【友情結婚】恋愛を伴わない結婚のカタチ|妻と彼氏をもつ友情結婚経験者・西野なるみさんにインタビュー

「結婚」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?

男性と女性がお互いに恋愛感情を抱き、籍を入れて一緒に暮らしていくことでしょうか。しかし様々な価値観や多様な生き方が選択できるようになっている現在、結婚に関する選択肢も増えてきています。

今回は様々な結婚のカタチの中でも「友情結婚」に焦点を当て、実際に友情結婚をした西野なるみさんにお話を伺いました!

「友情結婚」という結婚のカタチ

友情結婚とは?

「友情結婚」という言葉を聞いたことがありますか?

いわゆる普通の結婚は、「恋愛感情をもった男性と女性が、一緒に暮らし、家庭を築いていく」というカタチが多いですよね。

しかし同性が恋愛対象である人、他者に対して恋愛感情を持たない人、性的欲求を抱かない人、など様々なセクシュアリティをもつ人がいる中、結婚のカタチも多様化しています。そのうちの一つが、「友情結婚」です。特に、LGBTQなどのセクシャルマイノリティの方が家庭を築くひとつの方法として注目されています。

友情結婚とは、恋愛関係にない者同士がお互いの利害の一致・考え方の一致等により、性愛はなくても、友情もしくは友情以上の愛情でwinwinな婚姻を結ぶことを言います。所謂、偽装結婚(籍だけ・ビザ目的・金銭目的での結婚)とは異なり、多種多様な生き方がある中で、自分らしいライフスタイルを得るための選択肢の一つです。

(参照元|友情結婚とは?|友情結婚相談所カラーズ


友情結婚経験者・西野なるみさんにインタビュー

西野なるみ   にしのなるみTwitter
東京在住。LGBTQのゲイを自認しており、2018年に友情結婚相談所を通して知り合った女性と友情結婚をする。自身のブログを通して、友情結婚に悩む当事者に向けて情報発信を行っている。

–本日はよろしくお願いします。簡単に自己紹介をお願いします!

はい、西野なるみと申します。

僕はセクシャルマイノリティのゲイを自認していて、現在は彼氏がいます。僕のようなセクシャルマイノリティにとって、恋愛結婚をするのは難しいんですよね。家庭を築きたいと思っていても、ゲイだから女性に恋愛感情は持たないし、性的な関係を持つことはできません。そこで、二年前にアセクシャルの女性と友情結婚をしました。

友情結婚という選択肢

西野さんが友情結婚をしようと思ったきっかけは何でしたか?

自分の結婚観に大きく影響を与えたのは、自分が一家の長男として生まれ、しかも兄弟の中で男性が自分だけだったということでした。家族にも、当然のように「家を継いでほしい」と思われていたし、自分自身も「女性と一緒に暮らして、家庭を築きたい」と思っていました。

でも一方で、僕は男性しか好きではないゲイなので、どうしたらいいか分からず困っていましたね。ゲイでも結婚して家庭を築くためにはどうしたらいいのか、と考えているうちに友情結婚の存在を知りました。

友情結婚を知った時は、自分が元々考えていた理想の結婚のカタチに名前があることに驚きました。不安はなくて、こういう道も選択できるんだという安心感があり、頑張って結婚相手を見つけていこうという気持ちになりました。

どのようにして結婚に至ったのですか?

まず最初は、インターネットで友情結婚について調べました。友情結婚を希望する人が集まる掲示板があって、そこで結婚相手の募集をかけたり、連絡を取ったりすることができるんです。掲示板で僕の希望に合う女性を見つけたら、「良かったら会ってお話しできませんか」とお話をしました。

でもやはり、友情結婚をしたいと考えている人の数自体が少ないので、なかなか出会えないという悩みがありました。一年ほど掲示板上で活動しても、実際に会えたのは三人ほど。そこで別の方法を試そうと思い、友情結婚の相談所に入りました。

なるほど、西野さんはどんなお相手の方を希望していたのですか?

僕の夢は「家庭を築く」ということだったので、子供が欲しいと思っていました。もちろん子供は授かり物ですが、結婚相手と一緒に暮らしたいという気持ちは強くありました。

友情結婚を希望する人によっては、同居ではなく近くのマンションを借りて別居したいという方や、連絡を取って月に数回だけ会いたいという方もいらっしゃいました。ただ書類上の婚姻だけで、という方もいましたね。色々な結婚のカタチがありました。

でも僕自身は、一生添い遂げるパートナーとして結婚して生きていきたいと考えています。なので、「一緒に暮らして、楽しく過ごせる」というのが僕の希望でした。

また僕はゲイなので、「僕に彼氏がいても大丈夫な人」というのも希望のひとつでしたね。僕は現在彼氏持ちですが、妻の理解を得られているので、三人で一緒に食事をすることもありますね。

友情結婚を希望される理由も、多様なのですね。

そうですね。中には、家族や会社の上司から「早く結婚しろ」という圧力をかけられて、結婚を望んでいる方もいます。結婚するかどうかが、出世に関わることもあるらしくて。そういう煩わしさを避けるために、婚姻関係だけを望む方もいますね。

または、普段は別々に暮らしていても、お互いにいつでも連絡をとれるようにしたり、お互いの家族に会う時だけ結婚相手として同席するという夫婦もいます。

僕が結婚した人は、結婚相談所を通して初めて会った時から気が合いました。一緒に過ごしていて楽しいなという気持ちになり「結婚しよう!」という話になり、やがて結婚。今は夫婦でありながら親友のような雰囲気で一緒に暮らしています。

友情結婚は本当に成功するの?

実際に友情結婚をしてみて、どうでしたか?

僕の妻は、大親友のような存在です。結婚して、悪かったことよりも良かったことの方が多いですね。苦労もあまり感じていません。

最近は、自宅で二人で一緒に料理をしたり、部屋を掃除したり、買い物に行ったりと、二人で行動しながら過ごしています。旅行に行ったこともあります。やはり、一人でやっているよりは、二人でやっている方が楽しいなと感じることが多いですね。例えば、掃除は一人でやると「面倒だな」と思ってしまうこともありますが、一緒にやるからこそ楽しい部分も感じられます。そのような時には「結婚して良かったな」と思います。

もちろん、一人で暮らすこととは異なり、相手との付き合い方を考えることは多くあります。自分だけで身勝手な行動をする訳にはいかず、相手のことを考えながら行動しなくてはならないですよね。二人になることで大変な部分もありますが、そのような時は都度二人で話し合って乗り越えてきました。

とても幸せそうな暮らしですね!その秘訣は何ですか?

話し合いですね。結婚する前も、結婚した後も。

結婚前の話し合いについては、友情結婚相談所の方がサポートをしてくれました。例えば、「洗濯物を分けるのか」「お風呂は同じでいいのか」などの細かい生活面や、貯金やお互いのお金の支払い、住む場所など、何がお互いにとって都合が良いのかをきちんと話し合いました。あと、寝室を分けるかどうかも話し合いましたね。僕たちは今、ベッドを二つ並べて寝ています。

お互いがどこまで大丈夫で、どこからが嫌と感じるのか、しっかり話し合って二人のルールを決めていくことが大事だと思います。

話し合う上で、工夫されている点などはありますか?

いくら話し合っていても、一緒に住み始めてから気付くことはたくさんありました。そんな時は、常にお互いの意見の擦り合わせが必要です。許せるところは許しあって、ここは許せないという点については正直に伝えるようにしています。

僕たちは夫婦とはいえ、お互いに少し遠慮してしまう癖があるんですよ。自分が我慢すれば良いかなって。でもそうして心の中に溜め込んでしまうくらいなら、お互いに言いたいことは言い合って、話し合って決めていきたいですね。喧嘩のようにはなることはありませんが、二人で正座して「よし、話そう!」という時間は持つようにしています。それが上手くいっている秘訣だと思います。

友情結婚をサポートする「友情結婚相談所」とは?

友情結婚相談所

恋愛じゃない結婚をしたい方や友情結婚したい方が安心かつ効率良く結婚相手を探せる相談所として、アドバイザーが結婚までのサポートを行う。

・20代〜50代のLGBTを含むセクシャルマイノリティの方(ゲイ、レズビアン、バイ、アセクシャル、ノンセクシャル等)
・異性と性的な関係を持つことに抵抗が有る方
・自身のマイノリティを誰にも言いたくなくて、恋愛結婚に疑問を持っているものの、結婚を希望されている方

などを対象に、サービスを行っている。

(参照元|カラーズとは|友情結婚相談所カラーズ

友情結婚相談所について、詳しく教えてください!

基本的には、ふつうの結婚相談所と変わりません。ただ、登録している方はLGBTQなどのセクシャルマイノリティの方なんです。

条件を絞って「年齢が何歳以上」「年収はいくら以上」と指定すると、登録している人の中から上手く自分の希望に合った相手をマッチングさせてくれるんです。もちろん、実際に会ってみないとわからないこともあるので、マッチングの後に当事者間でお見合いをします。

僕は普段、セクシャルマイノリティであることをカミングアウトせずに生活しています。僕のようにカミングアウトしていない人が多い今の社会では、友情結婚を望む人同士が繋がる機会はほとんどありません。そのような状況で、友情結婚前提でマッチングをしてくれる友情結婚相談所はすごく有難いサービスだと思います。

相談所に登録するのには、ある程度お金がかかってしまいます。しかしその分、本気で活動している方や、収入が安定している方が多かった印象ですね。相談所に登録する上で金銭面を気にされる方も多いと思います。しかし掲示板で相手を探して、何年も時間が経ってしまうよりは、がっつり相談してしまうのもオススメです!

 

誰もが生きやすい社会に向けて

友情結婚の経験者が語る、理想の社会

ー西野さんにとって、理想の社会はどんな社会ですか?

僕のようなセクシャルマイノリティであっても「恋人できたよ」っていう話をできる社会だったらいいなと思います。

僕は基本的に、自分がセクシャルマイノリティであることを人に伝えないようにしています。同じくセクシャルマイノリティである友人を除いては、家族や友人に対しても話していません。友情結婚に関しては、「知り合って、仲良くなって、結婚を決めました!」という、あたかも恋愛結婚のような話をしました。それは、自分はセクシャルマイノリティであることを周りに伝えることで、人間関係を変えてしまうのではというリスクが今の社会にはまだあるからです。

いつの日か、「彼女いるの?」「彼氏いるの?」という質問の仕方ではなく、「恋人いるの?」という訊き方をしたり、同性の恋人がいても嘘をつくことなく話せるような世の中になったら、安心できるなと思います。

人生を幸せにする選択肢としての結婚

結婚に関して悩んでいる当事者の方に、メッセージをお願いします!

友情結婚って、あまりグッドケースが共有されないことが多いんです。インターネットで検索をしても「友情結婚 失敗」や「友情結婚 後悔」というサジェストが出てきたり。

でも、だからこそ自分は「そんなことない、友情結婚だって成功するんだ!」ということを伝えていきたいと考えています。

僕自身も、友情結婚という概念を知らなかった時はとても悩んでいました。

でも結婚は紙切れだけの繋がりだけではなく、それ以上の幸せに繋がることもあります。もちろん、結婚が全てだとは思っていません。ただ、結婚には人生を幸せにする可能性をもった選択肢としての側面もある。新しい幸せに繋がるための一つの選択肢として、誰もが結婚という生き方を選べるようになってほしいなと思います。

セクシャリティも、理想の結婚の形も人によってバラバラですが、一つの選択肢として「友情結婚」というものを知った上で、「それもいいかも、結婚してみようかな」と思える人が増えたらと嬉しいです。既存の「当たり前」に執われることなく、自分の好きな方法が選択できたらいいですよね。

ー本日は、ありがとうございました!

最後に

いかがだったでしょうか。

現在、社会における結婚観は多様化しています。事実婚や週末婚などをはじめとして、様々な夫婦のカタチがある中、友情結婚も一つの選択肢と言えるでしょう。

結婚に関して悩みをもつ方も多いですが、まずは友情結婚相談所に話を聞きに行ってみるのが良いかもしれませんね!

 

【編集後記】

「結婚」といえば、「お互いに愛し合う男女のカップルがするもの…」という固定的なイメージを持ってしまいがちですよね。それが逆に重みになって悩まれる方も多いのではないでしょうか。しかし、結婚はあくまで人生のひとつの選択肢。西野さんのお話を伺って、私自身も結婚に対するイメージが明るくなりました!この記事が皆さんにとって、幸せな人生を送るためのひとつのヒントになったら光栄です!

(編集:小野稀代奈|Twitter)

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