自閉スペクトラム症(ASD)とは、人との交流や社会性、言葉とコミュニケーション、行動や興味の3つの領域に発達の遅れや偏りが見られる、先天的な発達障害です。
自閉スペクトラム症の方には、主に「人とのコミュニケーションや関わり」「独特のこだわり行動や振る舞い」で悩むことがあります。
大人になってから診断される人もおり、仕事について悩むことも少なくありません。
この記事では、自閉スペクトラム症(ASD)の方が仕事を継続するための方法、困ったときの相談先について紹介します。
【藤村隼也】
将来は友人との起業を目標に日々、自分磨き中。
学生時代のビジネス経験から有益な情報を多くの人に届けたい。そのような思いで記事を執筆します。
目次
自閉スペクトラム症(ASD)とは?
ASDとはAutism Spectrum Disorder(自閉スペクトラム症)のことで、発達障害の一種です。
社会的なコミュニケーションや他の人とのやりとりが上手くいかない、興味や活動が偏るといった特徴があり、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群といった呼び方をされることもあります。
最近では、早ければ1歳半の検診でその可能性を指摘されることがあります。
・空気を読む、雰囲気を感じるといった、周囲の状況から必要な振る舞いを察することが苦手
・相手が話をしているのに自分の話だけを一方的に話をしてしまう
・建前や冗談が通じず、言葉どおりに受け取ってしまう
・曖昧な表現や、相手の感情など目に見えない物を察することが苦手
などといった、障害が挙げられます。
自閉スペクトラム症の方が仕事で悩むポイント
自閉スペクトラム症のある方が働く上で起こりやすい困りごととして、以下のような例が挙げられます。
仕事の全体の流れをつかみにくい
自閉スペクトラム症の方は、物事の全体像を把握することが苦手です。
このため、作業の優先順位を決めたり、作業を細分化して仕事の段取りを組み立てることも不得意な傾向にあります。
臨機応変な対応が苦手
自閉スペクトラム症の方は、変化に対処することを苦手とし、自分が決めた手順、興味ある事柄や活動などに強くこだわる傾向があります。
また、気持ちの切り換えも苦手なことが多いです。
そのため、業務上の急な予定変更があった場合は、柔軟に対応できずにパニックになったり、こだわるあまり社員同士で衝突したりして仕事がうまくいかないことがあります。
コミュニケーションがうまくいかない
自閉スペクトラム症の方は、話しかけるタイミングが分からない、話している時に相手と目を合わせることが苦手という特性があると言われています。
特に以下の3つのことが苦手な方が多いです。
・相手の気持ちを想像するのが苦手
・暗黙のルールを理解するのが苦手
・自分の感情を場の空気に合わせて表現するのが苦手
その特性から、仕事上のコミュニケーションがうまくいかなかったり、チーム内で孤立してしまうケースも少なくありません。
過集中をしてしまう
自閉スペクトラム症の方の特性の一つに、優れた集中力があります。
その集中力の高さと持続性は、一つの作業に時間を忘れて没頭するあまり、疲れが溜まって体調不良を起こす例もあるほどです。
このような過度に集中した状態は「過集中」と呼ばれます。
音・匂い・色・肌ざわりなどが気になる
自閉スペクトラム症の方の症状の一つとして、感覚過敏が挙げられます。
聴覚が過敏である場合は、パソコンのキーボードを叩く音や空調の音など、職場内での音を非常に敏感に感じてしまい、集中できなくなることがあります。
触覚が過敏である場合は、気に入った触感の衣服を長く着続けたり、他者とのスキンシップが苦手と感じることがあります。
その他にも蛍光灯の光や化粧品の匂いなどに敏感に反応し、そのままでは仕事を継続することが困難となる場合もあります。
感覚過敏は周囲に伝わりにくい症状のため、何が苦手でどのように不快であるかを伝える必要があります。
二次障害が表れる
自閉スペクトラム症の方は、他の発達障害や精神疾患を合併しているケースが見られます。
特に精神疾患は、周囲の人の理解や支援を得ることができない環境下でストレスが蓄積され、心身の症状が悪化し、結果として表れることがあります。
これを一般的に二次障害と呼びます。
自閉症スペクトラムの方が仕事を続ける方法
具体的な計画や指示を確認する
仕事の現場では、「いい感じにやっておいて」「適当に終わらせて」「大体でいいから」といった指示をされることがありますが、自閉スペクトラム症の方はこのようなあいまいな指示に悩む傾向があります。
そのような指示を受けた時は、「いつまでに終わらせるのか?」「どういう手順でやるのか?」といった具体的な数字や方法を聞くようにしましょう。
文字や図を用いた説明を求める
自閉スペクトラム症の方は、口頭での指示よりも写真や図、絵や文字などの視覚情報の方が圧倒的に認識しやすい傾向にあると言われています。
そのため、職場の上司や周囲の方から仕事を依頼される際には、できるかぎり口頭での指示ではなく、工程表やスケジュール表などに落とし込んでもらいましょう。
1つの仕事にのめり込まないようにする
自閉スペクトラム症の方の場合、行動や気持ちの切り替えが苦手であることも少なくありません。
そのため、ものすごく集中力を発揮する一方で、1つの仕事にのめり込むあまり、ほかの仕事が疎かになり支障が出ることがあります。
そうならないための工夫として、例えば次の仕事に移る10分前にアラームを鳴らす、アラームが鳴ったら10分休憩するなど、気持ちや行動を切り替えるきっかけを作りましょう。
予想外の事態が起きたときは周囲に助けを求める
自閉スペクトラム症の方にとって、予想外の事態や予定の変更は大きなストレスとなることがあります。
そのような状況下で、自分で冷静に判断・対処するのは難しい時もあるため、予想外のことが起こったときに、周りに助けを求められるような環境づくりが必要です。
特性を生かした仕事に就く
自閉スペクトラム症の特徴として、仕事上では長所として発揮できることも多くあります。
・規則に従順で規範意識が強い
・関心のある分野に高い集中力を発揮する
・特定の事柄や領域の記憶力に長けている
・視覚情報や文字情報の処理に優れている
これらの特性から、自閉スペクトラム症の方に向いている職種は、集中して正確に物事を遂行する対応が求められる仕事が向いています。
単純作業の反復や、部品等の管理や整理などでも能力を発揮できることが多いです。
まずは、自分の特性を理解し、向いている仕事に就くことが大切です。
↓発達障害の方が仕事を続けられない理由とは?、詳しくはこちら
自閉スペクトラム症の方が向いている仕事
それでは、自閉スペクトラム症の方に向いている仕事にはどのようなものがあるのでしょうか?
具体的には以下のような仕事が向いていると考えられます。
ルールやマニュアルがしっかりしている職種
・経理、財務
・法務、情報管理
・コールセンター
・テクニカルサポートなど
ルールやマニュアルなど決められたものがあればそれ通りにできることが、自閉スペクトラム症の強みの一つです。
経理、財務、法務はもちろん、重要性が増す個人情報の管理などは向いています。
また、しっかりとマニュアルがあればコールセンターやテクニカルサポートなど対人の業務も問題なくこなせます。
数字・論理や豊富な知識で対応できる職種
・プログラマー、テスター
・ネットワークエンジニア
・電化製品等の販売員
・塾での問題作成など
知識や論理などが重要である一方で、ある程度すべきことが予想されるような仕事も自閉スペクトラム症の方に向いています。
プログラマーやネットワークエンジニアなどの仕事に加え、知識が豊富なほど営業トークが高まる電化製品の販売などモノの販売業に適性を感じる人も多いです。
視覚情報が重要である職種
・CADオペレーター
・工業系デザイナー
・設計士など
工業製品などのデザインやCADといった、視覚情報のこだわりが生かせる職種は自閉スペクトラム症の方の特性にフィットする職種です。
自閉スペクトラム症の方が仕事をする上での注意点
ここでは自閉スペクトラム症(ASD)の方が仕事をする上での注意点を紹介します。
自閉スペクトラム症の方が仕事をする上で注意するポイントは以下の4点です。
雇用枠を再検討する
自閉スペクトラム症の方は、雇用枠が自分にあったものかどうかをよく検討するようにしましょう。
雇用枠には、一般枠(クローズ就労)と障害者枠(オープン就労)の2種類があり、ASDに限らず、発達障害を持つ方が長く働き続ける上では重要な分かれ目になります。
それぞれの特徴を紹介しますので、後述する支援機関などに相談しながら検討してみてください。
↓オープン就労とクローズ就労のメリット、詳しくはこちら
一般枠(クローズ就労)とは?
クローズ就労とは、企業に障害があることを明かさずに就職をすることをいいます。
基本的には一般求人で応募をしていくことになります。
クローズ就労の特徴として、障害者求人に比べ求人の種類や職種が豊富であることや、障害者雇用よりも給与水準が高いなどが挙げられます。
障害者枠(オープン就労)とは?
オープン就労では、企業側に障害や病気を明かして就職をします。ほとんどの場合、障害者雇用での就職になります。
障害者雇用で就職をするため、障害者手帳を持っている障害者の方が対象です。
オープン就労の特徴として、業務内容や配属先などの面で配慮を受けられる事や、障害を隠さずに就労をすることで安心感があるなどが挙げられます。
場合によってはアルバイトから始めてみる
自閉スペクトラム症の方がいきなりフルタイムで働きはじめると、心身が持たずに定着できない可能性があります。
最初はアルバイト・パート勤務などの非正規雇用から始めることで、徐々に働くことに慣れていくというのもひとつの手です。
働くことに慣れることができますし、会社や業種があなたにとっての向き不向きなどを、正規雇用よりも身軽に確認できます。
医療機関を頼る
自閉スペクトラム症の方は、自分の意見や感情を絶対的と信じる傾向が症状としてあるため、第三者や専門機関に頼るのを拒絶しがちです。
医療機関に頼らないまま、就職に限らない諸々の悩みをひとりで抱え込んでいると、仕事に行き詰まってしまう可能性が高まります。
医療機関に頼るという事も、ひとつの手段として考えておきましょう。
就労支援事業所を利用する
医療機関は治療を専門としていますが、就労移行支援事業所であれば自閉スペクトラム症(ASD)の障害特性を生かした仕事の進め方や、就職活動の方法をアドバイスしてくれます。
就労移行支援の主な支援内容は、以下の5つです。
①生活習慣改善のサポート
②メンタル面のケア
③専門スキルの講習
④実際の就職活動の支援
⑤職場定着支援
事業所によっては、専門スキルのカリキュラムに注力をしているところもあり、業務で活かせるスキルだけでなく、資格の取得までサポートをしてくれる事業所も少なくありません。
実際の就職活動の支援では、履歴書の添削や模擬面接だけでなく、就職先の候補を一緒に探してもらうことも可能です。
また、就労移行支援と一体となって、就職後の職場定着の支援を行っています。
職場定着の具体的な支援内容としては、定期的な面談の他に、就職先で困りごとがあったときに、企業と利用者の間に入り、仕事や人間関係の悩みを解決するためのサポートが受けられます。
相談は無料ですので、気になった事業所に一度、問い合わせてみることをオススメします。
まとめ「障害の特性を理解して仕事をしよう!」
今回は自閉スペクトラム症(ASD)の方が仕事を継続するための方法、困ったときの相談先について紹介しました。
発達障害を抱えていたとしても、特性を理解してあなたに合った仕事をすることできれば、無理なく働きつづけることは可能です。
支援機関のサポートも活用することで、周囲の人の理解と配慮のある生活環境を作っていきましょう。
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