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福祉崩壊を防ぐ新たなプロジェクト
2020年4月24日、一般社団法人障害攻略課、NPO法人D-SHiPS32、一般社団法人Get In touch、株式会社ヘラルボニーがタッグを組み「#福祉現場にもマスクを」プロジェクトがスタートしました。
マスクが不足しているにもかかわらず声をあげにくい福祉現場にマスクを届けるこのプロジェクトは、約2週間で53,000枚以上のマスクを福祉現場に届け、多くの反響を呼んでいます。
応援のメッセージとともに寄付されたマスク
そして2020年5月8日「#福祉現場にもマスクを」と、プロジェクトに共感した「ECONET PROJECT」(中部日本プラスチック)がコラボレーションし、新しいプロジェクト「おすそわけしマスク」をスタートさせました。
「おすそわけしマスク」の仕組みとマスクの品質
マスクを寄付したい方がすることは実にシンプル。「おすそわけしマスク」特設ページで自分や大切な人のためにマスク購入するだけです。
すると、55枚分の金額(2,722円/税込み)で購入したマスクのうち、50枚のマスクが購入者のもとに届き、残り5枚のマスクが福祉現場に寄付されます。
福祉現場の方は「おすそわけしマスク」マスク希望入力フォームに必要項目を記入することでマスクを受け取ることができます。
また「#福祉現場にもマスクを」でマスクを受け取った福祉現場の方も申し込むことができます。
マスクは2020年5月25日 から順次発送予定
マスクの品質について、株式会社中部日本プラスチック代表の雪下真希子さんは「安いマスクには必ず理由があります」と語りました。
このプロジェクトで届けられるのは、細菌やウイルスを吸収して広がりを抑えるメルトブロウン不織布のフィルター入りの3層構造で、ヨーロッパおよびアメリカの医療要件基準を満たすCE、FDAの認証をうけたマスクです。
マスクの需要が急速に高まり、日本だけではなく世界中でマスク不足が叫ばれている状況ですが「おすそわけするマスクは、ウイルスを防ぐ安心安全なものであるべきだ」という徹底したこだわりがうかがえます。
自分や大切な人を守りながら、同時に地域や社会も守る
株式会社小国士朗事務所の小国士郎代表は「おすそわけしマスクは、自分や家族や社員を守りながら、同時に地域や社会も守るマスクです」と説明しました。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うマスク不足から、マスクの買い占めが問題になったことは、記憶に新しいのではないでしょうか。マスクをめぐって世界各国で強盗や暴力事件が起こり、SNSでは買い占めや転売をする人を徹底的にたたくような風潮があります。
しかし「マスク買い占めているように見える人」にも様々な事情があります。福祉現場の職員で、利用者分のたくさんのマスクが必要なのかもしれません。クリニックの受付など、マスクが必要不可欠な仕事に従事しているのかもしれません。家族に事情があるかもしれません。
「おすそわけしマスク」は「後ろ指をさされながらマスクを売ったり買ったりする」のではなく、日本的なおすそわけ精神で支えあい、繋がりあっていくことができるプロジェクトです。
以前「#福祉現場にもマスクを」について一般社団法人Get in touch代表の東ちづるさんにお話を伺った際に、福祉施設の孤立が問題としてあがりました。
施設と地域や企業、さらには施設同士のつながりが薄いため、東さんは「施設同士では『マスク届いたよ。おたくも申請すれば?』みたいな会話ができて、つながっていくといいなと思っています」と語っています。
実は「#福祉現場にもマスクを」で寄付を受けた福祉現場が、また違う福祉現場のために寄付をする「寄付の循環」が起こっていたそうです。
これを一般社団法人障害攻略課理事の澤田智洋さんは「寄付という言葉では括りきれず『寄付』に濁点を付けた『ギブ』の循環が起こっているのではないか」と語り笑顔を誘いました。
深刻なマスク不足は奪い合いも生みましたが、福祉現場と社会のいろいろな人をつなぐきっかけにもなっています。
しかし、必要な場所へ「おすそわけ」をするためには「困っています」のひとことが必要です。引き続きSOSを出しあい、支えあうことで、より多くの人がつながっていくことが求められます。
登壇した各団体の今後の意気込みと呼びかけ
最後に、オンライン記者会見に登壇した各団体代表の今後の意気込みと呼びかけをご紹介します。
「今回のプロジェクトをきっかけに、コロナという同じ問題に向かって世界が1つに支えあい、みんながつながっていると思えるきっかけにしたいです。」(雪下)
「いい仕組みだという自負はありますが、品質や価格、流通などのベーシックな面をやってこそのプロジェクトだと思うので、是非皆さんからも意見をいただいてよりいいプロジェクトにしていきたいと思います。」(小国)
「今まではマスクや我々が主役でしたが、これからはいかに福祉現場を主役にしていくかに注力したいです。」(澤田)
「お問い合わせが多いのですが、まずはサイトをよく読んでいただきたいです。読んでわからないことがあれば、なんでもお問い合わせください。このプロジェクトがSOSを出し合い、受け止め合い、支えあっていくきっかけになればいいと思います。」(東)
「プレーヤー(運営チーム)は観客(支援してくださる皆さん)が多ければ多いほど、やたら盛り上がります。マスクという点を、どんどん福祉現場にゴールしていきたいです。」(NPO法人D-SHiPS32代表 上原大祐)
「医療従事者の皆様がSNSで『こんなに困っている』と発信しているなか、福祉現場は『#福祉現場にもマスクを』の個別の会社に『こんなに大変なんだ』と連絡が届いていて、自分たちから声を上げることがなかなかできていないと思っています。それを可視化するという意味でも重要なプロジェクトだと思っています。」(株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 松田崇弥)
(編集:佐藤奈摘|Twitter)