大人の福祉アイドルグループ
GRITTER グリッター(Twitter|アメブロ)
タレント・麻生真里がプロデュースする大人の福祉アイドルグループ。メンバーは医療福祉従事者と障害のある方で結成されている。ライブハウスや施設で1人でも多くの人を笑顔にするために2020年9月から活動を開始している。
10年前に交通事故に遭い車椅子ユーザーになったタレント・麻生真里さんが医療福祉従事者と障害のある方で大人の福祉アイドルグループ「GRITTER(グリッター)」を結成しました。
今回お話を伺ったのはGRITTERのリーダーでプロデュースのまりたん、看護師のりささ、精神保健福祉士で生まれつき耳が不自由なみっちーの3人。
8年間考え続けていたというGRITTERのプロデュース経緯からメインメンバーの加入理由、GRITTERが今後していく活動について伺っていきます。
目次
大人の福祉アイドルグループGRITTER
まずGRITTERをプロデュースする麻生真里(写真中央)さんにお話を伺いました。
ーーGRITTERをプロデュースしたきっかけを教えていただけますか。
GRITTERは日本初の医療福祉従事者×障害のある方による大人の福祉アイドルグループです。
私はタレントとして活動をしていた2010年に交通事故に遭って胸椎を損傷し、それからは車椅子ユーザーになりました。事故後は思うようにタレント活動ができなくなったこともあり、事故から2年ほど経った頃から、「夢はあるけど『障害があるから私には無理』と思っている方の道を作りたい」と考えていたんです。
当事者だけでなく医療福祉従事者を含めたのは、関わりが多いはずの彼らが一緒にエンターテイメントを作っていく場が日本にはないと思ったからでした。
事故に遭い歩けなくなってから10年の節目ということ、またコロナによる外出自粛で時間の余裕もできたので、8年間頭の中で考え続けていたことを今このタイミングで行動に移し、プロデュースすることを決意しました。
ーー8年間も考えていらっしゃったんですね。GRITTERというグループ名はどのように決めたのでしょうか。
きらきら輝くという意味のある「GLITTER」という英単語がベースになっています。
綴りを「L」ではなく「R」にしたのは、立ち上がるのRise、大いに楽しむのRevel、和らぐのRelent、安心のReliefなどGRITTERへのイメージがRに詰まっていたからです。
(この写真の手はGRITTERという手話)
GRITTERのコンセプト
ーー大人の福祉アイドルというコンセプトにはどのような想いを込めましたか?
事故に遭うまで私は「福祉は自分には関係ない」と思って生きてきました。大きな病気をしたこともなく、自分が事故に遭う可能性すら考えたこともない。障害とは無縁で生きていました。
かつての私のように「福祉や障害は自分には関係ない」と思っている人にも、福祉を身近に感じてほしいと思っています。GRITTERが福祉とエンタメをつなげることによって、そのきっかけが作れるのではないかと思いました。
エンタメの中でも知ってもらう機会をより増やすためにアイドル、そして「年齢制限をしたくない」という想いから「大人の福祉アイドルグループ」というコンセプトにしています。
例えば、かつて「アイドルになりたいけど障害があるから…」と諦めてしまった大人の方もいらっしゃると思います。でも今ならGRITTERという場があるから諦めないで夢を叶えることができる。そういう方々にも加入してほしいので、年齢制限は設けないこのコンセプトに決めました。
GRITTERメンバーの加入理由と想い
ここからはGRITTERのメインメンバーでプロデュースのまりたん(写真中央)、看護師のりささ(右)、精神保健福祉士で生まれつき耳が不自由なみっちー(左)にお話を伺いました。
ーーメインメンバーを選ぶときに重視したことはありますか?
まりたん:ありますね。8年間ずっと考えてきたことなので、メンバーの組み合わせの意図や目的はすごく考えています。なのでメインメンバーは私の意向に合うかどうかを見て慎重に選ばせてもらいました。
譲れないところがありながらも、「夢はあるけど障害があるから私には無理」と思っている方に場所を提供していきたいと思っています。初期の登録メンバーは私1人でプロデュースできるよう4人ですが、今後はその中のリーダーの方にお任せして、登録メンバーを増やしていきます。
ーーまずりさささんに伺いします。りさささんがGRITTERに入りたいと思ったのはなぜでしょうか。
りささ:私自身も家族も、子どもの頃は体が弱くて病院にかかる機会が多かったんです。その中で「身近な人や、今1番困っている人を助けることができる人になりたい」という気持ちが生まれて、看護師資格を取りました。
それに加えてタレントやアイドルにも興味があったのですが、そんな中でたまたまGRITTERの募集を見つけたんです。医療福祉従事者と障害のある方を掛け合わせたグループは全く新しいものですし、作るまでの経緯やまりたんの想いを知って「私もGRITTERに入りたい!」と思いました。
これからは自分だけで届く範囲でなく、GRITTERのみんなの力でより多くの人に発信していける。さらに広い活動ができるようになったことをうれしく思っています。
ーーりさささんにぴったりのグループだったんですね。みなさんから見てりさささんの魅力はどのようなところですか?
まりたん:りささはかわいくて雰囲気が良くて、私が描くアイドル像に必要な存在でした。看護師資格を持っていることもあり、絶対に入ってほしいと思いました。
みっちー:コロナの影響でまだ1回しか会えていませんが、オシャレが大好きで受容力がある方だと思っています。のほほんとなんでも構えて、でも決めるときは決める素敵なメンバーだと思っています。
ーーありがとうございます!続いてみっちーさんに伺います。みっちーさんがGRITTERに入りたいと思ったのはなぜでしょうか。
私が初めて入社したのが、聴覚障害のある方が多い会社でした。人事部で当事者の私は、聴覚障害のある方からはもちろん、その上司から相談されることが多かったんです。
しかし当時の私には心理に関する知識がなく「回答によっては命取りになりかねない」と思い通信制大学に通い心理資格を取得しました。
転職先の障害者福祉施設では、「先輩たちのように資格を取得して利用者さんたちの心により添えたら」と思い精神保健福祉士の資格も取得しました。
精神保健福祉士として働きながらもGRITTERに入りたいと思ったのは、「大人のアイドル、しかも福祉アイドル!まさに私にピッタリではないか(笑)」と思ったからです。
障害のある方との関わりって、家族はもちろん医療福祉従事者が多いと思うんですよね。それらがコラボレーションしてエンタメを作り上げていくというのは、他にない画期的なことであり、そこに魅力を感じました。
実はまりたんとは障害を魅力に変えるバリアフリーファッションショーで出会っているんです。優しく接してくれるし考え方もはっきりしているので、安心感たっぷりで一緒に活動できています。
ーーそうだったんですね!まりたんさんから見てみっちーさんの魅力はどのようなところですか?
みっちーは精神保健福祉士でもあり、生まれつき耳が不自由で手話ができます。GRITTERメンバーの組み合わせを考えたとき、手話ができる人は必ず入れたいと思っていました。
というのも、ライブハウスは「耳が聞こえる人が楽しむ場」というイメージがあると思うんです。そこでGRITTERが手話を取り入れたライブをしていけば、耳が不自由な人がライブハウスに遊びに行く選択肢ができるかもしれないんです。
「みっちーが居れば、耳が不自由な人にも楽しんでもらえる場を作れる」と思い、ぜひ加入してほしいと思いました。
GRITTERの活動内容
ーーより多くの方に届く活動になりそうですね。今後はどのような活動をしていくのでしょうか。
まりたん:ライブハウスでライブをしたり、児童養護施設や老人ホームなどの施設でレクリエーションをしていきます。伺う先に合わせて昔懐かしい曲や童謡、ポップスなどの曲を歌い、手話を含めた振付を披露していきたいと思っています。
ライブハウスではまずGRITTERのお披露目ライブをする予定です。今はコロナでリハーサルなども難しい状況なので、今後の状況を見ながら2021年の前半にお披露目ライブができたらと思っています。
施設なども今のコロナの状況では直接伺うことは難しいのですが、知り合いのお医者さんや看護師さん、薬剤師さんにGRITTERの活動を伝えて、そこから少しずつ広めていってもらっています。
活動ができるようになった時に備えて、しっかりと準備を進めています。
今後していく「恩返し」の活動
ーーGRITTERとして、どのような思いを持って活動していきますか?
まりたん:「全員を笑顔にする」というコンセプトで活動していきたいです。意思の疎通が難しい方もいらっしゃると思いますが、私たちの活動がメンバーにとっても、お客さんにとっても特別な時間になったらうれしいです。
10年前に事故に遭ってはじめて入院した時、病院で七夕やクリスマスに合わせて院内のコンサートが開かれていることを知りました。
当時の私は歩けなくなったことが受け止められなくて「助けてなんて頼んでない。歩けないなら今すぐ殺して」と言っていたし、院内コンサートに誘われても「行かない」と言っていました。
でも毎日病院で過ごしていて耳にする音や声とは違った歌声や楽しそうな笑い声が聞こえてくると、ちょっと気になってしまうんです。
いざ行ってみると、お年寄りや子どもたちなどたくさんの患者さんが同じ空間で楽しそうに笑ったり歌を歌っていて、それをみて感動したんです。最初は「行かない」と言っていた私が、気づけば何回も院内のイベントやコンサートを観に行っていました。
私たちの力でどこまでできるかわかりません。でも絶望していた当時の私が特別な時間だと感じたような時間を、今度は私が恩返ししていきたい。お年寄りや子どもたち、障害のある方、入院している方…たくさんの人たちが少しでも笑顔になってくれたらすごくうれしいなと思っています。
ーーしあわせが循環していくようで素敵です。最後に、今後GRITTERとしてどのような存在になっていきたいか、おひとりずつ教えていただけますか。
りささ:日本は「障害のある方」という見方がまだまだ強いなと感じています。そうではなく例えば私の身長が148cmと低いのと同じような見方で、「〇〇さん」として見ることができたら。そうやって垣根を少しでもなくせるような活動をしていきたいです。
そのためにまずは医療福祉従事者と障害のある方を掛け合わせたアイドルグループがあることをより多くの人に知ってもらう必要があるので、自分にできることを精一杯していきます。
それを通して障害のある方はもちろん、医療福祉従事者」の方にも元気を与えられる存在になれたらと思っています。
みっちー:私はさまざまな大人たちの記憶に残るような活動をしていきたいと思っています。テレビや映画、イベントに出演することで多くの方々に出会って、障害のある方たちの娯楽の中に加われるようなグループにしたいです。
また私が手話でお話することで、みんなが「手話」に触れるきっかけを提供できる存在になりたいです。偏見を少しでも除外できる世の中にしたいので。それをGRITTERとして発信できることが短距離かなと思っています!
まりたん:私は中学校を卒業した時からタレント活動をしていて、バラエティ番組にも出演していました。でも事故に遭って歩けなくなってからは福祉系の番組やイベントに呼んでいただくことが極端に多くなったんです。
事故に遭う前に出演していた番組からオファーをいただくこともあるのですが、「事故に遭って今は車椅子なのですが大丈夫ですか」と尋ねると「ちょっと…」と言われてしまうんですね。車椅子になったというだけで、今までと同じように活動することができないもどかしさを感じました。
私は例えば車椅子の方がニュースキャスターをやっていいと思っていますが、日本にはまだいません。そういった面でまだ進んでいないと感じることはあるので、障害のある方と芸能界、エンタメの分断への架け橋にGRITTERがなれたらと思っています。
GRITTER登録メンバーからメッセージ
GRITTERには今回お話を伺った3人のメインメンバー以外にも登録メンバーがいます。登録メンバーはヘアメイクさんにセットしてもらって撮影会をしたり、イベントができるように準備を進めているそうです!
りん:脳性まひ、車椅子・杖ユーザー
今だからこそできることを精一杯頑張ります!たくさんの人を笑顔にできますように。
ミキティ:脳梗塞による片麻痺
障害があってもやりたいことを諦めず叶える力があることを証明していきたいです。
みずき:両下肢障害、杖・車椅子ユーザー
私たちだから届けられるもの、景色を皆さんにお届けします!
のぞみん:視覚障害・発達障害
障害があっても自分らしく夢や希望を与えられる存在になれるように頑張ります!
各種お問い合わせ募集方法は gritterofficial@gmail.com まで。
【編集後記】
今回インタビューさせていただいたのは、大人の福祉アイドルグループGRITTERさん。プロデュースの麻生真里さんに2020年の4月にインタビューさせていただいて以来のご縁です。麻生さんはインタビュー時にお話ししてくださった夢を実現していて、行動に制限がかかるコロナ禍でもできることを1つずつしている、本当にすてきな方だなと改めて感じました。Puenteではこれからも麻生さんをはじめ、GRITTERの皆さまを心より応援しています!
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