てんかんがある人の仕事の見つけ方・働き方|てんかんYouTuber リンカーン中村が語る「伝えることの大切さ」

てんかんYouTuber
中村真二(リンカーン中村)   なかむらしんじTwitter
1989年静岡県浜松市出身。
16歳のとき、てんかんと診断される。人生に絶望するも、友人の「てんかんは個性」という言葉から講演活動をスタート。現在は、講演やブログ運営、SNSでの発信、YouTuberとしての活動をとおして、てんかんに関する情報発信を行っている。東京オリンピック聖火ランナー。

「てんかんで悩む人の力になりたい」と活動されている人がいます。

笑顔を届けるてんかん講師、リンカーン中村さん。

全国各地で講演をしながら、ブログやSNS、YouTubeなど様々な媒体で、てんかんについて発信するてんかん当事者です。

皆さんのなかには、「てんかん」という言葉は知りつつも、その症状について詳しく知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

『てんかんになってから思ったこと、考えたことを伝えることで、元気や勇気と届けたい。』

今回は、てんかんという脳の病気について、当事者の仕事や働き方について向き合うストーリーです。

「てんかん」とは

症状と種類

–てんかんとは、どのような疾患なのでしょうか。

てんかんは、ざっくりいうと脳の病気。脳に原因があることで、発作と言われるものが繰り返し起きてしまう病気になります。発作の症状は人それぞれで、一般的にてんかん発作というと倒れるものをイメージする方も多いのですが、必ずしもそうではない発作も存在します。

僕の場合は、意識を失って倒れてしまう発作なのですが、本当に人それぞれ症状は違っていて、100人いれば100通りの発作があるといっても過言ではありません。

てんかんとは
てんかんは、突然意識を失って反応がなくなるなどの「てんかん発作」をくりかえし起こす病気ですが、その原因や症状は人により様々で、乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発病する可能性があり、患者数も1000人に5人~8人(日本全体で60万~100万人)と、誰もがかかる可能性のあるありふれた病気のひとつです。

(出典元|厚生労働省

日本では、60万人~100万人の方が持っているメジャーな病気ではあるのですが、事故の報道などによって偏見を持たれやすい病気でもあり、病気以外のところで苦しむ方も少なくありません。

てんかんの仕組みと原因

てんかんは、脳内の電気信号の異常放電によって起こると説明されます。僕がよく表現するのは、雷によって家のブレーカーが落ちてしまい、急に家中の電気が消えてしまうという状態ですね。

頭に雷が落ちて、一気に意識がなくなり倒れてしまう、といったイメージになります。

–てんかんが発症する原因は解明されているのですか。

原因としては、脳に傷を負ってしまうことによって、発症するケースが挙げられますね。例えば、脳出血や脳梗塞、あとはアルツハイマーといったような病気になることで、てんかんになる場合があります。

他には生まれてくるときに脳に傷がつき、てんかんになってしまうパターンでしょうか。ただ実際のところ、60%以上が原因不明と言われています。

過半数以上の人が自分がてんかんと診断された理由がはっきりしていない病気なんです。

治療法と薬について

–現在、治療法はあるのでしょうか。

薬を飲んで発作が出ないようにする投薬治療が基本と一般的です。それにより約6割の方の発作がおさまるとされています。

あとは、手術によって発作が軽減する方が2割ほどですかね。

薬を飲めば半分以上の方の発作がおさまるので、まずは投薬治療からスタートすることになるのですが、薬自体が100種類以上あるため、その中から自分にあったものを見つけるとなると、大変ではあります。

僕は、てんかんは治すというより、付き合っていく病気だと感じています。薬を飲むことによって発作は抑えられるのですが、薬を飲むのをやめてしまったり、生活リズムが崩れてしまえば、発作はまた起こってしまうので。

コントロールはできても、てんかんが治ることはないというのが僕の見解です。

自分自身、完璧に治そうと思って苦しんだ経験があるので、どう受け入れて生きていくかを考える方が、気持ち的にもラクですし、有意義に過ごせるかと思います。

–控えるべき生活習慣などはありますか。

多くのてんかん発作が起こる原因として、睡眠不足が挙げられます。

実際に僕も、起床したときに発作が出てしまったケースがよくあるので、やはり睡眠時間を十分に確保し、生活リズムを安定させていくことが大切なのではないでしょうか。

あとはシンプルに、薬の飲み忘れに気をつけてほしいです!

てんかんと仕事|てんかんYouTuber リンカーン中村

自己紹介

–詳しく説明ありがとうございました!改めて、自己紹介をお願いします。

僕は静岡県浜松市の出身で、5つ離れた兄と3つ離れた姉がいる末っ子として生まれました。

小学校3~4年生のときに、当時兄が見ていたお笑い番組にすごく惹きつけられまして、「こんなおもしろいことをやっているのか」と憧れを抱き、将来はお笑い芸人になろうと思いながら中学時代まで過ごしましたね。

高校1年生のときに「てんかん」と診断されたのですが、やりたいことがあるからと、卒業後に上京し、松竹芸能のお笑い養成所に通い始めました。


(幼少期のリンカーン中村さん:写真中央)

ただ、東京でもてんかんの発作は出てしまい、やむなく実家に帰ってくることになります。地元に帰ったあとはお笑いから離れて就職活動をしていたのですが、てんかんについて伝えると、採用までに至らないことが多々ありました。

自分はやりたいことがやれなくて、普通に暮らすことすらままならないのかと、当時はひどく人生に対して後ろ向きに考えていました。

–そうだったのですね。

転機になったのは、21歳ぐらいのときです。高校時代の友だちに電話をする機会がありまして、仲が良かったので、ポロっと「てんかんを持っている自分にできることはないんじゃないのかな」と言ってしまってたんです。

ただ、その友だちは「てんかんって、すごい個性なんじゃないの」と話してくれました。

はじめはよく意味が分からなかったのですが、その言葉はずっと心に残っていて。「てんかんが個性だとしたら、何ができるのだろう」とか「てんかんが武器だとして、誰の役に立てるだろう」と少しずつ考え方が変化していきました。

またその頃、2014年だったと思うのですが、てんかんを持っている方が死亡事故を起こしてしまうというニュースを1年間に2回ほど聞きまして、心臓を握り潰されるくらいに苦しい気持ちになったんです。

自分と同じ病気を持っている人や、自分と同じように苦しんでいた人が、取り返しのつかないことをしてしまったと。

ニュースでは連日、てんかんについて取り上げられており、ネットではいろいろなことが書かれていました。

「事故を起こしてしまった人が、てんかんを隠さずに生きられる世の中だったら。」

「てんかんを持っていることを伝えた上で仕事ができる社会だったら。」

恐らく、そのときのような事故は起こらなかっただろうと思いまして、自分が望む世界に向けてできることは何だろうかと考え、講演活動を始めることに繋がりました。

–最初の講演について覚えていらっしゃいますか。

はい。最初は中学3年生のときにお世話になった先生に連絡を取りまして、率直な自分の想いを伝えました。「てんかんを持っている人に元気や勇気を届けたいという想いから講演活動をしようと思っています」と。

そうしたら「じゃあ、うちでやってくれ!」と言ってくださり、当時先生が働いていた中学校で、2年生200人を前に講演することになりました。

中村さんの講演

その後、講演活動を続けていくなかで、もっといろいろなかたちで自分の想いを届けたいという気持ちから、ブログやSNSを使い始め、去年からはYouTubeもスタートし今に至るというかたちです。

–リンカーン中村さんの「リンカーン」の由来について教えてください。

ブログを始めたときに、誰に向けて書いていきたいかは明確だったので、「てんかん患者の、てんかん患者による、てんかん患者のためのブログ」という長いタイトルを付けたんですね。

ブログを始めたころは、本名の「中村真二」名義で執筆していました。しかしあるとき、ブロガーのあんちゃさんをイベントに呼び、僕が司会で彼女に質問する企画を行う機会がありまして。

イベントの前日に、一緒にご飯を食べることになったのですが、その際にいろいろとご相談をして、僕が事前に候補を考えてきたなかから、「リンカーン中村って、いいじゃないですか!」と背中を押していただいたんです。

あんちゃさん
(あんちゃさんとの1枚)

あとは後付けですが、リンカーン大統領の信念を貫いた人生に感銘を受けていたことと、「リンカーン中村」という表記が芸人みたいな響きで良いなといった理由もあります(笑)

てんかん当事者の就職に関する問題点と対策

–てんかん当事者の方が就職する際に、気をつける点などはありますか。

まず大前提として、仕事の前に自身のてんかんについて十分に理解し、発作をコントロールできるようになって欲しいと思っています。

「発作はいつ出るのか」という不安を持ちながら仕事をすることは、精神的にもなかなか厳しいと思います。まずは自分の発作を把握して、発作が起こらないために必要なポイントを押さえて頂きたいですね

専門の医師に診てもらうですとか、セカンドオピニオンを活用するという方法もありますので、まずは発作をコントロールすることを最優先に考えて欲しいです。

–確かにとても大切なことですね。

そのうえで、就職の際に気をつけるべきことですが、やっぱりまだ偏見を持たれやすい現状があります。てんかんを持っている人であれば、大半の人が既に経験しているかもしれません。

僕自身、てんかんを伝えると仕事に結びつかなくて、てんかんを伝えないで面接を受けたら、すぐに採用の連絡がきたという体験があります。そうしたことがあると、伝えることはリスクなのかなとか、雇用する立場からすればマイナスなのかなと考える部分はあるので、どのようにてんかんを伝えるべきかということはすごく悩みました。

「てんかんを持っています」だけを伝えると、どうしても相手が持っている印象やイメージに左右されてしまいます。

その方がてんかんを「あの倒れるやつか」や「事故を起こすやつだ」という印象を持っていたら、そのフィルターを通した受け取りかたになってしまうんです。

自分の病気を伝えるときは、てんかんになったことで、どのような経験をして、何を学んだのかといったことを伝えることが大切です。そうすれば、ポジティブな印象を抱いてもらいやすくなるので、就職活動のときに活かせるかもしれません。僕自身、そうしたことを意識することで、仕事が決まったという経験をしているので、ぜひ参考にしてみてください。

「てんかんという病気で、今まで大変な思いをしてきたんです」だけじゃなく、「てんかんという病気を持っていて、今まで大変な思いをしてきました。これからはその経験を活かしながら、たくさんの人の力になれるよう、社会に貢献していきたいです」と、ポジティブな面を伝えることが良いかもしれません。

てんかんに向いている仕事・向いていない仕事

–てんかん当事者が、気をつけるべき仕事として何が挙げられますか。

僕の独断になってしまうのですが、向いていない仕事としては、タクシーやトラックなどの運転手、あとはパイロットといった職業ですかね。営業で外回りをする仕事も、場合によっては難しいかなと感じています。

てんかん発作が出てしまえば、運転中の事故にも繋がりかねませんし、そうなると2年間は運転できなくなってしまうので、仕事が続けられなくなってしまうことも考えられます。運転などが必要な職種は控えた方が良いかなと考えています。

あとは高い所での作業が必要な仕事ですとか、温浴施設やプールといった水回りの仕事も注意が必要です。

てんかん発作は、生活リズムが崩れやすい夜勤のような仕事とも相性が良くないので、今お伝えしてきたような内容の求人は一度考えてみることをオススメします。

–逆に、おすすめの仕事は何があるのでしょうか。

向いている仕事については、こちらも僕の見解になってしまうのですが、生活リズムの安定する仕事、ストレスが比較的少ない仕事が良いかなと考えています。

事務職や、てんかんのことを知っている方が多いという理由で、介護職などもおすすめです。

他には、専門職といった自宅で仕事ができる職種も向いているのではないでしょうか。デザイナーやプログラマー、ライターといった仕事は、自宅の落ち着いた環境で働くこともできるので、選択肢として検討してみても良いかもしれません。

いずれにせよ、ストレスが少なくて、生活リズムが崩れない仕事が適しているので、そのなかで自分の好きな仕事を選んでほしいという感じですかね。

てんかんは就職する際に伝えるべきか

–就労の過程で、「自身の特性を伝えるかどうか」迷われている方もいらっしゃるかと思います。

確かに迷いどころではありますよね。ただ、僕としては伝えた方が良いかなと考えています。

何かあったときに対応してもらえるという安心感がある方が、精神的にも負担が少ないですし、発作が出たらどうなってしまうのだろうという不安を抱えながら働くことは、メンタルにも良くないと思うんです。

伝えたことによる不採用の「こわさ」はもちろんありますが、それでも伝えないことで起こるリスクと比べれば、話しておく必要性はある気がしています。

てんかんを持っている人がそれを隠して仕事をしていたら、てんかんに対する理解は広がらないですよね。ちょっとでも職場の人にも伝えていくことで、理解の輪は広がり、自分自身はもちろんですが、同じ境遇の当事者にとっても生きやすい社会になるのではないでしょうか。

てんかんは個性|てんかん持ちだからこそできること

YouTubeでの発信を始めた経緯

–中村さんはYouTubeでも発信しています。何かきっかけなどはあったのですか。

元々、自分の思いを伝えたいというところから講演活動をスタートさせ、自分の想いを伝える手段として、ブログやSNSを始めました。YouTubeはそうした活動の延長線上にあるイメージです。動画によって自分のメッセージをさらに届けることができるのではないかという気持ちから去年、投稿を始めました。

–YouTubeと他の媒体では、何か違いなどはありましたか。

自分の思いを届けるという点では、そこまで違いはありませんね。

ただ最近感じたこととして、毎週火曜日にライブ配信をしているのですが、そこではじめて当事者の方とリアルタイムでコミュニケーションと取ることができました。自分の情報や想いを、生で発信する機会は新鮮さがあり、すごくおもしろく感じます。

てんかん当事者の仕事の探し方・働き方

仕事を探したり、働いたりしていく上で、てんかん当事者であるということは必ずしもマイナスにはなりません。

「てんかんという病気はこうした症状があって、発作がでたらこのように対処してて欲しい」と、職場の人の不安を減らしていく作業が行えれば、周囲のてんかんに対する「はてな」を少なくすることに繋がります。

「知らない」っていうことは、てんかんに限らず、誰しもこわいことなんです。障害と一緒に働いていくときは、身近な人にだけでも話してみてください。

てんかん当事者(休職中・求職中)の方々へメッセージ

–てんかん当事者で休職中や求職中の方に、メッセージなどはありますか。

発作のコントロールをまず第一に考えることが重要です。発作がおさまっていないのであれば、専門の先生に診ていただく必要性は当然あります。仕事を探されている方であれば、今はいろいろなサービスがあるので、そちらにも目を通してみてください。

求人誌だけを見ている方がいるのであれば、ハローワークや「就労移行支援」、「就労継続支援」といったサービスも利用を検討してみて、1人で探すのではなく、サポートしてくれる方々と相談しながら探すのも1つの手です。

そして繰り返しになってしまいますが、「てんかん」を伝えていく力を身につけて欲しいです。そうしたスキルは、今後てんかんと生きていくうえで、非常に役に立つことだと僕の経験からも言えるので、「どのように伝えれば、良い印象を持ってもらえるか」ぜひ考えてみてください。

社会に向けてのメッセージ


(全国各地で講演活動を行っている。)

てんかんを持っていると伝えたときに「どんなてんかんを持っているの?」と興味を持っている姿勢を示してくれるだけでも、すごい嬉しい気持ちになります。

相手が自分を理解してくれようとしていると分かると、その人に何かあったら、力になりたいと僕は思えたので、協力や理解の姿勢を示してくれるだけでも、ありがたいです。

今まで持っていた「てんかん」のイメージに惑わされるのではなく、目の前の1人の人間と向き合い、接してもらえると、その気持ちは相手にも届くかと思います。

てんかんをもつ人にとって、発作が起こっている時間は通常数秒から数分間にすぎないため、発作が起こっていないその他のほとんどの時間は普通の社会生活をおくることが可能です。従って、病気の特性を周囲の人がよく理解し、過剰に活動を制限せず能力を発揮する機会を摘み取ることのないよう配慮することも、てんかんをもつ人に対するケアを行う上で大切なポイントです。

(出典元|厚生労働省

【編集後記】

中村さんのご活動を知ったのは、YouTubeを通してでした。たまたま関連表示されたものが、記事でも紹介した『てんかんが教えてくれたこと』という動画で、病気に対する1つの捉え方として非常に参考になりました。
当事者や社会を繋げる架け橋として活動される中村さんは、様々なかたちで情報発信を行っています。聖火ランナーとしての活躍も期待される中村さんの動向は、ぜひTwitterやブログ、YouTubeなどを通してチェックしてみてください!

(編集:伊藤弘紀|Twitter)

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