元仮面女子 猪狩ともか|「自分が車椅子アイドルだとは思っていない」

仮面女子・スチームガールズ
猪狩ともか
 いがりともか (Twitter) (YouTube) (ブログ)
平成3年12月9日生まれ。埼玉県在住。
アリスプロジェクトに所属する、地下アイドルグループ仮面女子のメンバー。2018年4月、強風で倒れた看板の下敷きになり脊髄損傷。車椅子生活になるも、同年8月から仮面女子に復帰。現在はパラスポーツ関連の仕事など幅広く活動している。仮面女子を卒業しソロ活動に移ることを2020年2月に発表した。

2018年4月強風で倒れた看板の下敷きになったアイドル、猪狩ともか。下半身不随で車椅子になった後も笑顔で精力的な活動を続ける彼女は先日、突然の卒業発表を行いました。

今回はそんな猪狩ともかさんにインタビュー。アイドルの下積み時代から事故について、復帰ライブや卒業発表についてまで幅広くお伺いしました。

卒業後、彼女がソロでしていきたい活動とは? 猪狩さん初の著書『100%の前向き思考』に込めた想いをぜひご一読ください。

仮面女子とは

–猪狩さんは現在、仮面女子というアイドルグループに所属していますね。

仮面女子は、仮面をかぶってライブパフォーマンスをする地下アイドルグループです。秋葉原にある仮面女子カフェという常設劇場を中心に、ライブ活動を行っています。

仮面女子は楽曲がかっこよくて素晴らしいので、初めて聴いた人にも好きになってもらえる自信がありますね!

アイドルに憧れたのは、小学生のころ「モーニング娘。」さんにはまったことがきっかけです。でも当時は応援する側だったので、まさか自分がアイドルになるとは考えていませんでした。

アイドルになることを考え始めたのは、管理栄養士の専門4年生で、就職活動をしていた時です。1番行きたかった就職先に受かることができず、「他にどこを受けようかな」と考えていた時に「どこも行きたくないな」と思い、アイドルになることを考えました。


(仮面女子がかぶっている仮面)

長かった下積み時代

–猪狩さんは下積み時代が長かったそうですね。

そうですね。仮面女子になるためには、まず事務所に所属する必要があります。

そこから仮面女子研究生、仮面女子候補生とステップアップし、その後ようやく仮面女子になれるんです。ですが、私はまず事務所に所属することすらできなかったんです。オーディションに受かることができませんでした。

オーディションに落ちた人は見習い生として、当時仮面女子が無料ライブを行っていたステージ付きのメイドカフェで働き、認められたら事務所に所属できるシステムがあった。

結局、見習い生として4~5か月働いた後、ようやく事務所に所属できました。

そこから研究生、候補生までのステップアップはとんとん拍子でしたが、候補生になってからが長かったです。仮面女子になるまでは3年近くかかっています。

 

仮面女子を選んだ理由

–アイドルグループはたくさんありますが、なぜ仮面女子に入ったのでしょうか。

実は、事務所にとってあまりいいイメージの話ではないんです(笑)

「アイドルになりたい」と思った当時、私は21歳でした。アイドルは低年齢化しているので、20歳以上の私をとってくれる事務所がなかなか無かったんです。

「入れる事務所がないな」と思っていた時、26歳までとっている事務所を見つけました。それが今所属しているアリスプロジェクトです。

なので「仮面女子に憧れて」「どうしてもこの事務所がよくて」などの理由で選んだわけではなかったんです。

車椅子生活になった事故の様子とリハビリ生活

–やっと仮面女子に入って、1年くらいで事故に遭われたんですよね。事故の時の様子、覚えていますか?

私の中で大きな事故に遭ったときは、ドラマのように「すぐに気を失って、ぱぁーと目を開いたら病院にいた」というイメージがありました。

でも、ずっと意識があって「あれ、これいつになったら意識なくなってくれるんだろう」と思っていました。肺に血が溜まっていたみたいで、息がしづらく「痛い」というよりは、とにかく苦しかったです。

 

車椅子生活になると知って

–車椅子生活になると知ったのはいつ頃でしたか?

手術から約2週間後です。それまでも担当医の方から「脊髄損傷していて、まひが残ってます」という話は聞いていました。でも知識がなかったので、まさかそれがずっと続くものだとは思わず「全治3か月くらいかな」と思っていたんです。

徐々にスマホを触り始めて「脊髄損傷」などと調べてみると、自分が思っていたように数ヶ月で治るものではなく、車椅子になることを知りました。

 

リハビリの日々

–そうだったんですね。リハビリはいつからはじめていたのでしょうか。

事故に遭って救急車で運ばれた後、まずICU病棟に行きました。そこからHCU病棟、一般病棟と移り、リハビリをはじめました。

ですが、リハビリ自体は手術の翌日からしていて、今も続けています。事故の翌日は歩行器など、がっつりしたリハビリではなく、先生にマッサージしてもらったり、そのようなところからスタートしましたね。

 

–今は、例えば床トラ(床から自分で車椅子に乗る)などはできますか?

それができないんですよー!結構、力が必要なんです。理学療法で何回か習いましたが、なかなかできるようにならなくて。

ですが、できるようになったこともあります。普段はイスをどかして、そこに車椅子をいれるのですが、ソファーが固定されたお店もありますよね。

前に友達と一緒にお寿司屋さんに行った時、やっぱりソファーと机が固定されていました。その時に、自分で車椅子からソファーに移って、みんなと同じようにお寿司を食べることができたんです。うれしかったですね。

 

仮面女子、復帰。

–復活LIVEの動画、観ました!猪狩さんは入院中に復帰されたんですよね。

ありがとうございます!入院中に復帰したのには理由があるんです。

車椅子になる前から、8月の末に京セラドームで行われる西武ライオンズ戦のイベントに仮面女子が出るのが決まっていたんですね。私は「そのイベントに絶対間に合わせたい」という思いでリハビリをしてきていましたが、そこまでに退院することが難しかったんです。

猪狩さんは西武ライオンズの大ファン。事故前後で計3回メットライフドームで始球式を務めている。また、復帰会見では西武ライオンズが主催する車椅子ソフトボール大会のスペシャルナビゲーターへの就任が発表された。

「退院してから復帰する」というのがイメージでもあり、理想でもありましたが「入院中でも、どうしてもそのイベントに参加したい」と医師に伝えました。

そうしたら外泊の許可を出していただけたので「イベントの前にまず劇場で復帰をし、そのあと京セラドームのイベントに参加しよう」と決め、入院中に復帰しました。

 

復帰のステージに立って

–復帰ライブ、かなり涙を流していましたね。

ステージの袖から真ん中まで、自分で車椅子を漕いでいってライブをしたのですが、リハーサルの時は「本当に私は今からライブに出られるのかな」と、実感があまり湧かなかったんです。

ですが、実際にライブのステージに出てからは、すごく涙が出ちゃいましたね。皆さんが黄色いサイリウムや黄色い旗、ヒマワリを持ってくださっていて。

「私、この景色みるためにリハビリを頑張っていたんだな」とすごく幸せな気持ちになりました。

車椅子生活の困難と支え

–「移動弱者。」のブログ読みました。すごくリアルな声だなと思います。心のバリアフリーや設備の面について、聞かせていただけますか?

まさに今日もここまで来るのに感じたことがあります。

エレベーターが4台あり、そのうちの1つが「車いす・ベビーカー専用」と書いてあったんです。「優先じゃなくて、専用のエレベーターなんてあるんだ」と思っていましたが、いざエレベーターが開いたら、満帆に人が乗ってたんです。

「やっぱりこんなもんか」と思いました。

私としては、専用にまでしていただかなくてもいいと思うんです。恐らく、車椅子に乗っている方やベビーカーを押している方の多くもそう思っていると思います。

ですが「専用」と書いてあったら「絶対に乗れるな」と期待してしまうじゃないですか。そのようなところは「まだちょっと配慮が足りてないのかな」というイメージがありますね。

他にも、まだ車椅子生活になったばかりで移動に慣れていなかった時、どうしてもファーストフードが食べたい気分の日があったんです。

ですが「階段で上に登らないと入れない」「結構な段差を超えないと入れない」など、そのようなお店ばかりでした。

「私はどうしてもファーストフードが食べたいのに入れない」となり「車椅子生活になると行ける場所がこんなにも限られていくんだ」と感じた瞬間、すごく悲しくなりました。

–逆に、うれしかったことや支えになったことはありましたか?

もちろんあります。

段差か小石か何かにつまずいて、車椅子から落ちちゃったことがあったんです。起き上がることができず「どうしよう」と思っていたら、反対車線を走っていた車が止まって、乗っていた方が降りて助けに来てくれたことがありました。

落ちたことはすごくショックだったのですが、「助けに来てくれたこと」がすごくうれしくて、心の救いになりました。

 

仮面女子、卒業。今後の活動は?

–先日、仮面女子を卒業することを発表されましたね。卒業はいつごろから考えていたのでしょうか。

正直な話をすると、車椅子になる前の26歳の時「そろそろアイドルを名乗るにはちょっと厳しい年齢かな」と思っていました。

私は「車椅子になったことによって逆にアイドル寿命が延びた」と思っていて、きっとケガしてなかったら、もっと早い段階でアイドルを辞めていただろうと思います。タラレバなので分からないですが、そう思っています。

車椅子生活になってから事務所に「卒業を考えています」と話したのは、去年の夏ごろです。卒業を発表したライブで皆さんに報告するまでは、メンバーにも内緒にしていました。

でもライブの時、ステージ袖に貼ってあるセットリストに「猪狩あいさつ」と書いてあたので「あれ、これメンバーにばれないかな?」と思っていたんです。

ライブが終わった後、メンバーに気づいていたか聞いてみたら「すごくいい発表か、卒業かどっちかだろうなって思ってた」と言われましたね(笑)

 

「車椅子アイドル」

–「車椅子アイドル」の肩書きが付くようになって、いい面も悪い面もあったと思います。今はどのように捉えていますか?

自分が「車椅子のアイドルだ」とは思ってないです。ただ、アイドルをやっていた時に怪我をして車椅子になっただけであって、「車椅子です」ということを前面に押している訳じゃないんですよ。

今はどうしても、車椅子に乗っているからこそいただけるお仕事がすごく多いです。ですが、いずれは車椅子が関係ないお仕事も増えていったらいいなと思っています。

例えばですけど、しゃべくりのゲストみたいな(笑)

 

今後の活動

–ほかに今後ソロ活動としてしていきたいことはありますか?

今やっているパラスポーツに関わるお仕事や、講演会などはもちろん続けていきたいです。その他にも、新しく便利グッズの開発をしてみたいですね。

私は背もたれで支えられていないと、座位を保つのが難しいんです。たまにトイレの背もたれがなくて、後ろに倒れてしまったりもします。

なので、どんなトイレにも対応できるような、背負って空気を入れたら背もたれになってくれる「簡易背もたれリュック」のようなものは、家族と話していた時に案が出ました。

それから、『猪狩ともかチャンネル』というYouTubeチャンネルも開設しています。

例えば「この街はこういう所が快適に移動しやすかった」や「沖縄に行ってシュノーケリングしてきた」など「車椅子でも行ける場所や、楽しめることが沢山ありますよ」ということを、沢山発信していきたいなと思っています。

 

猪狩ともかさんからメッセージ

–それでは最後に、メッセージをお願いします。

ファンに向けて

秋に仮面女子を卒業して、私はもうライブをするアイドルではなくなりますが、これからも皆さんを元気にすることのできる存在であり続けたいなと思っています!

なのでこれからも応援してくれたらうれしいです!

 

社会の障害とたたかう人に向けて

障害の有無にかかわらず、社会に生きづらさを感じている方ってたくさんいらっしゃると思います。

なので不便と思ったことは「これが不便だった」「これが嫌だった」と発信していくことがすごく大事だと思っていてます。もちろん、そこで賛否両論が出てくると思いますが、言わないことにはより良くなっていかないと思います。

今はせっかくSNSが発達している時代なので、どんどん発信していく方がいいと私は思っています!

 


常に明るく、笑顔が素敵な猪狩ともかさん。実はネガティブで気にしいで世間のイメージとは真逆だと言います。そんな彼女が前向きでいられるのは、自分を鼓舞するためにポジティブな言葉を発しているから。
彼女がどんな言葉を発して前を向いてきたのか…本でチェックしてください!

猪狩ともかさんからメッセージ
本を読んでくださった方が、ちょっと辛いことがあったりなにかに躓いていたりしても前向きになってもらえたらいいなと思っています!
私は実際、前を向いていたことで復帰後も楽しく活動できているので、”前を向いていたらいいことあるんだよ”っていうことを伝えたいです!

 


車オタクのひきこもり女子・ヒナタは、納屋に眠っていた一台のスポーツカーをきっかけに、車椅子から車へと乗り換え、走りはじめる──。
今はもう居ない、”あの人”の背中を目指して…。

猪狩ともかさんからメッセージ

「撮影は3月からで、寒さや花粉のため、鼻水が大洪水を起こして大変でした。今回演技はほとんど初めてでしたが、とても素敵なキャストの皆さんと共演することができて、毎回ドキドキしながら撮影に臨みました。この映画を観ていろいろなことを感じていただき、バリアフリーの気持ちを心に持ってくれたら嬉しいなと思います。今日が映画『リスタート』のスタートの日で、これから配信も始まるので沢山のかたに広めていただき観ていただきたいです。宜しくお願いいたします。」

(参照元|PRTIMES)


【編集後記】
今回インタビューしたのは仮面女子の猪狩ともかさん。イメージカラーの黄色通り、明るく笑顔がステキな方でした!
マスクを外して挨拶してくださったり、しっかりと目を見て話を聞いてくださったり、ひとつひとつの行動が丁寧で内面までとても美しいなあと感じました。わたしには想像できないような困難を経験してきているにもかかわらず、それを感じさせない自然体な猪狩さん。
彼女は今後どのような活躍をしていくのか…目が離せません!

(編集:佐藤奈摘|Twitter)


1 COMMENT

みーまる

いつも周りの人を明るくするために、車いすに乗る前以上に頑張っている、ともかさんを見ると、すごく勇気づけられます。
そして、これからも、素敵な笑顔で、皆を元気にする存在でいてくれたら、と思っています。頑張ってくださいね。応援しています。

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