就労継続支援B型事業所 駄菓子屋「えーる」店長、徳永なお|芸能+福祉で明るくバリアフリーな社会を

駄菓子屋「えーる」店長、YELL+リーダー
徳永なお   とくながなおTwitter
7月13日生まれ。パザパ・エンターテイメント所属。
里田まいさんのそっくりさん、ももいろクローバーZの高城れにさん担当でテレビ番組に出演。YELL+のリーダーとして手話パフォーマンスを行いながら、事務所の就労継続支援B型事業所、駄菓子屋「えーる」で店長としても活動している。

障害者の方の「働く」を支援する福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援のA型とB型、就労定着支援など、様々なものが存在します。

今回取材したのは、埼玉県さいたま市で就労継続支援B型の福祉サービスを提供する「えーる」さん。

芸能事務所が、駄菓子屋「えーる」を運営し、障害者の「働く」を応援しています。

『芸能と福祉をリンクさせたバリアフリーな社会を目指して』

手話歌を披露するユニット「YELL+(エール)」のリーダーで、駄菓子屋「えーる」の店長&支援員も務める、徳永なおさんに両面からお話いただきました。

就労継続⽀援B型事業所とは

就労継続支援B型は、雇用契約を結んで働くことが困難な方を対象に、軽作業などの就労訓練を行うことができる福祉サービスです。

就労継続支援には、A型とB型の2種類が存在します。

A型では事業所と雇用契約を結び、基本的には最低賃金の適用と社会保険の加入が義務付けられており、B型では主にA型での仕事が困難な方を対象としてサービスを提供しています。

障害や難病、年齢など、様々な理由から、企業と雇用契約を結んだ上で働くことが難しい方も少なくありません。そうした方々に向けて働く場を提供するのが、B型事業所です。

障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつであり、個々の方のニーズに合わせて利用できるのが特徴になります。

利用方法・作業内容

まずは、どの就労継続支援B型事業所を利用するかを選びましょう。

B型事業所の情報については、インターネット上の求人サイトや職業安定所などで探すことができます。

利用してみたいと思う事業所が見つかれば、その事業所に連絡を取り、ご確認の上で見学・体験が可能か聞いてみましょう。

実際に見学や体験をしてみると、その事業所での作業内容や雰囲気を伺い知ることができます。

その後は、事業所とやり取りを進めながら、利用できるようであれば市区町村の福祉窓口でサービス利用の申請をしていく流れです。

申請後は各市区町村の担当者の指示に従い、必要な手続きを踏まえたうえで、問題がなければ正式に利用がスタートします。

利用料金や平均的な⼯賃

B型の事業所では作業の対価として工賃が支払われ、自分のペースで働くことができます。

雇用契約を結ぶわけではないため、最低賃金制度は適用されませんが、近年では少しずつ平均工賃の増加が見られています。

施設名 平均工賃(賃金) 施設数(箇所) 平成29年度(参考)
月額 時間額 月額 時間額
就労継続支援B型事業所 16118円
(103.3%)
214円
(104.5%)
11750 15603円 205円

(厚生労働省|平成30年度工賃実績より)

就労継続支援B型の利用料金は、事業所に通所する日数や世帯の収入状況により異なります。

通所日数が多いほど費用もかかりますが、生活保護受給世帯や、市区町村民税非課税世帯に該当する場合、利用料金は必要ありません。

また、世帯収入による月額の負担上限も37,200円と決められています。

ご自身やご家族がどの位置付けにあたるかは、各市区町村の相談窓口にお問い合わせください。

利⽤対象者

就労継続支援B型の利用対象は、以下の項目のうち、いずれかに当てはまる方々です。

  • 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で 一般企業に雇用されることが困難となった者
  • 50歳に達している者、または障害基礎年金1級の受給者
  • 上記に該当しない者で、就労移行支援 事業者等によるアセスメントにより、就労面にかかわる課題等の把握が行われている者

※障害者手帳の有無は、必ずしも問われません。

就労継続⽀援B型事業所「えーる」の仕事内容


(駄菓子屋「えーる」の店舗風景)

駄菓子屋「えーる」について

就労継続支援B型事業所「えーる」の代表、山中康行さんに事業所の概要についてご紹介いただきました。

–「えーる」の設立経緯について教えてください。

芸能事務所を運営する一方で、社会貢献活動をしたいという気持ちはありましたが、実はユニットとしてのYELL+(エール)が先だったんです。

聴覚に障害がある方にも音楽を届けたいという想いから、手話を音楽に取り入れたユニットYELL+の活動がスタートしました。

そして、YELL+のデビューライブは「放課後等デイサービス」で開催したんですね。

最初は手話を用いていろいろな歌を披露していたのですが、そのなかでどうしても福祉について深く学ぶ必要性がでてきて。メンバーと一緒に学んでいきました。

–そうだったのですね。徳永さんとはどこで知り合ったのですか。

手話アイドル
(手話交流会で、一緒に手話を勉強する徳永さん)

私は、芸能事務所でとある女優さんのマネージャーを10年ほどやっていました。

ただ、その頃から独立したいという気持ちはあったので、事務所の方にもお伝えし、2017年の9月に独立させていただきました。徳永はそのとき所属していた事務所で一緒だったんです。

YELL+というユニットを独立の際には既に抱えていたので、福祉系の事業所の立ち上げは意識していました。

独立した当初は「放課後等デイサービス」をやろうと考えていましたね。子供はかわいいし、楽しいかなという気持ちがあったので、約半年間、私と徳永で知り合いの方の「放課後等デイサービス」にお世話になり、支援員として勉強させてもらいました。

施設では、働いている方の7割~8割が障害のある子の親御さんでして、障害のことや家庭でのお話はお子さんと親御さんの両方から聞けたんです。

そのとき多かったのは、18歳を過ぎたあとの子供たちの人生に関する不安や心配の声でした。「放課後等デイサービス」以外の業態を調べるようになったのはそれからですね。

個人的には、B型の事業所をもっと盛り上げる必要があるなと思ったので、結果としてB型の事業所を立ち上げることになりました。

ちなみに「えーる」はさいたま市にありますが、さいたま市は私の地元です。

地域に愛される福祉事業所にしたいという想いがあり、駄菓子屋として事業所をオープンしました。

事業所の作業内容や利⽤者層

–「えーる」の作業内容はどのようなものになりますか。

駄菓子屋さんですので、本当にいろいろなことをお願いしています。品出しやお菓子の袋詰め、店番を担当していただくこともあります。

店内の清掃や賞味期限のチェック、後ろのスペースで行う検品作業などもお任せしています。

また「えーる」では施設外就労にも取り組んでいて、マンションや自動車教習所の清掃も行っています。

去年ですと、大手建設会社さんと契約しているので、草取り・草刈などの活動も行いました。

–利用者さん層について教えてください。

定員は20名ですが、週1日で作業される方もいらっしゃるので、現在だと22名の方が登録されています。

男女比でいいますと、男性が12名で女性が10名です。比較的、女性が多いのではないでしょうか。

障害の区別でいうと、知的が12名、精神が6名、身体が4名という構成になります。

–「えーる」では一般就労された方もいらっしゃいますか。

はい、まだ設立間もない事業所ですが、現在2名の方が一般就労されています。

1名は清掃業に就かれ、もう1人は私たちの事業所で支援員になっていただきました。

「えーる」の作業時間や⼯賃の⽀払い⽅法

–作業時間や工賃について、お伺いしてもよろしいでしょうか。

作業時間に関しては、1時間から7時間で幅広く採用しており、1時間単位で希望できるようになっています。作業日については週1日から週5日まで対応しています。

利用者さんに合った時間と日数で働けるのが特徴ですかね。

現在では、2、3時間~5、6時間で週5日のシフトを取られている方が多い印象です。

工賃については現在、月額で1万~3万円というところで推移しています。

現在は、コロナウイルスによる外出自粛要請もあり、利用者さんは皆、在宅利用に切り替え、各自課題に取り組んでいます。

万が一に備え貯蓄はしていたので、しばらくはなんとか払える状態です。通所が再開されたら、工賃を少しずつ上げていけるようにしていきたいですね。

今は在宅利用という形ではありますが、なるべく通所時と変わらない工賃を全員に配れるように、という計算で2、3か月は耐らえれるようにしています。

利⽤者や地元の方の声


(徳永さんも店長として勤務。)

利用者さんでいいますと、

「前の事業所では毎日通えなかったけど、えーるに来てからは毎日楽しく通えている。」

「一般就労された方がいるので、自分も就職や自立に向けて頑張りたい。」

「モヤモヤしたときに、きちんと話をきいてくれて嬉しい。」

といったお声をいただいています。

地元の方ですと、

「福祉事業所だとは思わなかった。」

「駄菓子屋さんが近所になかったからできて嬉しい。」

「駄菓子屋さんはいろいろなことが学べそうだから、障害のある方の訓練にはとてもいいですね」

とお話いただいています。

なかには福祉事業所とすら気付かなかった方もいらっしゃいましたね。

また、地元の小学校が少し前に分校したのですが、「えーる」で昔の学校の友達と再開するといったことも起きているそうです。

そうした声をいただけると、本当に事業所を開いて良かったなと感じます。

おススメの就労継続⽀援B型事業所|YELL+の徳永なおさんに聞いてみた


(24時間テレビ大阪会場での1枚)

⾃⼰紹介

–まず自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。

私は元々、里田まいさんや高城れにさんの「そっくりさん」として、ものまね番組などに出演していました。

その他にアイドルユニットに所属させていただきまして、そのユニットを卒業するタイミングで、障がいの有無に関わらず、明るくバリアフリーな社会を目指し、聴覚障害のある方にも音楽を楽しんでもらいたいという想いから、YELL+を結成し、音楽に 手話”を用いてパフォーマンスすることに挑戦をはじめました。

ユニットの活動としては、ライブハウスでの音楽活動や、福祉施設ですとかイベント会場でのライブ活動などですかね。

イベントでいいますと、西武遊園地や24時間テレビ大阪会場での出演もさせていただきました。

事業所では、支援員だけでなく駄菓子屋の店長としても勤務しているのですが、支援員としてはみんなの困りごとを聞いてあげるようにしています。また、駄菓子屋の店長としては、発注ですとか接客ですとか本当にいろいろな業務をしていますね。

–徳永さんはなぜ、福祉という分野に興味を持たれたのですか。


(福祉施設で活動している様子)

私は小さい頃から、障害がある子たちと遊ぶ機会がたくさんありました。なので、その頃から私のなかに障害のあるなしの境目がなかったんです。

ただ、そういう子たちと遊んでいると、少なからず周囲からの目というものがありました。障害をもっているというだけで考えてしまう方もいたので。

障害者が一部のイメージだけで判断されることはなくしていきたいという気持ちはずっとあったので、ユニットとしても活動しながら支援員、店長として「えーる」で働いています。

事業所でトラブルを事前に防ぐ⽅法

–これまで事業所のなかでトラブルなどはありましたか。

大きいトラブルはないのですが、事前の対応策として保護者の方などと連絡帳によるやり取りを行っています。

連絡帳にはその日、利用者さんにあったことなどを記入して「こちらではこういうことをお伝えしました」とご連絡しています。場合によっては、「ご家庭でもフォローをお願いします」と一言添えてお伝えしています。

あとは、ADHDなどの障害特性がある方のなかには「生きづらさ」を抱えていて、人間関係がなかなか上手くいかないといったこともあります。

そういった方々がモヤモヤを感じていると分かったら、すぐにお話はするようにしていて、なるべくその場で解消してもらえるよう心がけています。

「話を聞いてあげる姿勢」を大切にしていますね。

徳永さんがおススメする、就労継続⽀援B型事業所や選び⽅

–「えーる」の店長をやられている経験から、おススメの事業所などはありますか。

見学・体験の際に、その場で質問したいことが浮かばないこともあるかと思います。そうしたことに備えて、事前にメモなどをしておくと便利なのですが、そうしたメモした内容にも丁寧に答えてくれる事業所さんはおススメかと思います。

体験では、仕事内容はもちろん、周りの利用者さんと上手くできるかという点もチェックしておくと良いですよ。

社会に向けてのメッセージ

–徳永さんは今、ユニットや事業所の店長としてご活躍されています。そうした活動を踏まえて伝えたい想いなどはありますか。

皆楽しいときは笑顔になるし、汚い言葉を投げかけられたらイヤな気持ちになりますよね。

そうした気持ちは、障がいのあるなしに関係なく、誰もが共通して感じるものだということを伝えていきたいです。

あとは、障害といっても一言では表せない、様々な障害があると思います。

そのなかには「目にみえない障害」というものもあるので、そうした障害の認知をYELL+での活動を通して広めていきたいです。

最近だと「ヘルプマーク」というものがあるのですが、もし付けている方を見かけたら、思いやりのある行動をしてもらえると嬉しいです。

店長として、YELL+として、個人として、障害の有無にかかわらず皆が共存できるバリアフリーな社会を目指していきたいです。

取材協力:就労継続支援B型事業所 駄菓子屋「えーる」
代表:山中 康行|店長:徳永 なお(YELL+)

【編集後記】

就労継続支援B型事業所「えーる」は、おしゃれで働きやすい環境づくりを意識し、手話交流会なども行う地域との交流が盛んな事業所です。取材で印象的だったのが、子供も大人も懐かしいと思える場所を考えたうえで「駄菓子屋さん」にしたというお話。利用者の方にはもちろん、地域にも愛される場所として機能している「えーる」は、様々なかたちでバリアフリーを体現しているように感じました。

(編集:伊藤弘紀|Twitter)

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