ロボケアセンター|「自分の力で歩く」を支援。常識を覆す装着型サイボーグHAL®とは

CYBERDYNE(サイバーダイン)株式会社 取締役・営業本部長
安永好宏 やすながよしひろ
湘南・
大分・鈴鹿ロボケアセンター株式会社の代表取締役を務めるほか、米国公認会計士・米国公認管理会計士でもある。
2008年に情熱大陸でロボットスーツHAL®をみて、サイバーダインに経営管理部長として入社。上場準備を担当した。その後はつくばロボケアセンターでのHALFIT®事業の立ち上げ、鈴鹿・大分ロボケアセンターの立ち上げを行う。
現在は筑波大学大学院で疾患制御医学を専攻し研究を行うほか、早稲田大学の非常勤講師も務める。

交通事故や病気、加齢に伴う身体機能の低下などにより、自力で立ち上がったり、歩いたり、腕を動かすことが難しくなることがあります。

「自分の力で歩きたい」「もっと楽に歩きたい」

そんな思いを実現するのは、CYBERDYNE株式会社(以下「サイバーダイン」)が開発した世界初の装着型サイボーグ「HAL®」(Hybrid Assistive Limb®)。

今回Puenteでは、HAL®使用した脳神経・筋系の機能の向上を促す運動プログラム「Neuro HALFIT®」を提供するロボケアセンター(湘南・大分・鈴鹿)の代表、安永好宏さんにお話を伺いました!

HAL®を使用することで期待できる効果や、新サービスであるHAL®の個人レンタルについて、また今後さらに期待されるアスリート向けのプログラムの可能性について紹介します。

サイバニクスとは
サイバーダインの山海嘉之が確立した学術分野。
人間の身体機能を支援・拡張する、技術・産業・社会の創出を目指す学際的な学問分野。医療・介護ロボットの開発と普及をはじめ、工学・医学・情報科学・社会科学など、さまざまな学術領域が含まれる。

(参照元|小学館)

装着型サイボーグHAL®とは

HAL®は、身体機能を改善・補助・拡張・再生することができる、世界初の装着型サイボーグです。

身体に装着することで、身体の不自由な方の機能改善を促進したり、働く方を支えたりすることができます。

HAL®は医療機器として全国の病院やリハビリ施設だけでなく、高齢者の自立支援や、介護・建設の現場、さらには野球の前田健太選手をはじめとするアスリートのパフォーマンス向上など、幅広く活用されています。

 

機能改善・機能再生の仕組み

ーーHAL®は装着しトレーニングを重ねることで、HAL®を外した後でも思い通りに身体を動かせるようになる可能性があるのが特徴的ですよね。どのような仕組みなのでしょうか?

人が身体を動かすとき、脳から「動かしなさい」という信号が出ます。それが神経を通して動作に必要な筋肉に届くことで身体が動くのですが、その信号は非常に微弱な生体電位信号として、皮膚表面から漏れ出しているのです。

HAL®は、皮膚にセンサーを貼り付けるだけでその生体電位信号を読み取ることができます。

装着者が「どのような動作をしたい」と考えているのかを認識し、身体と同じタイミングでその動作をアシストするんですね。

HAL®が「動く」という動作を適切にアシストした時、「動いた」という感覚のフィードバックが脳へ送られます。この一連の流れを繰り返すと、脳神経系の活動ループが賦活化され、最終的にはHAL®️がなくても「動かす」ことが期待できるようになります。

 

HAL®のタイプ

HAL®には大きく分けて医療用途のものと、非医療用途のものがあります。ロボケアセンターで使用できるのは、非医療用途で使われる自立支援用のHAL®です。

HAL®は下肢タイプ、単関節タイプ、腰タイプの大きく3タイプあり、腰タイプは立座りや体幹運動をアシストする自立支援用以外にも、働く方をサポートする介護支援用、作業支援用があります。


(HAL®腰タイプ)

医療用HAL®の保険適用
医療用のHAL®は、筋ジストロフィーや脊髄性筋萎縮症などの進行性の希少疾患で保険適用になっています。
これに加えて、現在脳卒中も保険適用にするために医師の主導のもと治験を行っています。

Neuro HALFIT®️とは

Neuro HALFIT®はHAL®を使用した最先端のプログラムです。脳神経の活動を賦活化する新しいアプローチにより、従来のリハビリで効果を感じなくなってきた方でもさらなる改善を期待できます

Neuro HALFIT®を提供するロボケアセンターは、自立支援や生活の質をあげることを目的とした施設。医療機関ではないので、疾患の有無は関係なく、誰でも利用することができます。

(つくばロボケアセンター)

実際の利用者は2歳の子どもから、96歳の方まで、また障害者からアスリートまでと、適応範囲がとても広いのが特徴です。車椅子を利用されている方はもちろん、「より楽に、長く歩きたい」という目的の方も多くいらっしゃいます。

実は子どもサイズの機械はまだないのですが、「少しでもできることを」と思い工夫しながらやっています。

Neuro HALFIT®の詳しいメニュー

 

Neuro HALFIT®の効果

ーーHAL®は、脳卒中や脊椎損傷などの後遺症の方の機能改善を促すイメージがあったのですが、現在HAL®を使用されている「寺田家TV」の寺田ユースケさんは生まれつきの脳性麻痺ですよね。

HAL®の開発者である山海嘉之は「生まれつき歩けない方でもHAL®を装着し、歩行した信号をフィードバックすることによって、歩けるようにしていく」というコンセプトで開発をされています。

生まれつきでも、完全麻痺でも、生体電位信号が全く出ないという方はほとんどいません。さらに、HAL®は信号をキャッチする感度を調整することができるんです。

ですので、生体電位信号が弱い方はHAL®の感度を高くし、HAL®の力をたくさん借りて動かすところから始めます。

それを繰り返し、徐々に信号が出るようになったらHAL®の感度を下げ、HAL®が助ける力を少なくし、最終的にははHAL®の力を借りず、自分の力だけで動かせるようにすることを目指していきます。

HAL®は生体電位信号を検出し、人の思いどおりに動作する「サイバニック随意制御システム」と、生体電位信号を検出できなくても、人のような動作を実現する「サイバニック自律制御システム」の2つを混在させることで、装着者の動作をアシストしています。

(参照元|CYBERDYNE)

▼寺田ユースケさんについて


ーーHAL®を装着しトレーニングしていたことで、排泄障害(脊椎損傷の後遺症)も改善された事例があるそうですね。どうして改善されるのでしょう?

そこはまさに解明されていないところです。私が1番最初に見た方は、2歳の時に交通事故に遭い脊椎損傷し、胸から下が完全麻痺になった方でした。

2014年にサイバーダインに来てHAL®を初めて利用し、2017年にはHAL®の腰タイプを利用しています。半年くらいで排泄の感覚が戻り、コントロールできるようになっていました

その後、大分県の別府市でも、パラリンピックのアスリートの方がHAL®の腰タイプを装着し、体幹のトレーニングをしていたところ、排泄の感覚が戻ってきたと非常によろこんでいました。

 

ーー効果が出やすい方の特徴はありますか?

やはり、意欲のある方は効果が出やすいです。

Neuro HALFIT®の利用者は、平均5年くらいと、長い間障害のある方が多いんですね。リハビリも終えたが「それでも、もっと」とくる方が多いです。

「もっと」という意欲がある方は、来る頻度も多くなりますし「どうしたら回復するのか」を常に考えていらっしゃいます。そういった意味では、モチベーションはやはり大きいと思います。

後遺症などで麻痺が残った方は、自分の意志で身体を動かすのが難しくなります。それがHAL®を装着し、自分の意志で思いどおりに身体を動かせるようになるよろこびは非常に大きいです。

それに加え、Neuro HALFIT®では自分の生体電位信号や体幹の傾きの角度等の情報をリアルタイムでモニターすることができます。

「身体が動いた」と実感としてわかるだけではなく、信号を見て「自分の動かし方は合っている」とわかるというのは、Neuro HALFIT®の利用者のモチベーションに繋がっていますね。

プログラムは、身体だけではなく、心にもフォーカスしています。


(HAL®下肢タイプのプログラム)

 

ロボケアセンターの場所とNeuro HALFIT®の料金

Neuro HALFIT®はサイバーダインが運営するロボケアセンターで提供されています。ロボケアセンターは現在全国14か所で運営。(2020年6月現在)

Neuro HALFIT®の料金は場所によって異なりますが、1回90分のプログラムで1万5千円から2万円ほどです。

Neuro HALFIT®利用条件

1.HAL®適用サイズの方
2.著しい関節障害(変形、炎症、脱臼)のない方
3.動作の手順や注意点などの説明をご理解いただける方
4.生体電位の検出に問題がない方

 

※ 著しい高血圧や骨の脆弱性、心不全などの症状がある方はあらかじめ医師にご相談ください。
※ 妊娠中の方、およびペースメーカーなどの能動埋め込み医療機器をご使用のお客様はHAL®の装着をご遠慮いただいております。

▼そのほか不明点はHPをご確認の上お問い合わせください

自宅で「Neuro HALFIT®」HAL®の個人レンタル

ーー自宅でNeuro HALFIT®ができる、HAL®の個人レンタルがはじまりましたね。

これまで、Neuro HALFIT®は、ロボケアセンターで1人1人に合わせたメニューを提供していましたが、利用者からは「自宅でもHAL®を使えるようにしてほしい」という要望を多くいただいておりました。

新サービスの個人レンタルはNeuro HALFIT®に3ヶ月集中して取り組むプログラムです。利用者に寄り添い、自宅でも楽しく、安全に取り組めるプログラムとなっています。

▼自宅で「Neuro HALFIT」個人向け新サービスを開始


ーー今までロボケアセンターに通うのが難しかった方もHAL®を使用できるきっかけになるんですね。

例えば沖縄在住の方など「今までロボケアセンターに行きたかったけど行けなかった」という方によろこんでいただいています。

それから重度の障害のある方は1日1回のトレーニングでは、すぐにはよくならないことが多いんです。そのため朝・昼・夜とHAL®を装着する方もいらっしゃいますが、毎回ロボケアセンターに通うのは大変ですよね。

そのためHAL®をレンタルし、自宅で立ち上がりまでの集中したプログラムをできるのは、非常に効果が高いと思います。手が不自由でない方であれば、HAL®を1人で装着することができるので、自分のしたいときにトレーニングできます。


ーーロボケアセンターでのNeuro HALFIT®ですと専門スタッフの方がマンツーマンでサポートしてくださいますが、
レンタルの場合はどのようにサポートされているのでしょうか?

まずお近くのロボケアセンターで、HAL®の使用方法の講習を行います。また専門スタッフがメニューの作成・計画・フォーム指導をサポートし、月1回ロボケアセンターでのマンツーマンプログラムやWEB相談を通じてチェックを行っています。

▼HAL®の装着方法や自宅でのトレーニングの様子


ーー自宅でもモチベーションを維持する工夫をされているんですね。

今私の方で考えているのは、同じくらいの障害の方とZOOMなどを繋ぎ、共同でトレーニングをする新しいプログラムです。

先ほども伝えましたように、HAL®のトレーニングで効果を出すには、モチベーションが重要になります。ですが自宅で1人でトレーニングをしているとマンネリ化しモチベーションが落ちやすいですよね。

ダイエットやスポーツなど大抵のことと同じで、HAL®のプログラムも、ある程度よくなったらその伸びがフラットになる時期があるんですよね。そのモチベーションが落ちやすい時に、同じような障害で一緒にトレーニングをしている仲間がいて情報交換できるのは大きいのではないかと思い、このプログラムを考えています。

自宅だけでなくても、例えば札幌のロボケアセンターと大分のロボケアセンターなど、違うロボケアセンター同士でトレーニングの時間を共有することもできるのではないかと思っています。

 

HAL®の展開と今後

ーーHAL®は日本だけではなく海外でも導入されていますよね。営業をされていて、その反応はどのように感じますか?

生体電位信号を検出し、身体が動くタイミングと同時にアシストできる仕組みは世界でHAL®だけですので、海外からも注目されています。

例えばマレーシアでは、マレーシア最大のリハビリテーション病院にHAL®を導入しています。また、医療機器の製造販売が承認され、マレーシア国内の一般医療機関においてもHAL®が利用できるようになりました。

タイでは首相から呼ばれ、2019年のはじめに首相官邸でHAL®の紹介をしてきました。現在はタイ国食品医療品承認局 (タイFDA)より、医療機器の製造販売承認を取得しています。

最初はヨーロッパだけで使用できる医療機器だったのが、現在ではアメリカ、マレーシア、タイ、インドネシアでも医療機器となりました。

私が世界で営業をしてきて感じた個人の感想ですが、日本ではHAL®を装着することを「恥ずかしい」と思う方が多い一方で、海外では「ロボットだ!」と興奮した反応をする方が多いです。また、特に東南アジアは日本のテクノロジーにとても信頼を置いていますね。

 

ーー最後に、今後チャレンジしたい領域はありますか?

今まさにチャレンジしているのがアスリート向けのプログラムです。

2020年からCYBERDYNE株式会社と「一般社団法人IWA JAPAN」が提携し、アスリート向けのプログラム「IWA式 Neuro HALプラス」を開始。このプログラムでは、脳神経・筋系のパフォーマンスの向上、筋肉の収縮と弛緩の最適なタイミングやバランスの調整などにおいて優れた効果が期待できます。すでに野球の前田健太選手をはじめ、テニス、ゴルフ、スノーボード等、各競技のトップアスリート達トレーニングをしているそうです。

私はずっと自転車競技をしていましたが、自転車も筋肉を肥大するというよりは「いかに必要な筋肉だけを動かしていくか」が重要なんですね。「それが適切にできるのがHAL®だな」ということはずっと思っていました。

本当に新しい分野開拓です。

今まではHAL®というと「医療機器」「作業支援」というイメージがあったと思います。それがアスリートであっても「より速く走れる」「より高く飛べる」など、そういう可能性がでてくるのは非常にドキドキしますね。

CYBERDYNE × IWA ACADEMY脳神経系を強化・調整する革新的なアスリート向けプログラム『 IWA式Neuro HALプラス 』

 

ーースポーツの次元が変わりそうですよね。それも「ロボットになる」のではなく、あくまで自分の力というのがまた夢があります。

アスリートの方って極限までトレーニングをされていて、伸びしろがないんですよね。それでもほんの少しの変化を求め、HAL®を外した後は「おお!」と変化を実感してくださります。

変化は本当に微々たるものですが、アスリートの方はその微々たる変化が勝負を分ける世界で競争されています。「神経系・筋肉のつながりにアプローチすることでどんな強みを引き出していけるか」ということには興味がありますね。

(編集者:佐藤奈摘|Twitter)

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