手話とダンスで世界をつなぐ|JIN KITAMURAが目指す「したい」が「できる」UDEの社会とは

手話UDダンサー
JIN KITAMURA 北村 仁 (Twitter) 
神奈川県平塚市出身/在住。「手話とダンスで世界をつなぐ」 をテーマにストリートダンスに手話を取り入れた手話UDダンスを行う。障がいの有無に関わらず、エンターテイメントを楽しめるUDE(Universal Design for Entertainment) の社会環境を目指す。
2010年、手話ダンスパフォーマーグループに所属。その後、株式会社LITALICOに入社。2019年にアーティストとしてのソロ活動開始。同時にNPO法人  UDE JAPANを設立する。「手話UDダンスワークショップツアー」「できたを増やす手話UDダンスワークショップ」など、ユニバーサルデザインライブを世界に広げている。

手話を使って歌詞を見えるようにし、それを歌のリズムに合わせて踊る「手話UDダンス」。

耳の聴こえないろう者も、見て、踊って、エンターテイメントを楽しむことができます。

そんな手話ダンスで障がいの有無にかかわらずエンターテイメントを楽しめる「UDE」の社会環境を目指すのが、手話UDダンサーのJIN KITAMURA(北村 仁)さん。

今回は北村さんに手話をダンスにする際のこだわりや、手話ダンスで生まれるつながり、目指す社会についてお伺いしました。

UDE(ユニバーサル・デザイン・エンターテイメント)
Universal Design for Learningrning(誰もが伸びるユニバーサルデザインな学び)の概念をエンターテイメントに例えている。

北村仁の経歴

ーー北村さんがソロで活動を始められたのは最近のことですよね。その前のご活動も含めて、経歴を教えていただけますか。

元々はストリートダンスをしていました。2010年に手話ダンスパフォーマーグループに所属したことをきっかけに、手話やろう者の文化に触れ「障がいに関する勉強をしたい」と思うようになりました。

手話ダンスパフォーマーグループを辞めた後は株式会社LITALICOに入社し、応用行動分析(ABA)や発達障がいに関する知識を学んでいます。

アーティストとしてのソロ活動を開始したのは2019年です。「平塚市まちづくり財団」と「こども発達支援室くれよん」の後援を受けて「手話UDダンスワークショップツアー」を開催するなど、現在は「手話とダンスで世界をつなぐ」というテーマで、ストリートダンスに手話を取り入れた「手話UD(ユニバーサルデザイン)ダンス」を行っています。

また同年に「障がいの有無に関わらずエンターテイメントを楽しめるUDEの社会環境」を目指し、NPO法人UDE JAPANを立ち上げました。

手話との出会い

ーーありがとうございます。手話ダンスパフォーマーグループに所属したのが、手話との出会いだったのでしょうか。

そうですね。手話ダンスパフォーマーグループのメンバーは、神奈川県平塚市の地元仲間だったんです。グループに所属して、初めて手話で踊りました。

家族や知人にろう者がいるわけではないので、手話の知識はありません。なので最初は振り付けとして覚える感覚に近かったです。

 

ーー手話でダンスすることを始めて、印象的だったことはありますか?

手話ダンスパフォーマーグループで、フィリピンとカンボジアに行ったことですかね。

地雷で手足を無くしてしまった方や、耳の聞こえない方が働く就労支援場所に行き、手話という共通言語を持つパフォーマーと一緒にダンスをしました。

手話って世界共通だと思われがちですが、フィリピンだとタガログ語、カンボジアだとクメール語など、言語それぞれの手話があるんですよ。風土や文化で全然違ってきます。

なので「通じないだろうな」と思ったんです。

でも、日本語とクメール語の手話は、見たもの手話にしている点で似ていて、お互いの言葉はわからないけど、手話同士なら意思の疎通が取れたんです。そういう言語として発見が印象的でした。

 

手話で踊ること

ーー北村さんが手話ダンスを好きになったのは、そういう手話の面白さに気がついたからなのでしょうか?

手話で踊ることで、ろう者と関わるきっかけができるんです。

「ろう者と喋りたい」と思ったら、例えば「手話を覚えるために本を買う→手話を覚える→ろう者と喋ってみる」というステップが必要だと思います。そのステップが、どうも難しいなと思うんです。

でも、踊りや音楽などのエンターテイメントを通して手話に触れれば、少し手話のハードルが低く、柔らかくなります。

エンターテイメントを楽しむろう者も多いので、その楽しさから繋がっていけるのも手話で踊ることの魅力だと思っています。

ただ「アーティストとして売れていくより、ろう者のパフォーマーや手話UDダンスが活躍できる土台を作っていきたい」と思ったので、手話ダンスパフォーマーグループを辞め、障がいについて学ぶためにLITALICOに入社しました。

 

手話UDダンスで「したい」を「できる」に

ーー北村さんが指導員をされていた「LITALICOジュニア」には発達障がいのあるお子様が多いですよね。手話とはあまり結び付かないイメージなのですが、どうして発達障がいについて学ばれたのですか?

グレーゾーンの子どもや、発達に遅れのある子どもは「空気が読めない」「調和を乱す」と、習い事を断られてしまうことがあります。僕のレッスンには、そうやって習い事を断られた経験のある子どもが来ることが多いんです。

僕には「障がいを持っている子どもや、グレーゾーンの子どもたちが、エンターテイメントを通して『したい』が『できる』自分になってほしい」という想いがあります。

そのためには「手話で踊ることで成功体験を重ね、自信をつけ、その子どもが自己実現できる環境」をつくっていく必要があって、そのためには専門知識が必要だと思ったので、LITALICOで障がいについて学びました。


ーーそうだったんですね。レッスンに参加された方の感想を聞いたことはありますか?

手話で踊るのには、表情がすごく大事なんです。なので「表現力が育った」「コミュニケーションが取れるようになった」という声を親御さんからいただきます。

「今まで発表会とかうまくできてこなかったけど、北村さんの発表会では最初から最後まで踊りきれました」とか「子どもが家で踊ってます」という感想もうれしいですね。

それから、レッスンで習ったダンスをSNSに載せてくれるのも「したい」と思わないとしないことだと思うので、うれしいです。

ショートムービー投稿アプリTikTokでは「#手話ダンス」の投稿が流行っている。また写真投稿アプリinstagramにも「#手話ダンス」、動画投稿サイトniconicoには「#手話ってみた」などのハッシュタグがあり、手話ダンスをSNSに投稿する人が増えている。

 

手話UDダンスレッスンのこだわり

ーーレッスンのこだわりはありますか?

「認める」ことを大事にしています。

僕は今まで何をしても続かなくて、褒められた記憶があまりないんです。でも職場仲間に誘われて20歳で始めたダンスは、生まれて初めて「楽しいな」と思えてハマったんです

ダンスは楽しかったけど、だんだん楽しいだけではできないことが増えてきました。そんな時に手話とダンスに出会い、米津玄師さんの『アイネクライネ』という曲で踊ったんですよ。

それがニコニコ動画で話題になって、公式のイベントに呼んでいただくことになりました。手話で踊ることによって周りに認められて、自信を持つことができたんです。

認められることの重要性を実感したので、LITALICOで学んだ応用行動分析を活かして、レッスンでは必ず細かいことも褒めて認めています。

日本人はあまり褒めないし、褒めても建前が強いので、その子に対する適切な褒め方を突き詰めていくと、結果「自分がしていることっていいことなんだ」と思って、ダンスも上達するし、人間性も育つんです。LITALICOで学んだことの効果が出ているので、LITALICOには感謝しています。

 

ーー北村さんがおっしゃっていたように、踊りを通して手話に触れれば、少し手話のハードルが低くなると思うのですが、手話でダンスをしながら、手話を覚えることはできるのでしょうか?

手話ダンスで手話を覚えるというよりは、手話ダンスで手話に触れてみて、例えば好きな手話を1個覚えたり「ろう者と手話で話してみたい」と思ったり「手話をやろう」という勇気や自信が育つというイメージです。

実際、年に1回大きいイベントがあって、そこに来るろう者のパフォーマー達と子どもたちの間で手話のコミュニケーションが生まれています。

実は歌詞を手話にすると、日常会話では使わない手話も多いんですよね。なのでレッスンでは「日常会話ではこう使う」など、手話のレクチャーもするようにしています。

ろう者に伝わる手話表現のこだわり

ーーろう者と手話でコミュニケーションをとったら、更に「手話を学びたい」と思えますね。手話には、ひとつの言葉に対して表現方法が何通りもあると聞いたことがあるのですが、歌を手話にするときに、なにかこだわりはありますか?

歌詞通りに手話をしないことです。

例えば「翼を広げて大空へダイブ」とそのまま手話に訳さず「勇気を持って挑戦しよう!」と訳します。歌詞の裏側にある意味やメッセージを手話で表現することが大切です

抽象概念を読み取るのが難しい方もいるので、歌詞の意味や情景をくみ取りやすいようにかみ砕き、わかりやすくすることを大事にしています。

それでも、意味が全然伝わらないこともあります。より伝わるように手話表現をしたいので、ろう者の友達に歌詞の訳し方を確認してもらい、その手話をダンスにしています。

今後の活動

ーー今後やっていきたい活動はありますか?

個人としては、エンターテイメントを通して、障がいのないユニバーサルデザインな社会をつくっていきたいです。

例えば鳥取県は、手話は言語だと認める「手話言語条例」を日本で初めて制定していて、 この条例の理念に基づいて「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」というイベントを開催しています。

でも東京や神奈川近郊でこのようなイベントはないので、ろう者や手話パフォーマンスをしている方、障がいを持っていてエンターテイメントをしている方が輝けるようなイベントを開催したいと思っています。

NPO法人UDE JAPANは「障がいを持っている子どもや、手話を第一言語としているろう者の生活を、エンターテイメントを通して豊かにしていきたい」と思い活動しています。そのために「したい」を「できる」にする、架け橋のような場所をつくっていきたいです。

そのひとつが『UDE JAPAN TV』というYouTubeチャンネルです。

UDEの動画や情報を1個で見られるようなチャンネルづくりを目指しています。このチャンネルをつながりの場にすることで可能性を広げ「障がいの有無に関わらずエンターテイメントを楽しめるUDEの社会」の実現を目指しています。

メッセージ

今まで、僕は認められた経験があまりありませんでした。でも、ひとつ認められることがあるだけで、人生はすごく明るくなります。

「したい」が「できる」になって「できた」に繋がる。僕は手話とダンスでそんな成功体験をつくって応援する活動していきます。

 

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ご入会と詳細

 

(編集者:佐藤 奈摘

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