「線維筋痛症」の症状と向き合いながら生きていく。WiTH PAiN代表 みおしんが目指す「ボーダーレス」な世界

WiTH PAiN代表
みおしん   みおしんTwitter
1984年東京都渋谷区生まれ。北里大学医学部卒業。
幼少期から活発だったものの、異常に疲れやすい学生時代を過ごす。大学卒業後、2010年に休職を経験。2018年1月に受診し、線維筋痛症と診断される。2019年4月に専門医を取得し、「働きづらさ」や「生きづらさ」などの社会問題を解決するべくWiTH PAiNを創業。

『当事者やそうでないと人たちとの心のボーダーラインを消し、いたみによる偏見や生きづらさが存在しない思いやりのある世界を目指します。』

20年以上、「線維筋痛症」と付き合いながら、痛みに苦しむすべての方々に寄り添えるよう活躍される、みおしんさん。

WiTH PAiN代表としての事業展開はもちろん、麻酔科医、モデル、写真家、YouTuberとしても活動されています。

1人で病気や障害を抱え込む必要はありません。

これからはぜひ、一緒に病気や障害と向き合い、この先の未来を歩んでみませんか。

線維筋痛症とは


(2020.5月 患者交流会&医療講演会)

主な症状・患者人口

–はじめに線維筋痛症の症状について教えてください。

症状の理解については、アメリカリウマチ学会(ACR:American College of Rheumatology)1990年の診断基準が信頼できるとされています。

そちらでは、他疾患を除外したうえで、身体の広範囲に3か月以上の慢性疼痛があり、ツボ11/18か所以上圧痛点がある、これらの要素を満たす人を「線維筋痛症」と診断しているそうです。

線維筋痛症は、一言で言うと「脳の機能障害」になります。「いたみの性状や強さ」「疲れやすい」「記憶力障害」など症状の出方はバラバラです。

線維筋痛症とは
線維筋痛症の主な症状は「強い痛み」です。線維筋痛症は、痛みの部位が全身であったり、身体の一部であったり、痛みの部位が流動的です。痛み以外の症状では、「疲労感・倦怠感」、「こわばり感」、「睡眠障害」、「うつ状態」などをはじめ、さまざまな症状が報告されています。

(出典元|痛みの情報サイト – 疼痛.jp)

厚生労働省の線維筋痛症研究班の調べでは、推定患者数は200万人(人口の1.7%)いることが分かっています。ただ、「いたみを客観的に数値化して評価する」検査方法(Pain Vision)が普及していない為、「うつ病」などの精神疾患患者さんとして別の治療を受けてしまい、症状が悪化するケースがほとんどです。

レントゲンやCT・MRIといった一般的な精密検査では見つけられないこともあるので、どこに患者さんが流れているのかに関しても、これからリサーチしていかなければなりません。

患者さんが病院に行っても適切に診断されず、誰にも分かってもらえない「つらさ」から、本当にうつ病になってしまうケースもあるのがこの病気の怖いところです。


(Pain Visionの結果内容)

原因

–現在、線維筋痛症の原因は判明しているのですか?

誤解されることもあるのですが、1個の原因があり発症するものではありません。

内的要因と外的要因どちらも混在していて複雑ですが、この病気は突然発症する、というより、10年~20年長年患者さんが無理してがんばっていたことでどんどん悪化して、病院に来る頃には既にひどい重症になっているケースがほとんどです。

内的要因である性格の傾向としては真面目、周りに気を配れすぎてしまう、過剰適応気味の方や凝り性、完璧主義の方が多いと思います。

健康意識は皆さん高いです。

外的要因としては、事故や手術などの物理的な侵襲、家庭環境が複雑だったり、などが原因のこともあります。

線維筋痛症のチェック・診断方法

治療法

–治療方法としては、どのようなものがあるのでしょうか。

線維筋痛症に対して現在推奨されているお薬は脳にダイレクトに効くタイプが多く、「眠い」「吐き気」「頭がうまく働かない」などの副作用で悩まされているケースがあります。

また、「鎮痛補助薬」として向精神薬や抗うつ剤を使用させてもらう事がありますが、だからといって「うつ病」ではないんだよ、という話を医師側が患者さんにきちんと説明しないまま処方している場合もあります。

たしかに効く人もいますし、お薬を否定する気はないですが、色んな選択肢を提示してから始めてほしいと患者の立場からは思います。

200万人の患者さんがいるわけですから、症状のタイプも色々。治療法は当然バラバラです。その人に合う治療法を根気よく探す必要があります。

不安が強い方には不安を和らげるお薬を、冷え性が強い人は血流をよくするお薬、代謝が悪い人には代謝を助けるお薬を、と、症状をきちんと分けて考えることが大切です。

こうした治療法は「網羅的治療」「オーダーメイド治療」と呼ばれ、患者さん1人1人に合わせて進めていくかたちになります。

治療における課題

–線維筋痛症の当事者にとっての課題などはあるのですか?

一番は、「線維筋痛症患者推定200万人に対して、安心して通える病院がものすごく少ない」ことです。厚生労働省や各都道府県の大学病院などと連携して体制を整えるのに、まだ10年はかかりそうです。

というのは、「線維筋痛症」と言う病名は、2009年に医師国家試験の出題範囲になり、少なくとも35歳以下の医師で知らない医師はいなくなったわけですが、今度は、この病名をみただけで診療拒否される事例が増えました。

仮説として、医師側に「専門分野じゃないからみたくない?」「客観的な指標がないため断定もしずらく、メンタルのせいにしたくなる?」という単純思考があるかもしれません。

線維筋痛症のガイドラインはあっても、実際目の前に来た時どうしてあげたらいいかわからないことも考えられます。医師の教育を含めた医療のシステムを変えていくのは、残念ながらとても時間がかかりそうです。

「いたみ」とのつきあいかた|麻酔科専門医、みおしん


(「ヘルプマーク定着」の願掛けをする高崎達磨)

自己紹介

–線維筋痛症に関する説明ありがとうございました!次に、みおしんさんについて教えていただけますか?

麻酔科専門医のYouTuber 「みおしん」です!

私自身も体調不良の原因が判らず「線維筋痛症」の診断に20年かかり苦労した経験から、「いたみ」による生きづらさや働きづらさという社会問題を解決するために、2019年10月にWiTH PAiNという事業をはじめました。

線維筋痛症当事者として、医師として、YouTubeをベースに発信活動、モデルや音楽活動も行っています。これらの活動を通して、観てくれいる方々が「自分にもなにかできるかも」と、背中をそっと押していけたらうれしいです。

たとえ病気になっても、働けること、幸せになれることを『みおしん』自身で証明していきます!

線維筋痛症と分かるまで

–線維筋痛症と判明するまでには、どのような経緯があったのでしょうか。

もともと私は幼少期から活発で運動が好きだったのですが、朝がつらくて「しんどい」ことが、ずっとありました。

そして、2010年には寝たきりを半年ほど経験し、2012年には医者に復帰できたのですが、そこのお話をしようと思います。

2012年に研修医として社会復帰したときも、通勤で歩いたり、立ちっぱなしで仕事をすることは、本当につらく、ものすごく疲れていたんです。

自分が許せなくて、「私は医者なのに、全然仕事をしていないんじゃないか」と考えてしまうこともありました。

でも、患者さんからすれば研修医だとしても医者は医者ですよね。ですから、なるべく不安を与えずに目の前の患者さんを意識して仕事をしようとか、体調が悪くてもそれを隠しつつ、休めるときに机に戻って休めるよう、上手く調整しながら働くことを第一目標に活動していました。

2012年には、週3日、週4、週5、と勤務時間を徐々に増やしましたが、休日は寝込むという現象は変わりませんでした。社会復帰して2年。このまま10年後、20年後も仕事と寝込むだけの日々だったら、結構さびしい人生だな…と俯瞰して考え、一旦体調を完治させるのはあきらめ、まずはひとりの人間として自分の人生を豊かにしてみるかと方向転換。

2014年からは「週4日勤務当直なし」という設定を鉄の意志で守り、「自分がすきなことを今のうちにしておこう」と、休みを趣味に全力であてました。

土日は、一度仕事について考えるのはやめて、自分が好きな音楽ライブに行ったり、上手くなりたかった写真を撮りに出かけたり。趣味を通じてつながった友人たちと過ごす中で、「医師」の自分も、「具合が悪い」自分も、自分を構成する一部でしかないことに気づき、自己肯定感や自尊心が回復しました。

それでも体調は良くならず困っていたタイミングでレディー・ガガさんが線維筋痛症だと告白してくれたんです。2017年でした。

「線維筋痛症」は激痛の病気で、「私は重くてつらいだけ、激痛ではない…」と、10年前にすでに除外していました。しかし、麻酔科医として「いたみ」というものの多様性を振り返ってみて、「自分も、もしかしたら」と発想の転換ができました。

2018年1月、今の主治医のクリニックを受診し、すぐ線維筋痛症だと診断をうけた時は、うれしさと驚きと、恥ずかしさがありました。「医者なのに気づけなかった」って。

日常生活

–線維筋痛症の方の過ごし方はどのようなものなのでしょうか。

私のタイプは基本的に血流が悪くなって、リンパがむくんでくると、全身重たくなり、血流が良くなって、疲労物質が尿として流れることで、身体がひゅっと軽くなります。

ですから、一番血流が悪くなっている朝起きたてが、めっちゃしんどいんです。

押し付けられたような倦怠感で、身体を持ち上げられない。動かせるとこからゆっくり動かして、足を持ちあげて、血流を促してあげて…、あとは足をばーんと、反動を利用して起き上がるとか、割と荒業。

筋力の衰えとか、神経の障害ではないので。お風呂に行って血流を促すと、頭もらくになって、その日活動できるようになる感じですね。

仕事・働き方

–線維筋痛症の方が仕事か、働き方と向き合う上で大切なこと
それはすごく大事なことで、この病気になってフルタイムで働けている人って、多くないと思うんです。

今、時代は変わりつつも、まだまだフルタイムで働くことが良い!みたいな風潮はあるじゃないですか。ただ、線維筋痛症の患者さんにそれを当てはめると本当に拷問なので、週2日でも3日でも良いから、患者さんの体力に合わせた働き方ができる世の中になったらと思いますね。

要は、朝起き上がって、身体を動かして、着替えて出勤すること自体が大変なので、会社側もその事情について知って欲しいし、患者さん自身が全てを説明することは難しいので、患者さんが通っている病院と連携が重要です。

診断書には法的拘束力があるので、診断書に「週3日から仕事を再開していいですよ」「○○時間まで勤務ok」「残業は不可」など…それをもとに再就職や復職すると、社会復帰しやすくなるかと思います。

0か100かではできないので、その時の症状に合わせて段階的に働けるようにすることが本当に大切です。ちょうどコロナ禍の影響で、会社のテレワーク化も進んできているので、ある意味私たちのような通勤がハードル勢には多くのチャンスがあると思います!

移動方法の提案「近距離モビリティWHILL」


(2019.11月FMヨコハマ「ちょうどいいラジオ」)

–みおしんさんは、移動手段としてWHILLを活用されていますよね。

WHILLの存在を知ったのは4年前。WITH ALSの武藤将胤さんが乗っていて、自分も必要なときは使おうとは思っていました。

2019年は非常に消耗しやすく、週3日も寝込む日々が続きました。「立つ歩くを最小限にできないかな、あっ!WHILL!ついに出番か!」だみたいな。思いついて2週間後にはレンタルしました。常にのる、と言うより、状況に応じて使用しています。

基本、自分の車で移動して、その日の活動負荷や体調に応じてWHILLを使用するか決めています。こういう使い方がもっと流行ればいいと思うし、好きなことにエネルギーを使うための移動手段と前向きに乗れるのがWHILLの最大の魅力です。

立ち上がって、右足、左足、動かして歩く、立ち続ける、という「移動」「姿勢維持」に非常にパワーを消費するので、移動先で頭が回らない、着いてからも休み休みでないと活動できない、というもどかしさから一気に開放されました。

また、WHILLがあることで、「あ、座っとかないと」という意識づけができたり、周りからも声掛けが増えて、無理しすぎなくなりました。(無理できる自由度が上がった、の方が正確かもw)

病気とともに生きていく|WiTH PAiNとは

事業内容・ビジョン

–WiTH PAINのビジョンについて教えてください。
「いたみもわくわくも一緒に」という、これキャッチコピーですかね(笑)

まあ、言いたいことはそういうことで、病気とか長年つらいことを抱えている人たちってそのことにとらわれやすいし、楽しむことを忘れがちになってしまうんです。自分自身がそうだったんですが、人生を楽しむこと自体に罪悪感を持ってしまうこともあるんですね。

イヤなこととか、つらいことが無くならないと人生を楽しんじゃいけないみたいな使命感というか、そういったマインドになりやすい。「いたみをシェアして堂々と生きていこう!」と、まずは自分が伝えていくことで、ひとりで悩んできた患者さんのヒントになれたらと思います。

–今のご活動内容について
現時点ではYoutubeをベースに情報を発信することが、一番良いと思っています。講演活動を考えていましたが、どうしても全国を回るとなると自分の体力的にも難しい。

YouTubeなら、いたみとの付き合い方について、全国の患者さんがお金をかけずに情報を受け取ることができるなと気づいたんです。

あとは、まじめ話ばかりではおもしろくないので、いろいろな活動を通して病気や健康、エンタメを届けられたらと考えています。

–Youtubeは僕も拝聴していたのですが、クオリティが非常に高いですよね!

気づきましたかーー!!みおしん対談については、映像業界の友人たちを巻き込んで、全部出世払いということで…始めさせていただきました。本当にありがたいことですね。

特に最初のメッセージ動画については、本当に素晴らしいものを制作いただいて、すごい人たちを巻き込んでしまった!と、吐きそ…嬉しかったですねw

常にプレッシャーを感じつつ、楽しくやらせてもらっています。

起業のきっかけ

「みおしん、起業したってよ。」生誕35周年+麻酔科専門医祝勝会もろもろ感謝祭スペシャル
(「みおしん、起業したってよ。」祝勝会&感謝祭)

–次に起業のきっかけなんですけど、ハードルとかは。

ハードルしかなかったです!

病院を休職した時点では、起業に向けて準備していたわけでもなかったし、医者しかやってこなかったので、社会のことについて知らないまま、大きいビジョンをみんなが聞いてくれるかもわからないし。

ただ、これをやらないで肩身を狭くしながら生きていく人生とチャレンジする人生を比べたらやっぱりこっちじゃんと。

社会に向けてのメッセージ

–みおしんさんがWiTH PAiNを通して実現したい未来とはどのようなものですか。

世の中には沢山のマイノリティが存在するので、マイノリティ同士の交流や認知が進めば、それぞれリスペクトしあえる世界を作れると考えています。

We gotta borderless! “楽しい”や“好き”というポジティブな感情を通して、当事者やそうでないと人たちとの心のボーダーラインを消し、偏見や生きづらさが存在しない思いやりのある世界を目指します。

また、いろんな企業や団体さんとコラボして〝生きやすい〟〝働きやすい〟社会を実現するための啓蒙だけではなく、毎日をわくわく過ごせるようなサービスや製品、仕組みなどのプロデュースしていきたいと考えて、現在デジタルハリウッド大学院で学んでいる最中です。

からだや心にいたみを抱えるすべての人に、本当に必要なやさしい製品とサービスを。

お楽しみに!!

【編集後記】

終始笑顔で取材に応じてくれた、みおしんさん。お話の興味深さはもちろん、「明るさ」と「元気」を頂いた1時間でした(笑) 最後にご紹介したかながわ憲章PR動画では、「自分と違うからこそ、相手をリスペクトでき、自分もまたリスペクトしてもらえる」という想いが込められています。病気や障害、生きづらさは人それぞれです。しかし、だからこそ手を取り合えるのではないかと、みおしんさんの取材を通して感じました。

(編集:伊藤弘紀|Twitter)

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