理解し、自分に合った環境で働く
コミュニケーションが苦手というのも様々です。自分はどういう場面でのコミュニケーションが苦手なのか、まずは自分の特性を知るということが大切です。
自分の障害の把握や就職の希望などを整理したい時には、「就労パスポート」を使用することをおすすめします。
就労パスポートとは、障害のある方が働く上での自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮について整理するツールです。
自分のことを理解することで、自分に合う環境はどういったところなのかが見えてきます。
また、無理に克服しようとせず、比較的一人で黙々と集中して進められる業務もおすすめです。
例えば、システムやアプリをつくるエンジニアやプログラマーです。コミュニケーションが必要な場面ももちろんありますが、作業自体は一人で黙々と行うことが多いです。
その他には、工場での作業などは自分の担当が決まっており、担当の業務に集中することができます。
無理はしすぎず、専門機関に相談する
コミュニケーションを意識しすぎると疲れてしまいますよね。辛い時は無理にコミュニケーションを取る必要はありません。
ただ、自分だけで限界を感じた時は、支援を利用してコミュニケーションの苦手に対して対処していくこともできます。
上記でお伝えした、医療機関や就労移行支援などの支援先を利用しましょう。
就労移行支援の場合、利用の前に相談や見学ができるので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
無理をせずに支援を頼りながら、あなたに合った方法でコミュニケーションの苦手に向き合っていきましょう。