ギラン・バレー症候群で寝たきりだったあやなななが踊り手になるまで|「また立って踊りたい」

踊り手
あやなななTwitterニコニコ動画YouTube
20歳の時にギラン・バレー症候群になったことでほぼ全身が麻痺。現在は車いすで生活をしている。2017年に踊ってみた動画を初投稿。その後「ニコニコ超会議2018」や「ダンマスワールド」に出演を果たした。車いす用のレインコートなどの商品開発や、バリアフリー・フィルム・パートナーズが主催する「心のバリアフリーファッションショー」のモデルも務める。momotaroと2人暮らし。

様々な踊りを動画にして、ニコニコ動画に投稿する「踊ってみた」。

2008年ごろから始まった「踊ってみた」は企業が参画するなど大ブームを起こし、現在ではYouTubeやTikTokへのダンス動画の投稿が定着しています。

そんな「踊ってみた」界隈で、持ち前の明るい笑顔としなやかな動きで注目を集めるのは「踊り手」あやなななさん。

「ギラン・バレー症候群」という難病により全身まひを負い寝たきりで過ごした彼女は、5年間の入院を経て現在は車いすで生活をしています。

「また踊りたい」その思いで乗り切ったというあやなななさんに、壮絶な闘病生活についてや「踊ってみた」動画のこだわり、「壁を感じない」と思ったというニコニコ公式イベントについて伺いました!

今回の取材を通して、あやなななさんが観る人を惹きつける理由が少しわかりました。

あやなななとは

ダンスを始めたきっかけ

ーーあやなななさんはどうしてダンスを始めたのでしょう?

中学生の時のいじめがきっかけで、人前に立つ根性を付けたくて始めました。

安室奈美恵さんなどが音楽番組で踊っている姿が、輝いて見えたんです。ダンスを始めるまでは剣道と空手をしていたので、違う世界への憧れもあったと思います。

中学3年生の時には文化祭のオープニングアクトとしてステージに立って踊ることができました!

 

ギラン・バレー症候群とたたかう日々

ーーあやなななさんは20歳の時にギラン・バレー症候群を発症されたんですよね。自覚症状はどのようなものでしたか?

当時はヘアメイクの仕事をしていました。

仕事を終えて帰ろうとしたある日、40℃の熱が出たんですね。ふらふらになりながらなんとか家に帰って、そのまま動けなくなってしまいました。

実家の近くで1人暮らしをしていたので母親が救急車を呼んでくれたのですが、最初の病院では「ただの熱」と診断されたんです。

それで1週間ほど過ごし、その後大きい病院に搬送され、詳しく検査してもらったら「ギラン・バレー症候群」と診断されました。

早期治療が重要な病気なので、もし最初の病院で「ギラン・バレー症候群」と正しく診断されていたら、ここまで重くならなかったのかなとも思っています。


ラン・バレー症候群とは
体の各部分に分布する末梢神経の障害により、四肢や顔、呼吸器官に麻痺などが起こる疾患。年間で10万人に1、2人がかかると言われており、指定難病の一つ。末梢神経に障害が生じるとしびれや痛み、脱力などの症状が表れる。通常は数日から数週間にわたって悪化し、その後は自然回復することがほとんど。重症例では麻痺が進んで歩行障害を起こしたり、人工呼吸器を要する呼吸困難を生じたりすることもある。

(参照元|ドクターズ・ファイル)

–診断が出て、どう思いましたか?

「聞いたことのない病気だな」と思いました。

診断を受けてからは検査入院でそのままICU(集中治療室)に入ったんです。スマホも取り上げられ、テレビも何もないので「ギラン・バレー症候群」がどんな病気なのか、調べる時間すらなかったですね。

 

闘病生活とリハビリ

ーーそこから約5年間の長い闘病生活がはじまったんですね。症状はどのようなものでしたか?

とにかく毎日、痛みがひどかったです。

1時間に1回くらいは手足の先などの末端をアイスピックで刺され続けるような痛みが来ました。

▼Instagramにアップした当時の写真

 

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2年前の私。 ・ ・ 手足の震えが止まらず寝たきりで24キロまで落ちて 口からご飯も食べれなくなり鼻から管をいれて栄養摂っていました。今では普通型の車椅子に乗れるようにまで回復して「絶対負けない」「少しでも良くなってやる」って、あの時リハビリ辛くても諦めなくて良かったって思いました。 ・ ・ 父親が脳の病気にかかってしまい 昨日から検査入院しています。 父親も頑張っています。 私がしっかりしなければ。 早く治さなければ!!! ・ 明日から倍。倍。倍。 リハビリ頑張ります👊 ・ ・ #病気に負けない #難病 #ギランバレー症候群 #10万人に1人 #あやなななのリハビリ

あやななな(@_ayananana_)がシェアした投稿 –

ーーつらいですね…。どうして乗り切ることができたのでしょう?

「また大好きなダンスやスノボができる、普通の生活に戻りたいな」という気持ちだけで頑張りました。

毎日友達や家族がお見舞いに来てくれて、私は闘病生活でやつれてしまっていたんですけど「気を使わせてしまったり悲しい思いをさせてしまう」と思い、友達の前では笑ってごまかしていました。

 

ーー車いすに乗れる状態になるまで、どのくらいの時間がかかりましたか。

最初は全身が麻痺していて痙攣(けいれん)もあり寝たきりだったので、ベッドの上で20分×3回のリハビリを1年ほど続けていました。

車いすに乗れるようになったのは、入院して3年ほど経ってからです。

私はギラン・バレー症候群のほかに、起き上がると血圧が急激に下がって気絶してしまう「起立性低血圧」という合併症もあるので、車いすに乗れるようになるまでは時間がかかりました。

今もリハビリは続けていて、入所リハビリから通所リハビリに切り替えて頑張っています!

 

車いすになって気付いたこと

ーー車いすに乗って生活するようになり、何か気付いたことはありましたか?

20年間立って歩いて生活していたので、「目線が低くなると世界ってこんなに怖いんだ」と思いました。

車いすからの目線だと、移動しているときに前を歩いている人の手が顔に当たりそうになるんです。傘の先が顔に当たりそうになるのは怖いですね。

それから皆さん気を遣ってくださいます。私は「気を遣わせてしまっているな」とも「助けてくれてあたたかいな」とも思います。

 

踊ってみた

ーー闘病生活の中で「踊ってみた」を投稿しようと思ったのはどうしてですか?

元々ダンスをしていたこともあってニコニコ動画の「踊ってみた」はよく見ていたのですが、入院していた時に愛川こずえさんという方の『ルカルカ★ナイトフィーバー』の「踊ってみた」動画をみたのがきっかけです。

その動画をみて「楽しそうだな」と思って、ベッド上でずっと踊っていました。

初投稿について

ーー最初の投稿は『Calc.』という曲の「踊ってみた」でしたね。

『Calc.』は、ニコニコ動画の「踊フェス(踊ってみたフェス)」のテーマソングだったので「私も踊りたい!」と思ったのと、歌詞が好きだったので選びました。

でも最初は動画の撮り方もよくわからないし、カメラすら持っていない(笑)

なので趣味でカメラを持っていた剣道部の友達に「撮ってもらえない?」とお願いをして、近くの公園まで車いすを押してもらい動画を撮りました。

パソコンも初めて触って、見よう見まねで編集して、投稿したんです。

 

ーー投稿した時はどんな気持ちでしたか?

ずっとドキドキしていました。

当時「ニコニコは動画を投稿したら叩かれるんだ」と思っていたので、びくびくしながら投稿しました(笑)

でも、実際の反応はすごくあたたかかったです。この最初の投稿で「がんばって!」とあたたかい言葉をかけてくださったのが忘れられなくて、今でもすごく力になっています。

 

ニコニコ超会議2018への出演

ーーあやなななさんは「ニコニコ超会議」や「ダンマス」にも出演しましたね。

あんなに「壁を感じないな」と思ったのは、ニコニコのイベントが初めてでした。

イベントの出場者を募集し、やはりダンスの上手い方や表現力が豊かな方が選ばれていくのですが、そこに車いすに座っている私を呼ぶのって勇気がいると思うんです。

1番「壁を感じない」と思ったのは、課題曲でした。

イベントには出演者全員で踊る曲が何曲かあって「覚えてきてください」と言われるのですが、車いすの私も皆さんと全く同じ振り付けなんです。

それって、実は当たり前ではないと思います。

出演者の中で立って踊ることができないのは私だけなのに、同じ課題を与えてくれたのはすごくうれしかったですね。

 

ーー実際にステージに立って踊ってみてどう感じましたか?

はじめて立つステージは、楽しみな気持ちと不安な気持ちでごっちゃになって、複雑でした。

やっぱり「車いすの私が出て大丈夫かな」という気持ちはあって、立って踊る方たちと一緒に踊るのは「浮かないかな」と不安でした。

でも名前を呼んでもらえましたし、コメントには「車いす」という言葉がひとつもないんです。私は触れてもらって大丈夫と思っていたので「車いすで驚かないの?」と私の方が驚いちゃいました(笑)

(ニコニコ超会議2018の様子)

「踊り手」として

ーーすごい…!そういえば、あやなななさん自身も動画のタイトルに【車いす】と入れないですよね。

「あえて車いすと書く必要がないかな」と思っていたので、私は特に気にすることなく投稿しています。

ただ【車いすで踊ってみた】としてしまうと、壁を作ってしまう気はしました。

「車いす」というだけで寂しいというか、明るいイメージではないのかなと思ったので、踊る曲もメッセージ性を重視して明るい曲を選んでいます。

 

振り付けのこだわり

ーー最近はオリジナルの振り付けもされていますよね。どうやって作ってるんですか?

今はmomotaroと2人で暮しているので、振り付けは2人で話し合って作っています。ですが私はポンコツなので、8割はmomotaroが作っていますね(笑)

(2人の生活を表している動画を撮りたくて選曲。「ダンマスワールド2」へのエントリー動画)

車いすに乗っていると下半身の表現が難しいので、momotaroは上半身をメインに振付をしてくれていますし、私もそうするように心がけています。

私はギラン・バレー症候群を発症する前に少しですが踊っていた経験があるので、車いすに乗って踊る感覚はすごく不思議なんですよ。

激しく踊ろうとするとやりたい動きに身体がついていかなくて、バタバタして見えてしまうんです。振り付けを作った後にビデオを撮って確認すると、鏡で見ていた自分の動きと違うので、それがなくなるように振り付けをしています。

振り付けは2人で作ったら2日で完成しますが、1人だったら一生完成しない気がします(笑)

今、1人の振り付けを初めて作っていますが2週間くらいずっと悩んでますね。

今後チャレンジしたいこと

ーーあやなななさんはどんどん夢を叶えていると思いますが、今後の目標やチャレンジしたいことは何かありますか?

チャレンジしたいのは変わらず、立って「踊ってみた」の動画を撮ることです。

立って踊る曲はもう決めてあるんです。


ーーTikTokにあげているリハビリの様子を見ていると、立って踊れる日も近いのかなと思います。

@_ayananana_##day21♬ HandClap – Fitz & the Tantrums

ありがとうございます!自分でいうのもなんですが、寝たきりだった状態から今の状態になるまではすごく努力をしました。

もう少しで立って踊ることが叶いそうなので、頑張ります!

【ダンマスワールド2出演決定!】

 詳細はこちらから

【編集後記】
今回インタビューしたのは、あやなななさん。「踊ってみた動画」の中でも、あやなななさんのダンスはとてもしなやかで、笑顔が印象的です。「ダンスが好き」と伝わってくる楽しそうな姿は、みる人に元気を与えています。今後の活躍も期待されるあやなななさんの最新情報は、ぜひTwitterニコニコ動画YouTubeでチェックしてみてください!

(編集:佐藤奈摘|Twitter

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