ADHD(注意欠陥・多動性障害)がある方は、注意力の問題で仕事が長続きしなかったり、人間関係のトラブルが生じたりと様々なことに苦労し、仕事をするのが辛いと感じることがあるでしょう。
「仕事が辛いけど、簡単に辞めるわけにはいかない…」「辛い時にどうしたら良いかわからない…」など、たくさんの悩みがあると思います。
この記事ではそんな方に向けて、仕事が辛い時の対処法と、相談することができるサービスを紹介します!
【杉山暁星】
自分の行動で世界中の誰かに少しでも良い影響が与えられればなという思いで、Puenteでインターン生として記事を執筆しています!
目次
ADHDとは?
ADHDとは
ADHDとは発達障害の1種です。
「注意欠陥・多動症」「注意欠如・多動性障害」とも呼ばれています。
主な症状としては以下の3つが挙げられます。
・集中力が続かない「不注意」
・周りの目を気にせず、思い立ったらすぐ行動してしまう「衝動性」
・じっとしていられない「多動性」
ADHDは、上記の不注意、衝動性、多動性などの症状が、日常生活において障害になっており、これが6か月以上続いている状態のことを指します。
その原因などはいまだに判明していないですが、遺伝、環境、脳機能の発達の遅れなど様々な説が飛び交っています。
ADHDの特徴
ADHDには「不注意性」「衝動性」「多動性」の3つが主な症状として挙げられます。
具体的には日常生活において以下のような事例が見受けられます。
【不注意性】
・仕事・学業に取り組んでいる際に集中が持続しない
・不注意なミス、ケアレスミスが多い
・指示に従うことが難しく、マルチタスクが苦手
・忘れっぽい
・紛失物が多い
など
【衝動性・多動性】
・手足を一定の位置におけず、ずっと動かしてしまう
・同じ席やいすに長時間いることができない
・スイッチが入ると止まらなってしまう
・感情や欲求にストレートなため人間関係においてトラブルが発生しやすい
・好奇心が旺盛
など
ADHDの方が仕事で抱える悩み
ケアレスミスが多い
ADHDの方が抱える悩みの1つ目は、業務中のケアレスミスが多くなることです。
ADHDの症状の1つである「不注意」が原因で起きてしまうようです。
仕事でミスが増えると、仕事ができない人として扱われてしまうことも多く、仕事が回ってこない、昇進させてもらえないといったことの原因にもなります。
マルチタスクが苦手
ADHDの方が抱える悩みの2つ目はマルチタスクが苦手ということです。
職場では、複数の作業を同時進行で進めなければならない場面が多々ありますが、そのような場面でミスが増えてしまいます。
アルバイトにおいても、マルチタスクで業務を進めることが求められるケースは多いです。
例えば、レジ打ち一つにしても、商品をスキャンし、お客様のカードを受け取りポイントを付ける、割引を適用するというように、複数の作業を同時に、短時間で進めることになります。
ADHDの症状の1つである「不注意」が根本的な原因で起きてしまいます。
集中力が続かない
ADHDの方が抱える悩みの3つ目は気が散って集中力が続かないということです。
仕事では、基本的に、長時間集中して作業をすることが求められます。
しかし、ADHDの方の場合「不注意」の症状から、一つのことに集中することが苦手な傾向にあります。
また「多動性・衝動性」の症状から、欲求のコントロールが苦手な傾向にあり、他の事に興味が移りやすいため集中が続かないことがあります。
自分に合う職場や向いている職業がわからない
悩みの4つ目は、自分に合う職場や向いている職業がわからないということです。
「事務作業でミスをしてしまったため、今のまま次の職場で事務作業を任されても、またミスをしてしまうのではないか。」そういった悩みを抱えている方は少なくありません。
また、「感情や欲求のコントロールがうまくできず、前の職場で人間関係のトラブルを起こしてしまった。次の職場でも人間関係でトラブルを起こさないだろうか。」そういった不安を抱いている方もいるでしょう。
アルバイト・仕事を選ぶうえで自身の症状や特性を理解すること、そして、それを踏まえたうえで自分にあった職業を見極めることが重要です。
「仕事を辞めたい」と感じたら?
仕事が辛く、辞めたくなることもあるでしょう。
しかし、思い立ってすぐに仕事をやめてしまうのではなく、何か手軽にできることがないか探して見るべきです。
医療機関を受診する
仕事を辞めたいと感じる時は、かなりのストレスが原因で、抑うつ状態(うつ病の手前の段階)や燃え尽き症候群になっている可能性が十分にあります。
このような状態に陥ってしまうと、自力で元の心理状態に復帰することが難しく、症状の悪化で身体に悪影響が出る可能性が高いです。
大袈裟に感じるかもしれませんが、適切な処置やアドバイスを受けたり、今の悩みを打ち明けることで気分も楽になるでしょう。
職場内で別の仕事・部署に異動できないか検討する
今の仕事が辛いと感じたら、別の仕事や部署に異動することもおすすめです。
部署が変われば、今自分が置かれている環境がリセットされ、人間関係や仕事内容が変わります。
ある程度の規模の職場でないと部署の移動まではできないかもしれませんが、業務内容に関して上司に正直に相談すれば、少しは負担が減る可能性もあります。
職場の休業制度について調べる
休職制度を利用するには病気の診断や、家庭の事情など適切な理由が必要です。
一定の期間仕事を休むことで、仕事を辞める前にできる対策を考えられたり、ストレスがなくなったり、職場側で対応を検討してくれるなど、問題の解決につながる可能性もあります。
会社によっては休職制度がなかったり、雇用形態によって制度が異なったりする場合がありますが、いきなり退職に踏み切るのではなく、一度制度について確認しておきましょう。
一度仕事から離れ、時間をかけて落ち着いて考えてみることができれば、退職まではしなくても良くなるかもしれません。
仕事が辛い時に頼れるのは?
発達障害専門医
発達障害を専門とする精神科医師です。
発達障害を専門としていることから、職場での悩みや日常での困りごとについての質問に対して、より効果的なアドバイスが受けられます。
精神科・心療内科
発達障害を専門とする医師は多くないので、なかなか診療してもらえないことがあります。
そのような場合は、一般の精神科・心療内科に行くのも手段の一つです。専門医でなくても、ADHDが原因でこれらの医療機関を受診する人は多いので、ノウハウはあります。
普段の悩みを打ち明けてカウンセリングに乗ってもらうだけでも、心理的に楽になるでしょう。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターとは、全国に展開している国立の障害者支援機関のことです。
国立の機関であることが最大の強みで、地域の保険、医療、福祉、教育、労働などの関係機関と連携した支援を行ってくれます。
専門機関なので、自分の障害に関する様々な相談ができ、適切なアドバイスと指導を行ってくれます。
就労支援としては、公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの労働関係機関と連携して情報提供を行ってくれます。
また、必要に応じて、センターのスタッフが就労先を訪問し、障害特性や就業適性に関する助言、作業工程や環境の調整なども行ってくれることもあります。
転職エージェント
転職の相談に乗ってくれる支援員です。
障害者雇用に特化している転職エージェントもおり、障害者雇用の現状を踏まえた的確なアドバイスを受けられます。
障害者雇用をしている企業や、転職を考えている障害者の悩みについての理解も深いので、転職をする前にぜひ相談しておきたいです。
就労移行支援事業所という選択肢
仕事が辛く辞めたいと思った時は、まず誰かに相談をするべきです。
相談した上で、退職・転職をするという決断をした場合、一度就労移行支援事業所に見学に行ってみることをおすすめします。
就労移行支援事業所とは
就労移行支援とは、一般企業への就職を希望する障がい者に向けて、適性に合った職場探しや、仕事のスキルの向上、就職後の定着をサポートしてくれるサービスです。(参照元|就労移行支援|厚生労働省)
「仕事でミスが続いてしまった…。」
「職場での人間関係がうまくいかなかった…。」
という悩みを抱えて退職・転職に踏み切ったとしても、次の職場ではそれが完全に防げるという保証はありません。
次の仕事を始める前に、就労移行支援事業所で、職場で上手くやっていくためのスキルや対処法を学ぶことで、今よりも成長して次のステップへ進めるでしょう。
利用対象者
利用対象者は以下の通りです
・身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病のある方
・65歳未満の方
・一般企業へ就職したいと考えている方
就労移行支援は障害者手帳の有無に関わらず、就職に困難が認められる方も、医師や自治体の判断などにより利用することができます。
利用料金
前年度の世帯所得によって変化しますが、多くの方が無料で利用しています。ですので、負担が少なく無理なく通い続けることが可能です。
ADHDの人におすすめの就労移行支援事業所
一般型の就労移行支援事業所
ココルポート
「ココルポート(旧:Melk)」は、株式会社ココルポートが運営する大手の就労移行支援事業所。
何かの分野に特化した支援ではありませんが、マイクロソフトオフィス講座、プログラミング講座等の様々な講座を開いています。
また、ビジネスマナーである来客対応やお茶出し、電話対応などのスキルを訓練することもできます。
自分の特性がどこにあるのか再確認し、新しい可能性を見てみたい方におすすめの就労移行支援です。
ココルポートの強み
・定着率がとても高い
・豊富な種類の講座がある
・交通費と昼食費の補助もある
ココルポートの弱み
・特化型の支援は行っていない
対象 | 精神・発達・知的・身体・難病 |
就労実績 | 1,325名 (2020年度) |
定着率 | 89.4% (半年間) |
対象地域 | 東京・神奈川・千葉・埼玉・福岡 |
事業所数 | 47事業所 (2020年度) |
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LITALICOワークス
「LITALICOワークス」は株式会社LITALICOが運営する就労移行支援事業所です。
株式会社LITALICOは業界では最大手の就労移行支援事業所です。そのため地方にも事業所があり、かつどの事業所でも安定したサービスが提供されています。
多くの人の支援から得られたノウハウを活かし、障害や仕事に対する悩みにも的確なアドバイスをしてくれます。
LITALICOワークスの強み
・累計就労実績No1
・業界の最大手
・事業数が多い
LITALICOワークスの弱み
・特化型の支援は行っていない
対象 | 精神・発達・知的・身体・難病 |
就労実績 | 1,384人 (2018年度|全体) |
定着率 | 88% (2018年度|半年) |
対象地域 | 北海道・宮城・東京・神奈川・千葉・埼玉・栃木・静岡・愛知・兵庫・京都・大坂・岡山・広島・福岡・宮崎・沖縄 |
事業所数 | 94事業所 (2021年度) |
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発達障害に特化した就労移行支援
atGPジョブトレ 発達障害コース
「atGPジョブトレ 発達障害コース」は株式会社ゼネラルパートナーズが運営する就労移行支援事業所。
自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、ADHD、LDなど発達障害専門のサービスです。
発達障害に特化しており、ひとりひとりに担当がつくため、障害特性を理解した効果的な支援が受けられます。
atGPジョブトレ 発達障害コースの強み
・発達障害専門カリキュラム
・障害特性を理解した効果的な支援
・定着率が高い
atGPジョブトレ 発達障害コースの弱み
・事業所が3つしかない
対象 | 発達障害 |
就労実績 | 不明 |
定着率 | 90% (2020年度|半年) |
対象地域 | 東京(秋葉原・大手町)・大阪(梅田) |
事業所数 | 3事業所 (2021年度) ※2021年2月1日に横華事業所OPEN |
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Kaien
「Kaien」は株式会社Kaienが運営する就労移行支援事業所。
発達障害を専門にしており、講座や動画学習が充実しているのがポイント。
発達障害に理解のある企業のKaienだけの独自求人が150社以上あります。
また定着率も1年間で95%と驚きの高さです。
Kaienの強み
・事務だけでなく専門スキルも学べる
・定着率がとても高い
・独自求人がある
Kaienの弱み
・原則週5日通所(調整は可能)
対象 | 精神・発達 |
就労実績 | 1000人 (2015年度) |
定着率 | 95% (1年間) |
対象地域 | 東京(秋葉原・新宿・代々木・池袋・市ヶ谷)・神奈川(横浜・川崎)・大阪(天六・福島) パートナー事業所:福島・宮城・長野・大阪・愛知 (2020年度) |
事業所数 | 12事業所 (2021年度) |
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専門スキルに特化した就労移行支援
atGPジョブトレ IT・Web
「atGPジョブトレ IT・Web」は株式会社ゼネラルパートナーズが運営する就労移行支援事業所です。
2019年に開所した、比較的新しい事業所です。
症状別のコース制で、現役プロクリエイター講師のノウハウが詰まった動画講座と、専門スタッフによるサポートでプログラマーやWEB制作のスキルを身につけられるため、Webスキルを身につけたい人におすすめの就労移行支援です。
ジョブトレIT・Webの強み
・事業所がおしゃれ
・Web制作のスキルが学べ
・Webスキル専門でやっているため特化している
ジョブトレIT・Webの弱み
・事業所が3つしかない
対象 | 精神・発達・知的・身体・難病 |
就労実績 | 新規開所のため不明 |
定着率 | 新規開所のため不明 |
対象地域 | 東京(渋谷・秋葉原) 千葉(舟橋) |
事業所 | 3事業所 (2021年度) |
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ルーツ(roots)
「ルーツ」はLOGZGROUP株式会社が運営する就労移行支援事業所。
ITに強く、ホームページ制作スキルやデザイン、プログラミングなど幅広いスキルを学べる就労移行支援事業所です。
事務職や販売職はもちろん、IT技術職の就労実績があるためおすすめです。個別のカリキュラムや講座があり、基本的なパソコンスキルに加えillustratorやPhotoshop、Ruby、Python、Premior Proなど10以上のスキル学ぶことができます。
ルーツの強み
・事務だけでなく専門スキルも学べる
・IT業界に就職できる
ルーツの弱み
・事業所がまだ少ない
対象 | 精神・発達・知的・身体・難病 |
就労実績 | 33名 (2020年度) |
定着率 | 78% (2020年度|半年) |
対象地域 | 東京(四ツ谷)、神奈川(横浜関内・川崎・横浜西口)、千葉(千葉)、大阪(新大阪) |
事業所数 | 7事業所 (2021年度) |
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仕事が辛い時は、誰かに頼ろう
今回は、ADHDが原因で仕事が辛いという人に向けて、困った時の簡単な対処法や、おすすめの相談機関・サービスについてご紹介しました。
仕事が辛いという人はあなただけではありません。辛い時に頼ることができる人たちもたくさんいます。
この記事を読んで、少しでも解決につながるヒントが得られれば幸いです。