一般社団法人Nurse-Men 代表
秋吉 崇博 あきよしたかひろ(Twitter)
1986年大分県別府市生まれ。高校卒業後、看護学校で准看護師、看護師の資格をとり、卒業後は救急の現場で看護師として従事する。その後、東京、北海道、沖縄と様々な地で応援ナースとして働く。北海道での出来事をきっかけに、体質改善サロン 『きみ』らしくあれ。を経営。一般社団法人Nurse-Menの代表理事も務める。
目次
さすらいの看護師 あきよしたかひろ
看護師になった経緯
ー本日はよろしくお願いいたします。
はい、よろしくお願いいたします。
ー早速ですが、”さすらい”の看護師ということですが、さすらいとはどのような意味なのでしょうか?
そうですね。
もともと僕が大分県出身で、そこで看護師を取りました。そこから、東京、沖縄、北海道などたくさんの場所にいき、看護師として働いたり、サロンを経営したりしています。
いろいろな場所で働くことををさすらいと言っていたりとか、いろんなことを模索しながらやっているという意味でさすらいと付けました。
ー現在、サロン経営や看護師としてご活躍されている秋吉さんですが、看護師になった経緯を教えてください!
僕は、大分県の別府というど田舎で生まれ育ちました。実は、自分が田舎で育ったということもあり、ずっと健康で、病気とかとは程遠かったんです。
だから、「自分が病気になった時に看護師さんにお世話になった」とか、そういうエピソードもないんです。笑
ーそうなのですね。看護師を志そうと思ったきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
看護師を目指そうと思ったのは、高校を卒業する本当にギリギリの時でした。
ど田舎でぬくぬくと育ってきた僕でしたが、高校生の時に一丁前に反抗期を迎えました。
そしていざ、高校卒業後の進路を考えた時に、このまま大学に進学したら学費などの大学のお金は親に出してもらうことになることに気づきました。僕は自分でお金も稼いでいない、それなのに偉そうなことばかり言って親のお金で大学に進学する。
それに気づいた時に、このままでは自分はめちゃめちゃダサい男になると思いました。それは絶対に嫌だったんですね。
ーなるほど。そこで、自分で稼いで生活したいと思うようになったのですか?
そうですね。その時始めて自分でちゃんと稼ぎながら通える、もしくは取得できる資格って何があるだろうと考えました。
高校の先生にも相談をして、そこで准看護師という資格を知りました。准看護師の資格は、病院に所属して病院で働きながら学校に通い資格を取得します。それなら、自分でお金を稼ぎながら、親のお金に頼ることなく学校に通える。
また、当時は男性看護師はすごく少なかったんですね。僕は、少数派な方に魅力を感じるところがあり、今後、自分がそこを盛り上げたいと考えていましたね。
これらの理由から看護学校に進学して、看護師になりました。
ー看護師になってからは、救急医療の現場で働かれていたのですね。
そうです。看護学校卒業後は大分の病院で働きました。僕は、目の前の人の命を救いたいという思いから救急医療に携わりました。
例えば、僕の目の前で誰かが倒れたとしても、その時に僕に知識があって、1分1秒でも早く行動に移せたら、命の助かる確率がグッと上がります。後遺症が残らなかったりもします。目の前の命を、自分が知識やスキルを持つことで救うことができる。そのことから、救急医療を選びました。
さすらいの看護師になった理由
ー大分の病院をやめ、東京に出てきたきっかけを教えていただいてもいいですか?
看護師の出世ルート、キャリアプランに疑問を抱いたというところが大きかったです。
今までだと、看護師が歩んでいくキャリアとしては、管理職や主任、看護師長など管理側に回っていくのが主な出世ルートでした。看護師って、管理職になればなるほど、現場に出なくなるんですね。入退院の調整やシフトなど、事務的な仕事になっていく。
あるとき、救急医療で背中を追いかけてきた先輩が管理職になりました。ずっとかっこいい姿を見てきたのに、管理職になって、急に現場に出てこなくなりました。管理職になった先輩を見ても、疲弊して全然楽しくなさそう。
その姿を見た時に、これは僕が進むべき道ではないと思い、東京に出てきました。田舎者の僕に、何か大きな変化をもたらしてくれると考えたんですね。それがさすらいの看護師の始まりです。
ー関東に出てきて、どのような活動をされていたのでしょうか?
看護師には、正社員として働く働き方と、応援ナースと呼ばれる働き方があります。
応援ナースとは、3ヶ月や半年の間、忙しかったり、人の足りていない病院に行き、その病院で看護師として働く働き方です。東京では、応援ナースとして働きました。
東京に出てきた時に、自分試し、自分磨き、自分探しの3つのテーマを持っていました。
今まで大分で働いていた自分がどこまで東京で通用するのか、自分を試したり、そこで悔しい思いをして自分を磨いたり、自分を探すという意味です。
武者修行のような感じでさすらいの旅を始めました。看護師としてスキルアップもできたし、自信もつきましたね。
看護師×体質改善サロン×キックボクシング
体質改善サロン 『きみ』らしくあれ。
ー看護師として、東京や沖縄、北海道で働かれた後に、体質改善サロンの『きみ』らしくあれ。を経営されていますよね。
サロンを始めようと思ったきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
北海道で看護師として働いていた時、そこで仲良くなった方に整体のお店を一緒にやらないかと声をかけられました。そこで一緒にやったのですが、営業や経営がほとんどで看護師を活かせませんでした。
自分が施術をするプレイヤーになりたいと考えていた時に、以前一緒に働いていたリハビリ関係の友人が体質改善サロンを経営していることを知りました。体質改善と看護師も相性がいいので、これだったら僕でもできるなと。
そこで、また東京に出てきて、体質改善サロン『きみ』らしくあれ。を始めました。
具体的な取り組み
ー体質改善サロン『きみ』らしくあれ。では、どのような取り組みをされているのですか?
実は、僕はずっと格闘技が好きで、ボクシングのプロのライセンスも取得をしています。
体質改善サロンを始める時に、何か自分の好きなものは混ぜられないかなと考えた時に、体質改善サロンとキックボクシングがすごく相性が良かったんです。
今は、キックボクシングと体質改善をミックスさせて、心の疲れやPMSを専門としたサロンを経営しています。
(体質改善サロン『きみ』らしくあれ|twitter , instagram)
一般社団法人Nurse-Men
一般社団法人Nurse-Menとは
ーサロン経営とは別に、一般社団法人Nurse-Menの代表もされていますよね。一般社団法人Nurse-Menとは、どのような法人なのでしょうか?
一般社団法人Nurse-Menは、最初は男性看護師集団Nurse-Menというコミュニティでした。男性看護師集団Nurse-Menは、元々500人くらいいた看護師コミュニティから派生してできたものだったんです。
今は、男性看護師の認知度を上げるための活動として、子どもや家族連れが参加するイベントでの医療サポーターや、小学校から大学、看護学校での講演活動に力を入れています。
その活動と並行して、新しくオープンするクリニックのコンサルティング、訪問PCRなどの活動をし、看護師の社会的地位を上げることや職場環境の改善を目標にして動いています。
ーなるほど。看護師の社会的地位を上げるための活動や職場環境の改善。
そうです。僕らのコンセプトは「男性看護師をより身近な存在にする」ということです。
そのために、看護師になりたいという男の子たちを増やすこと、すでに看護師を目指している看護学生のサポートをすること、また、看護師としての道を歩み始めた新人看護師やスキル・キャリアアップなど新たな刺激や成長を求めている看護師へのアプローチを行っています。
その結果として、男の子のなりたい職業ランキングの1位に男性看護師がなる、全国の男性看護師が1割以上になるというビジョンがあります。
「男性看護師の魅力を引き出したり、今までにない様々な輝き方ができるようになること」は、先のビジョンを見据えると、看護業界全体の質の向上や、看護師がより働きやすい環境になっていくことにも繋がるのではないかと考えています。
また、ナースメンの新しい取り組みにより活動範囲を拡大することで、看護師の社会的地位の向上にも貢献できるのではないかと考え、活動をしています。
男性看護師をなりたい職業ランキング1位にする
ー先ほどお話で出ましたが、「男性看護師をより身近な存在にする」ために、男の子のなりたい職業ランキングの1位に男性看護師を持ってくることを目標としているのですね。
はい、そうです。
女の子のなりたい職業ランキングなどをみてみると、大体いつも上位に看護師という仕事がありますよね。ですが、男の子の方をみても、看護師は全然入っていない。同じ職業なのに、トップ10にも入っていないんです。
その理由として、認知度が低い、男性看護師の魅力が伝わりづらいというところがあります。
男性看護師は、増えてはきましたが、まだまだ認知度が低いです。じゃあ、認知度が上がったら職業ランキングの上位になって、男性看護師が身近な存在になるかというと、そういうこともない。
男性看護師の認知度を上げるとともに、男性看護師の魅力を伝えていく必要があると思います。
認知度が上がり、魅力が伝わった先に、男の子のなりたい職業ランキング1位というものがあると考えているので、そこを目標にしています。
ー認知度を上げたり、魅力を伝えるためには、どのような活動をしているのでしょうか?
今はコロナであまりできていないのですが、看護学校や中学校に看護師の魅力を伝えたりしています。今後は、中学校だけでなく、高校や大学、企業にも男性看護師の魅力を伝えていきたいなと思っています。
僕らの活動をまずは知ってもらうところからだと思うんですよね。
男性看護師は、あまり認知はされていませんが、コロナの最前線で、自分が感染するリスクがある中で飛び込んで、命を救う。災害時には、DMATというチームが災害が起きた場所にいち早く行き、目の前に倒れている人を助けます。
男性看護師には、「青い戦士」や「青い英雄」などのイメージがつけばいいなと思っています。
ー男性看護師の魅力や現状を、学校や企業に出向いて伝えていくのですね。
はい。あと大切にしているところは、多様性とエンタメ性という面です。
今の子どもたちには、Youtuberだったり、プロサッカー選手などの多様性やエンタメ性のある職業が人気があると思うんですね。だから僕らは、これまでの医療機関での看護に加えて、医療機関外での看護へ活動範囲を広げいく必要があります。
実際にNurse-Menには、医療機関内でスキルやキャリアを追求して活躍するメンズナースや、医療機関外で活躍する(プロダンサー、ダーツプロ、実業家、お笑い芸人、アーティスト、カメラマンなど)メンズナースが多数います。それを伝えていくことで、子どもたちも「看護師ってめちゃくちゃいろんなことができるじゃん!」「かっこいい」といったインパクトやイメージをつけることができます。
看護師+aという面でも、これまでの看護師の活動範囲を拡大する活動を行っています。
一般社団法人Nurse-Menを通して実現したい社会
看護師を『稼げる』仕事に
ー看護師の社会的地位を上げることを目標にしているとのことでしたが、まず社会的地位をあげるとは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?
はい、看護師を『稼げる』仕事にしたいですね。
ー看護師は高収入な印象がありました!
そうですよね。皆さん、看護師は安定した収入というイメージがあるかと思うのですが、実は夜勤をしなければ、子どもたちに胸を張って、「僕たち看護師は稼いでるよ」とは言えないんです。
この現実を変えたいと考えています。
そこで、僕たちが取り組んでいる活動を通して、看護師の社会的地位を引っ張り上げたい。
ーそうなのですね、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
僕らのやっている取り組みの一つが、訪問PCRです。これは、ある企業さんから「Nurse-Menにやって欲しい」と依頼がきました。福祉施設などに行って、入居者やスタッフ全員にPCR検査を行うんですね。
今もそれはずっとやっていて、訪問PCRの給与は従来の看護師の時給を倍以上引き上げています。
また、新しくオープンするクリニックのコンサルタントなども行い、無事、そのクリニックもオープンをさせることができました。
看護師の労働環境の改善
また、男性看護師が増えることで、看護師の労働環境の改善に繋がるのではと考えています。
例えば、各勤務に男性看護師が1人いるだけで、その勤務帯の空気が明るくなるという話をよく耳にします。
コミュニティを通して、出会った女性看護師の方々からも「男性看護師が増えたら絶対に雰囲気が良くなるし、やめる人が減るよね」という意見をいただくことが多くあります。
また、医療は暴力と隣り合わせです。救急車で運ばれてきた人が暴れていたり、認知症の方に殴られたり。女性の看護師さんだと男性の患者さんからセクハラを受けてしまうこともあります。もちろんその逆もありますし、男性が暴力を受ければいいという問題ではありませんが、男性看護師がいることで抑制効果に繋がった場面も多々経験しています。
そういったところから、女性看護師の負担が減っていくのではと考えています。
ー男性看護師がチーム内にいるだけで、職場の雰囲気がよくなることがあるのですね。
そうですね。そのことも含め、男性看護師を増やしていきたいと思っています。
男性看護師になる人って、すごく優しい真面目な方が多く、女性社会に適応できずに、やめていってしまう人が多い印象です。
だから、フォローアップしてくれる男性看護師の先輩がひとりでも多く増えることが、必要だと感じています。
その結果、男性看護師が増えることで、女性看護師の離職率減少にも繋がるのではないかと考えています。
最終的には、男性看護師が女性看護師をリスペクトし、共存していける社会にしていきたいですね。
一般社団法人Nurse-Menが目指す社会
ーそれでは最後に、看護業界を今後どのように変えていきたいか、今後の展望を教えていただけますか?
はい、やっぱり「男性看護師は身近な存在だ」というふうに感じてもらえるようになりたいですね。
「男性が女性の仕事をしている」というイメージから、「男性看護師はヒーローだ」というイメージに変えていきたい。その上で、男性看護師と女性看護師の割合が半分ずつになるようにしていきたいです。これは、女性社会というイメージをひっくり返したいということではありません。男性看護師が増えることによって、女性看護師の負担を減らしたり、離職率を低くしていきたいと考えています。
今後は、看護師という仕事を離職率の低く、男女均等で高収入な仕事にしていきたいです。
【編集後記】
インタビューを通して、看護業界の課題やそれを解決しようとする秋吉さんの強い想いが伝わってきました。
私が特に印象的だったのが、男性看護師が増えることで、女性看護師の負担が減り離職率が低くなるというところでした。男性看護師がいることで、職場の雰囲気がよくなったり、セクハラが抑えられたりと、男性看護師が入ることで改善される点が多々あることを知りました。
目の前にある命を救い、命の最初から最後まで寄り添う看護師。看護師に憧れ、看護師を志す人が増えること、また労働環境や給与が改善されることを私も願っています!
(執筆/編集:笹本美結|Twitter)