枝優花に訊く『スイーツ食って何が悪い!』制作の裏側

インタビューではジェンダーをはじめとする社会への違和感を語ってくださった枝優花監督。

枝さんが初めてテレビドラマの脚本・監督を務めた『スイーツ食って何が悪い!』は、「男らしさ・女らしさ」を考えさせられる、男子高校生3人の人生謳歌グルメドラマ。

今回は、シンガーソングライター崎山蒼士が主演&主題歌を務めたことでも話題になったこのドラマの、テーマ設定の裏側やテレビドラマを制作するときに考えたことを語っていただきました。

『スイーツ食って何が悪い!』テーマ設定の裏側

ーー『スイーツ食って何が悪い!』のテーマはどうやって決まったのでしょう?

「ご飯をおいしく食べている可愛い男の子3人を撮ってほしい」とざっくりした依頼を受けたんです。

依頼をくださった方と「確かに、男の子がおいしいそうに食べる姿っていいですよね」と盛り上がったのですが、いわゆる男子学生がわちゃわちゃする話は書けないと思ったんですね。というのも自分が女性だから。男性にしかわからないあの独特な感じを描くことが自分にはハードルが高いな・・と思いました。

なので「1匹狼が集まる話なら書けます」と(笑)

そこから、ひょんなことから出会った3人がスイーツを食べに行く話に決まりました。

(©ソニー・ミュージックエンタテインメント©2020『スイーツ食って何が悪い!』)

主演は演技初挑戦の現役高校生シンガー・ソングライター崎山蒼志(左)、『夏、至るころ』の主演・倉 悠貴(中央)、『となりの関くんとるみちゃんの事象』の主演・渡辺佑太朗(右)の3人が務める。

「何を食べさせるか」を話し合って、「甘いものを食べている男の子っていいですよね」となりました。

でも実際にキャストに聞いてみたら「恥ずかしくてタピオカも買いにいけない」「コンビニでプリンすら買えない」と言うんです。

1人は「いくつか買う中にプリンがあって、プリンがメインじゃないと主張しないと買えない」って・・衝撃でした。本当に恥ずかしいみたいで。

女性がラーメンや牛丼を1人で食べに行きづらいのと近いと思います。女性のそういう面を描いた作品はありますが「男性側はあまり描かれていないなー」と思い、男性側の男らしさの呪縛、というジェンダーの視点も合わせつつ作りました。

 

男性メインの脚本

ーー枝さんには珍しく、男性メインの作品でしたよね。脚本を書く時に普段と違うことはありましたか?

男性社会の尖った話なら男性に取材しながら作らなきゃかなと思いましたが、今回はターゲットが女性だったのでそこまで意識しなかったですね。

変にリアルな男の子にはしたくなかったんです。電車に乗っている男の子は3人で居ても何も喋らなかったりするじゃないですか。そういうリアルな部分はあえて削いだので、自分でも「こんなにかわいい男の子ってなかなか存在しないよな〜」とわかりつつ作りました。

ただ主演の3人は結構近くて、ほわほわしてますけど(笑)

今回、自分が「可愛い」と思えるものを入れつつ、でも言いやすいセリフになるように書きました。自分の男版みたいな感じかもしれないですね。

 

崎山蒼士の起用

ーーいわゆるジェンダーレス男子だけではなく、全然違うタイプの3人なのがいいですよね。

もともと3人ともお仕事をしてみたかった方々でした。

崎山君はギリギリまで決まっていなくて「崎山君はお芝居をしたくないそうで、まだ決まるかわからないです」と。

崎山くんは、4年ほど前から知っていまして。昔「YouTubeにやばい中1がいる」と身内で話題になって、そのときから「どこかで一緒に仕事ができたらいいな」と興味はありましたが、まさかお芝居で関わるとは思っていなかったです。

たまたまですが、なんとなく自分と性格の似た優しい3人とドラマを作れて楽しかったですね。とても助けられました。

 

テレビドラマと映画の違い

ーー枝さんにとって初のテレビドラマの脚本・監督でしたが、映画と違うことは何かありましたか?

テレビドラマはわかりやすいものがいいと思います。やっぱり尺が短いですし、基本は受動的に観ることが多いメディアかなと。なのでなるべくセリフで説明するのが一般的だと思います。

それを理解したうえで、どうやって自分の色を出すかが課題ですね。

そのフォーマットで作っても面白くはないじゃないですか。誰でもできる。

もしドラマと同じものを映画として撮るなら、全然違うものになると思います。沢山カットを割らなくてよかったり、セリフで説明せず映像でみせたり、受け手の可能性を広げてくれる。

 

ーーネットで映画を見るサブスクがもっと普及したら、映画の撮り方も変わってくるのでしょうか。

新型コロナウイルスの自粛期間中、映画を家で観ていました。

やっぱり劇場用に作ってあるので、家だと集中できなかったり、内容が頭に入ってこなかったり、理解の解像度が低かったり。

劇場は真っ暗で、映像以外に集中することないので感度が高まって、いろいろなことをキャッチできるんですよね。家だとどうしても障害が多いので、感度は半減してしまう。

サブスクの在り方はどうなるんでしょう…。もし映画館が減っていってしまったらサブスクに合わせた撮り方をするかもしれませんが、今のところそれは考えていないですね。

 

最後に

『スイーツ食って何が悪い!』は、「男らしさ、女らしさ」がどうでもよくなる作品。

一見難しいジェンダー問題ですが、映像にすることで言葉にはできない些細な違和感を感じ取ることができました。

枝優花監督の作品を観て、自分らしく生きることについて考えてみてはいかがでしょうか。